結局評価なんてもんは作者と読者の相性だ

 こんな愚痴ばっかりのエッセイを、気が付けば五十話も書いているらしい。ホントかよ。

 もしかして下書きも入ってるとかあるんか?

 まあ下書きが入ってても大体五十話目だ。

 いつにも増して愚痴っぽくて説教臭いが、よろしければお付き合いください。




 小説を書く技術は大切だ。

 小説を書くための教室に行って勉強をしている人も居るし、とにかく数をこなして「書き馴れる」事に重点を置いている私みたいなのも居るし、創作論を読んだりして勉強している人も居るだろう。


 最低限の読みやすさと、小説としての体裁が無いと、そもそも「読めない、読み切れない」と言う事態が発生する。

 小説を読んでいて、途中で文章の拙さに挫折してしまったという経験がある人も多いのでは無いだろうか。

 後は「上手だけど文体が合わなくて読みにくい」とかも挫折する原因になったりする。


 読みやすくて美しい文章の小説こそが至高なのだろうか。


 しかし、私なんかは全盛期の「ケータイ小説」を読み漁っていた世代なものだから、正直な所、


「ほんと𓏸𓏸ちゃんなんか大ッ嫌い(*`^´)❣️」


 みたいな文面の小説でも普通に読めてしまう。当時はこういう感じでセリフばっかり顔文字付きの小説が、愛の数だけいっぱい書かれた個人サイトも割とあったものだ。

 なんと言うか見慣れているのである。でもこれ系を読めない人、結構多いだろう。まあそれもわかる。


 確かに技術は大切だ。

 もっと大切なのは、書き手と読み手の相性だ。味の好みみたいなもんだ。


 小説の投稿先がまだ「個人サイト」だった時代、個人サイトをまとめたランキングサイトはあれど、順位なんてものはそこまで重要視されるものではなかったと思う。

 そりゃランカーは夏コミで壁を取ったり、サイトの来訪者を数えるカウンターが目まぐるしい勢いでグルグル回ったりしたものだ。しかしランカーでなくても、二次創作なら読者はいた。

(申し訳無いが、その頃の一次創作の事情は良く分からない)


 二次創作なんてものは、大前提同じ作品を読んでそこから派生する作品だ。

 ランカーと呼ばれる人の作品はよく出来ているし、サイトも綺麗な造りで見やすかったりする。

 しかし、読み手として外せないのは「小説として優れているか、サイトのデザインが美しいか」ではなく、単に「原作の解釈が自分と合っているか」だったりもする。


 どんなに高級なフレンチや懐石料理を出された所で、自分が「不味い」と思ったら二度と店には行かない。

 大事なのは「美味しいと感じるか」であって、有名ではなくとも自分が気に入っている、地元の定食屋さんに足繁く通うものなのだ。


 ついでに言うと、二次創作は「こいつは自分と同じ釜の飯を食っている」と感じるのが最高の小説だったりもする。

 そのくらい解釈が大切だ。

 自分が可愛らしい凶暴な狂犬だと思っているキャラクターを、愛らしい猫ちゃんとして書いているとそれはもう「無理! お前とは合わん! あたいお家帰る!」なのだ。

 そして、上手い人に比べれば多少拙い文章でも、「分かる! 尊死! 解釈一致! あんた最高だ!!」となればめちゃくちゃ読む。

 そりゃあもうその人の新刊を買う為だけにイベント会場に足を運んだりもしちゃう。


 この「どんなに高級な懐石でも舌に合わないと無理、それより美味しい定食屋さんが大好き」という現象、二次創作だけかと思うと全然そうでも無い。


 例えば、私が「猫かわいい!」という内容のすっごく上手な小説を書いたとする。

 感動の、百万字超えの超大作。

 星が千個くらい着いたとしよう。何なら書籍化からの映画化も決まる。ありえんが全米が泣いた。凄いね!


 でもねこれ、「腹の底から猫嫌い」な人には多分一ミリも刺さらない。

 知り合いに「猫は気味が悪くて本当に嫌い」「猫はお前に懐いているんじゃなく家についてるんだ」と本気で言う人が居る。

(内心「は? 表出ろ」と思うが大人だし口には出さない。でも「あら、私の最愛のKittyちゃんは毎日私の腕枕で寝てますわよ?」というキャットマウンティングはする)

 そういう「猫嫌い」な人には本当に刺さらないと思う。作品の善し悪し関係無く相性が悪いのだ。


 無論、私にも刺さらない小説というのはある。

 あくまで嗜好の問題だ。書く人が悪いって訳じゃない。私は読んでも刺さらないってだけだ。

 嫌われるのを覚悟で幾つか上げてみよう。


「小さい子供カワイイ系」

 そもそも身内親戚以外の子供に興味が無いので、「そうなんですか、良かったっすね!」という感想しか沸かないが、これ系ってもしかして自分も子供できるとめちゃくちゃ共感できて見方変わったりするんかな……


「チート、無双系」

 ジャンプ育ち故か、まともな努力をしていない人間の話は読んでいて退屈だ。チーターであっても死ぬ直前くらいまで穴だらけになって血反吐吐いて地べた這いずって足掻いて欲しい。ごめん単に好みの問題だ。


「ファンタジーのスローライフ」

 逆に疲れた現代人の影を見てしまう。私は性格の悪い嫌な大人なのだ。


「なんかやたらエロいラブコメ」

 ごめん。


 まだまだあるけど無駄にヘイトを集めそうだしこのくらいにしとこう。

 どうでもいいけど上記は全て夫の大好物だ。

 マジで趣味が合わん。どういう事だ。


 んで。私が書くものだって趣味に合わん人もいっぱい居るだろ?


