始まりのない太陽。

第1話 明日の夜明け

「おは〜、今日は早起きだね!」



そういって無邪気に笑うのは同居人のアリサ。



「いや、いつもこのくらいに起きてるんだけど。」



アリサはかなりのロングスリーパーだから、逆にこんなに早く起きてるなんて不安でしかない。



「早起きなのはアリサのほうだよ、すごいね。」



アリサはちょっと照れたみたいで、ニヤニヤしてる。



「なにニヤついてんの。ドヤるなら明日も早く起きてからだからね!」



「あはっ!でもセツナってあんま褒めてくれないからさ、なんか嬉しくなっちゃった。」



照れやすいとか、こうやって素直なところがアリサのいいところだし、私の好きなアリサなんだよなあ。

そうやって褒めたらまた調子にのるのかな。



「ねぇねぇ、はやくいこうよ。準備まだ?」



アリサはそわそわとしながら私の周りをうろちょろしている。



「アリサ……わたし今起きたばっかり。」



「あっ!そうだったね、あたしさっき朝ごはん作ってみたよ、セツナに食べて欲しい!」



キッチンに立っていたアリサはいそいそとテーブルに料理を並べた。



「これは前菜のマカロン・パリジャン、こっちは副菜のプリン・ア・ラ・モード、そしてこれが!主役のブッシュ・ド・ノエル!」



見栄えよく並べられたスイーツの上に乱雑に書かれたチョコレートプレートが置かれている。



「あそうだ、わすれちゃいけないものが!」



アリサはドタバタと冷蔵庫の中を確認しに行った。

チョコレートプレートには「happy birthday」と手書きで書かれている。

私の誕生日はちょうど半年前に終わっているんだけどな。



「あったあった〜!アプフェルシュトュルーデルだよ。これデザートだから最後に食べてね。」



「あのさ、これって全部スイーツだよね…?あと…。」



アリサは質問には応えずニコニコしながらこちらを見ている。

続けて市販のスイーツという質問をしようかと思ったけど、冷静に考えて失礼だから言葉にせずにすんだ。



「なんでもないや…。」



「えー。セツナ、体調わるいの?」



「ううん、ほんと大丈夫だから。」



「セツナがゆっくり食べるならあたし、セツナのカバンも準備する!」



「えっ、いいのに……。」



「だってあたし楽しみで寝られなかったんだもん!セツナが食べたらすぐ行きたいなっ!」



アリサは目を輝かせて言った。その様子はまるで尻尾をふる飼い犬のみたいで、こんなふうにお願いされては断ることなど不可能でしかない。



「…じゃあお願い!カバンはいつものところに置いてあるから、水筒だけ入れといて。」



「りょ~かい。アリサ、いっきま~すっ!」



「はいはい。いってらっしゃ~い。」



なんでアリサは、こんなに楽しみに思えるんだろう。



わたしは行きたくないのに。



ねぇ、一緒に逃げようよ。

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