第25話 援護

 三日後。


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レベルが14から15に上昇しました。

ステータスポイントを3獲得しました。

称号【転生者】により獲得ステータスポイントが10倍になります。

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【レベル】15

【 力 】41

【俊 敏】200+100

【器 用】33+50

【頑 丈】1

【魔 力】1+50

【抵 抗】21+100

【 運 】100+100

SPスキルポイント】30

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 うおおおおお!


 レベル14に上げてからあまり狩りはしてなかったから、ほぼ経験値が貯まってなかったのに、まさかダンジョンで数日でレベルが上がるとは驚きだ。


 経験値が12000もあればすぐに上がるだろうけど、十分の一に減ってしまうからな。1200だとこんなもんか。


 でもよくよく考えると、わりと劣化ミノタウロスを倒せば、普通のレベル15で通常の狩場で上げるペースとそう変わらないのかも。


 逆に言えば、これ以上レベルが上がったら、レベルを上げるのにかなり厳しいというものだ。


 まあ、後のことを悩んでも仕方がないので今は全力でレベリングだ!


 ――――の前に。スキルポイントを振らないといけない。本来なら運を200にしたかったけど、それより先に抵抗を上げることにした。


 ゲーム時代なら抵抗は上げずに火力全振りの防具で対策が安定だったけど、思っていたよりも防具を揃えるのが難しいと判断して、対魔法戦を想定して抵抗を21に上げておいた。


 今回の分を全振りして51に上げておく。


 このダンジョンだとミノタウロス系統が現れるから魔法の対策は必要がない。損といえば損なんだけど、悪い予感がしたから急いで抵抗を上げた。50にもなれば大幅に軽減できるし、状態異常系統も一気に対策できるので便利だ。


 今日も今日とて劣化ミノタウロスを倒していく。


 どうして三日間劣化ミノタウロスを倒しているのかというと……二層へのボスフロアが見つからないのだあああ!


 一体このダンジョンってどうなってるんだ! 下層への階段が全然見つからない! ボスが鎮座する広いフロアがあって、そこから二層へ上がれるはずなのに、広い場所が見当たらない。


 ずっと走り回ってるのにな……。


「ガフッ! ワンワン!」


 急にポチが吠えた。


「どうしたんだ? ポチ? ん……どれどれ……近くのあのパーティーがいる?」


「ガフッ!」


「じゃあ、逆に行くか」


 とそのとき、ポチが俺の背中を服に嚙みついて引っ張る。


「ポチ? そっちにあのパーティーいるんだろう? 逆だろ?」


「ワフッ! ワフッ!」


「ん……? こっちが逆……? よくわからんけど、そっちに行って欲しいのか?」


「ワフッ」


「はあ……まあ仕方ないな」


 それにしても驚いたな。まさかポチが自ら意見をするなんてな。


 最近もお嬢様に撫でられてご機嫌だし……ポチって使い魔だけどちゃんと感情があるみたいでに入れたままだと、悲しそうにしている。


 ポチが指した方向に進んでいくと、やはり誰かが戦ってる音と気配がする。


 これ絶対にあのパーティーだよな……一体ポチは何を考えているのやら。


 かなり近づいたので【影移動】を使って進む。ちなみに俺が技【影移動】を使うと、ポチも自動的に影に引き込まれる仕様になっている。


 そこにあったのは――――今まで洞窟の横幅五メートルくらいの道から広いスペースが現れた。


 まさかここってボスフロア!?


 ポチ……まさか、あのパーティーから遠ざかれば遠ざかると二層への階段が遠くなるってわかってたのか!?


