《壁ドンッ∩(# ゚Д゚)⊃》はダンジョン式がおすすめです~騒音隣人だけど極限まで鍛えた壁ドンが弱点らしいからコツコツダンジョンでレベルアップして最高最強究極無敵の拳と膝をぶち込みます~

ある中管理職@会心威力【書籍化感謝】

第1話 ドンッ!!

 コンビニもない田舎町から上京。


 バイトも含めて華々しい都会の大学生活には、高校生の時じゃ味わえなかった青春で満ちて……。


「るって思ってたんだけどなぁ……」


 入学して既に2年経過。



 その結果が……ぼっち。



 ……。奨学金もらっててもたけえよ授業料! 毎日バイトバイトバイトバイトバイト! 授業は昼寝タイムでしかねえって本末転倒じゃん!


 あー、フラストレーションやばい。


 期末試験用の勉強時間もとれない。ノートも借りれない。オワタ。留年濃厚で最悪金なくて中退もあんぞ!


「今思えば実家、最高だったなぁ。金だけはあったもんなぁ。親父の仕事、継げばよかったかなぁ。……寿司、すき焼き、焼き肉、初任給30万、それとは別にじいちゃんからの小遣い10万。そんだけあれば……また目一杯課金して、ゲーム漬けの生活だってできたじゃん」


 畳に敷いた薄い布団に寝転がってるとぼやきが出るわ出るわ。


 ここが限界かも。

 こんなところいたら俺の人生マジで詰――



 ――ズンズンズンズンズンズンズン。



 時刻は22時。

 この時間になると金にも勉強にも追い込まれた俺をさらに追い込む『重低音』がきっちり1時間、隣の部屋から鳴り続ける。


 俺の部屋は特別に安く借りれたってこともあって面倒事はご法度。


 分かってる。分かってるからいつもは布団にくるまって我慢してた、けど……。


「あーっ! うるさいんだよ! このやろうっ!」



 ――ドンッッッ!!!!



 爆発しちゃった。

 全力で壁ドンしちゃった。


 これでクレーム入れられたら、住むところもピンチなんですが。


「……。謝りに行くか。わけわかんないけど」


 重い身体を起こして部屋を出る。


 でもちゃんと申し訳ない顔できっかな?



 ――ガチャ。



「あっ」

「……」


 その時たまたま騒音の主、隣人も同じタイミングで部屋を出た。


 女の人。もう2年も住んでるのに初めて見た。

 めちゃくちゃ美人な黒髪清楚系ギャル。絶滅の危機に陥ってる超レアな生き物。そんでピンクのブラ紐丸見え。ないがとはいわないけどデカい。うーん……エロい。


 いやいや! ずっと騒音で苦しめられてるんだぞ俺! 色香に負けんな!


 って、まずは謝罪か。飲まれるな馬鹿野郎。


「あ、あの、さっきのすみませんでした」

「さっきの? なんのこと? てか……ダッサ。あんまし話し掛けないでもらえる」


 ……。


 こ・の・女……。


 こっちがした手に出てりゃあこれかよ!

 ダサい? 仕方ねえだろ! こっちは貧乏でおしゃれする金もねえし、超インドア派だぞ!


 くっそ、金さえあれば……これでもゲームのアバターだけは雑誌に取り上げられるレベルだってのに!!


「はぁ……。ってそんなこともうなんの自慢にも、言い訳にもなんねえ、か」


 溜息をもらすしか出来ない俺は情けなく退散。

 ただ隣人のブラ紐のことだけを思い出しながらまた布団の上に寝転がろうと腰を下ろし、さっき俺が殴った女の隣人側の壁に視線を移す。


 すると……。


「なんだ、こりゃ? まさか腹が減り過ぎてとうとう幻覚でも見えるようになったってっか?」



壁:【ランクF】

耐久値:9999999

隣人側防音値:9999999

隣人屈服スコア【与】:0/100

隣人屈服スコア【受】:995/1000

付随買取屋:未開放

解放ダンジョン:なし

ダンジョン解放条件:隣人屈服スコア【与】が1以上。

ダンジョン2階層解放条件:不明

隣人屈服スコア【受】ペナルティ:1回目の場合……1週間下着の着脱が不可能になる。



「ダン、ジョン? これ、なんだよ?」



 ――どたぁあぁぁぁあぁんっ!



 わけわかんないステータス情報を眺めていると、さっきの女、隣人がもう帰ってきた。


 多分アパートの近くにある自販機でジュースでも買って戻ってきたんだと思うんだけど、にしても扉の開け閉めだけで部屋が揺れたんかと思うくらいうるさくできるのは天才――



『――隣人屈服スコア【与】が1000に達しました。今より1週間下着の着脱が不可能になりました』



 いきなり頭に流れ込んできたデパートで流れてそうな綺麗な声のアナウンス。


 でもその内容はとびっきり汚い。


「……。……。……。おい、マジで尻から下にパンツ下ろせなくなったんですけど!! 一週間ずっとこのステテコパンツ確定なんですけど!! 此畜生がぁあぁぁ!!」

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