君の叫びが炎上した理由を俺は知らない
雪村
1章 君の呟きが炎上した
第1話 そのアカウントの持ち主
【同性愛を受け入れられないやつはイカれている。それって単純に人間として見ていないだけでしょ。議員のジジババ達も脳を更新しろよ】
午後19時頃にSNSに投稿された呟きは瞬く間に拡散された。
いいね数2.3万。拡散数6984。コメント数は300件と見事に炎上を成したのだ。
そんな呟きが投稿された次の日、俺のクラスでは妙な騒ぎが起こっていた。
「このアカウントってさ」
「知ってる。マジやばくない?」
「ってか当の本人まだ来てないってことはそういうこと?」
クラスの女子達は何組かのグループになってコソコソと話している。若干話が聞こえているからコソコソではないのかもしれない。
でも騒いでいるのは女子だけではないようだ。男子もうるさく笑いながらスマホを出している。
「
「佐倉おはよう。これって?」
「これだよこれ」
周りを窺いながら自分の机に着くと、1年生の時から友達の
画面に映っていたのは俺も昨日見た炎上呟きだった。
「見たよ。随分な暴言だけどコメントは賛否両論って感じだよね」
「コメントとかはどうだって良いんだよ。お前このアカウントの持ち主知っているか?」
「持ち主?さぁ?呟きしか見てないからわからない」
「実はこのアカウント倉持さん説が浮上してるんだけど」
「倉持さん?」
佐倉の言葉に耳を疑う。俺が知っている倉持さんと言えば、このクラスにいる
倉持さんは陰キャでも陽キャでもない中間の立場にいる女子生徒。あまり接点は無いけど、こんな呟きをする人ではないと思っている。
だからこそ目を丸くして驚いてしまった。
「まだ確定では無いぜ?でも倉持さんのアカウント知っていた生徒が教えてくれたって女子達が言ってた」
「倉持さんだったら意外だよね」
「ネット上は人の本心を曝け出す場でもあるからな。つーか、これが本当に倉持さんだったらあの子レズってこと?」
「さぁ…?」
「いや絶対レズ。じゃなきゃこんな呟きしないって」
ケラケラ笑う佐倉に俺も釣られたように笑う。でも別に笑う内容では無いのはわかっていた。
俺はチラッと倉持さんの席を見てみる。もう少しで校門は閉まるのに未だに席は空白だ。
女子達は倉持さんの席を指差しながらニヤニヤしている。
今日、倉持さんが来なかったら佐倉が話してくれた説はより濃厚になるのだろうか。
「ねぇ佐倉」
「ん?」
「佐倉はこの意見どう思う?」
「どうも思わん。だってこんなの弱者の嘆きじゃんか。そう考えると俺はイかれた側なのかもな」
佐倉は呆れたように髪を掻いた後、俺の肩に腕を回してくる。そして目を細めて俺に問いかけた。
「凪斗はどう思う?」
「俺は……俺も何も思わないよ」
「だよな」
佐倉の意見に同意した俺は彼によって髪の毛をグシャグシャにさせられる。せっかく整えてきたのに台無しだ。
でも機嫌が良いように笑う佐倉を見ていると俺の心は安心してくる。自分の回答は間違ってないと思えた。
すると学校中にチャイムが鳴り響く。結局今日は最後まで倉持さんの姿を見ることは出来なかった。
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