世界がハードすぎるから成り上がりたい 〜成り上がれないと死にます〜
@asado
第1話 目覚め
「駄目に決まってるだろう、さっさと失せろ」
門の前に立つ衛兵が、胡乱な目でこちらを見てくる。
いや実際怪しいのだろう。彼の目には腰蓑1つに、木の棒を握りしめた浮浪者が映っているのだから。
「な、なんとか入れてくれませんかね、仕事を探しているんです、このままでは飢え死にでさぁ」
必死に衛兵に懇願する浮浪者。そう何を隠そう俺、ザック様である。
認めたくない事ではあるが……。
時は遡る。
1週間前、仕事終わりに一人焼肉を楽しんだ俺は、その帰宅途中で意識を失った。
転んで頭を打った気もするし、トラックに轢かれたような気もする、しかし具体的な事はさっぱり覚えていない。
気付けば裸で地面に転がっていた。
現代人たる者、異世界系の小説を嗜んでいた為、自分が異世界にぶっ飛ばされたことは、直ぐに理解する事ができた。
おおこれは間違いなく異世界転移!チート!ハーレム!と。
しかしその興奮は直ぐに消え去る。
裸である事はまだ良いだろう、だが100m程先にあるボロボロの防壁に、すがりつくように死んでいる子供。
これは明らかに不味い傾向だと、ザックの脳が警鐘を鳴らす。
大して出来が良くもない脳みそだが、この時ばかりは淀み無く知識を思い出していく。
本来、死体というのは疫病を運ぶ物として直ぐに処理される。これは中世だろうがなんだろうが、経験則として知られていた事だ。
そして死体は売れる、髪はカツラになるし、その肉はミンチにしてしまえば犬の肉として売れるのだ。
フレッシュな死体なら、実験用として需要がある。
羅生門、死体盗掘人、人肉デリカテッセン、次々と物騒なワードが浮かんでは消えていく。
故に貧困層が群がり、その死体は瞬く間に持ち去られるハズなのだ。
(……死体が処理されて無いって事は、行政がこれを放置している?死体が持ち去られていないってことは、態々子供の死体を持ち去る必要も無いほど死体が有り触れているってことか?)
冷や汗が吹き出す、明らかに不味い。
何が不味いのかはわからないが、とにかく不味い事だけは分かる。
ひしひしと感じる命の危険に、ザックは生き延びるため、行動を始めた。
まぁ無理だったんだけどな!
子どもの死体漁り、なにか使えるものは無いかと探したが、当然何も見つからず。
服を剥ぎ取り(服と言う名前のボロ切れだったが)それを腰蓑にするという以外、なんの成果も得られずに退散。
何とか街の中に入ろうとするも、衛兵に蹴り出され失敗。
後から知った話だと、そもそも、この防壁はスラム街の防壁だそうだ。
スラム街の奥に本当の街の城壁があるらしく、通りで見窄らしい街並みの割に、身なりの良い人達も入っていく訳だと納得した。
そこから、くぼみに溜まった泥水を啜り、キモい虫と雑草を食って飢えを凌ぐこと1週間。
話は冒頭に繋がる。
つかスラム街にすら入れないってどういう事だよ!
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