 何せ不憫な青年〜中年男性の尻を追うのが何より好きなバッキバキの腐女子だ。

 もし神という存在が居たとして、淫猥な空想を罪とするならば自分は間違いなく地獄行きであるが、そこに居るのが鬼であろうが悪魔であろうが、美しい雄であれば容赦なく頭の中でぶちry


 こんな事言うとフォロワー十人くらい減りそうだなあ。

 さよーならまたいつか!(米津)


 何とかして相性の良い作品に巡り会いたい。

 相性の良い読者さんに私を見つけて欲しい。


 カクヨムにしてもなろうにしても、「順位」を簡単に示してしまうのは如何なものか? と常々思っている。

 pixivは順位検索を有料コンテンツにしているから、ライトユーザーは「タグを検索して新着を片っ端から見る、読む」を無意識にやっている。

 だから良作が埋もれにくい。


 ランキングを運営が明示するメリットって実はあんまり無い気がしている。読者が上から十位くらいまでの良作を読んで満足しちゃうと、全然広告収入にならないからだ。

(いや百話越えの長編とかならいっぱいの収入になるのかもだけど)

 そして無銘の良作は誰にも見つけて貰えず静かに埋もれてしまう。

 これの救済システムが「自主企画」な訳だが、スマホのトップページで自主企画探すと「えっ、こんなに下まで画面があったんだね?」という所に「新着の自主企画」みたいなのが三行くらいあるだけである。見えない。しかも新着って。せめて「注目の自主企画」とかにならんかね。

 パソコンだと見え方違ったりするのかなあ。


 何にしても、カクヨムが圧倒的読み専不足なのはこの辺に原因がありそうだと思っている。

 だって「新着小説」の項目より「テーマが明確化された自主企画」の方が好みの作品に会いやすいし、実際読むのも楽しい。

 本棚企画とか読み専さんにはドンピシャだろう。

 読み専の囲い込みをしたいなら、ランキングを有料コンテンツにして自主企画をトップページの目立つところに置いてガンガン推すべきとだ思うけどなあ。どうすか?

 ちゃんと見せれば絶対もっと広告収入に貢献すると思うよ自主企画。だって独自コンテンツだし面白いもん。


 話は戻るが、書き手と読み手の感性が噛み合って、小説は初めて作者以外の心を動かす。

 小説だけじゃない。漫画だって音楽だってそうだ。

 感性と感性がぶつかった時に音が出る。

 それは衝突音かもしれないし、素敵なハーモニーかもしれない。


「ほんとマジで辛いしんどいもう無理」

 という意図で短歌を上げたら、

「そうですね!こういう前向きな気持ちでがんばって行きたいですよね!」

って感想をいただいた事がある。

 内心「マジか?」と思いつつ、

「そっすね!」

と返事をしたりする。まあでもそれで良いのだ。そういうのも相性だ。


 自分なりに一生懸命書いた作品に「なんか壮大すぎてよく分かんなかった」と言われた事もある。マジかー……と思っていると、同じ作品に「凄く良かった」と言って貰えたりもする。マジか!?


 更に言うと、自分は全然深く考えていなくて、サラッと書いて上げた作品に「沢山泣きました」という感想を頂く事すらある。

 作者すら意図しない何かが読者の琴線に触れて、音を奏でてしまう事もあるのだ。

 意図せずガラスのコップに水を入れて、読者が手持ちの何かで叩いたら感動的な音楽になってしまった。そういう事もある。


 相性が良いとはそういう事で、結局の所、作品が最終的に「良かった」かは読者さんが決めてくれる。


 何回も言っている気がするが、読後の小説は読者さんのものだ。

 感想や解釈は読者さんの財産だ。

 書き手はいただいた感想が意図したものと違っても、とりあえず「そういう読み方もあるのか」と思っておけばいい。

「これはそんな話じゃありません!」と言いたいなら、コメント欄や近況ノートじゃなくて次回作で書くといい。

 葛藤はガソリンになる。それでまた走れる。


 結局小説なんてもんは字書きと読み手の相性だ。

 意図が綺麗に伝わる時もあるし、「えっそうなの!?」ってなる時もあるのだ。


 そして、幸運な事に書きたかった事を全部綺麗に拾ってもらって、「良いお話でした」「ご拝読誠にありがとうございました」になる時もあるのだ。


 長々と話してしまったが、つまるところ、私は小説を書くのが好きだ。






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腐女子なので。


俺の大好きな先生の話を聞いてください https://kakuyomu.jp/works/16818093074673864840

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