 それは一旦後で検証するとして、問題はパーティーだ。


 思っていたよりも弱いパーティーのようでフロアのボス級魔獣に苦戦していた。


「はあはあ……くっ! チェスター! 行くぞ!」


「おうよ! アーチェとミントも急いでくれ!」


「「わかった!」」


 一層のボス級魔獣は劣化ミノタウロスと似ているが全身が赤色になって、一回り大きい。さらにパワーとスピードも通常種よりも強くなっていて、見た目以上の俊敏さを見せる。


 大きな斧を振り回して、チェスターという男が大盾で受け止める。


 カーン! と気持ちよく金属の音が響き渡り、チェスターが吹き飛ばされる。


「チェスタぁぁぁぁぁ!」


「クレス! あともうちょっとよ!」


「技【スラッシュバースト】!」


 剣に激しいオーラを灯らせたクレスが、強烈な剣戟を赤いミノタウロスに叩き込む。


 爆音と一緒に強い風圧が周りに広がっていく。


 なるほど。上級職能【剣豪】か。それなら苦戦するのも理解できる。


 メンバーも同ランクの職能だろうしな。


「グラアアアアア!」


 攻撃を受けてもびくともしない赤いミノタウロスの太い腕がクレスを殴りつけて吹き飛ばす。


「クレス‼」


 魔法を詠唱していたミントだったが、まだキャスティングが終わらず、魔法を放てていない。


 魔法職って、こういうところが不便だよな。最上級職能【賢者】となれば、上級魔法までは無詠唱で撃てるから強いけど、その下となると、詠唱が時間がかかるからな。


 ただ、撃てさえすれば強力な一撃になるからメリットも多いし、彼らの連携ならそれを最大に活かせるのだが……今回は相手が悪かったな。


 赤いミノタウロスの標的がミントに向く。


 一直線に走り出した赤いミノタウロスに、もう一人の女メンバーアーチェが両手に短剣で応戦する。が、赤いミノタウロスの動きを止めることが出来なかった。


「技【挑発】!」


 遠くから赤いオーラが赤いミノタウロスを包み込む。が、ミノタウロスの視線と動きが止まることなく真っすぐミントに向かう。


 ミノタウロスって物理系統なのもあって、ボス級となると挑発耐性を持っている。それを知っていてもできることをしたのだろう。今から走っても間に合うはずもないから。


「「「ミント!」」」


「ま、まだ詠唱が……」


 詠唱を諦めて逃げるにも間に合わない。魔法職の彼女が赤いミノタウロスの一撃に耐えられるとも思えない。


 …………。


 …………。


 はあ。仕方ないな。あまり人とは関わりたくないが、目の前で死なれても後味の悪い思い出になっちゃうからな。


 ミントに体当たりをする寸前、赤いミノタウロスの背後を捉えて影から飛び出る。


「技【シャドウサイズ】【ダブルスイング】」


 ブラックサイズの刃に黒いオーラで刃が伸びて、さらに一瞬で二連撃が赤いミノタウロスの背後に叩き込まれた。


「ギャアアアアアア!」


 さすがに一撃はないか。背後で確定クリティカルヒットでも無理のようだ。


 飛び込んだ勢いで赤いミノタウロスから遠く離れてしまった。


 ポチはミントを救出してミノタウロスから距離を取る。


「デス!? ブラックウルフ!?」


「デスでもないしブラックウルフでもないですよ~。俺はちゃんとした人ですよ~。それよりもしっかり構えてください。ボスがまた来ますよ」


 俺の攻撃で背中に大きな傷ができ、赤い血を流しながら血走った目で俺を狙って走ってくる。


 ズンズンと一歩一歩が重く響く中、アーチェが背中に飛び込み、両手の短剣で素早く斬りつける。


 俺の後ろから飛び出たチェスターがそのまま盾でバッシュ攻撃をして足を止め、さらに高く跳んだクレスの強烈な一撃が叩き込まれる。


「グラァァァ……」


 力が抜けたように斧を落として空しい金属の音が響く中、ポチの方から強力な魔力の波動が流れる。


「――――魔法【スピリットフレイム】!」


 彼女の杖から凄まじい紅蓮の炎が無数に放たれて、赤いミノタウロスに直撃していく。


 次々爆発して炎はやがて爆炎となり赤いミノタウロスを包み込んだ。


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劣化ミノタウロス・王(レベル70)を倒しました。

複数人の戦いのため、経験値が下がります。

経験値40000を獲得しました。

称号【転生者】により獲得経験値が1/10に下がります。

レベル差によるボーナスにより、追加経験値120000を獲得しました。

称号【転生者】により獲得経験値が1/10に下がります。

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称号【魔王と呼ばれていた者】

(3/100)

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「みんな! 大丈夫!?」


 ミントの声に三人とも親指を立てて返す。


 ……ちょっとだけパーティーっていいなと思ってしまった。






「助けてくれて本当にありがとう」


 クレスさんに握手を求められて、手を握り返す。


「どうお礼をしていいか……」


「いえ。お礼なんていりませんので、俺のことは内密にお願いします。武器とか誰かにバレたくないので」


「そうか。わかった。君のことは誰にも言わないと約束する。みんなもそれでいいよな?」


「「「もちろん!」」」


「ありがとうございます。では俺はこれで」


「待ってくれ。さすがに内密するだけでは俺達のお礼が足りない。これを貰ってくれないか」


「ん? 極大魔石ですか? かなり高いんじゃないですか?」


「ぜひ足しにしてくれ。君がいなければ倒せたかも怪しいし、大きなケガをするところだったから君が貰うべきだ」


「……わかりました。ありがたく貰います」


 外のボス級魔獣はその名を冠する魔石を落とすが、ダンジョンのボス級魔獣はあくまで普通の魔石を落とす。強さによって落とす魔石は違うが、ここは極大魔石一個だ。上層の強い個体だと複数を落としたりする。


 極大魔石となると、かなり高額で取引されるので大助かりだ。


 まあ、今は使い道がないからしばらくマジックバッグの倉庫行きだけどね。


 俺に何度もお礼をする彼らに手を振り、俺はポチと一緒に二層への階段を上がった。

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