お茶無双!? 「普通」の男子高校生が「美少女」たちとともに「最強無敵」の「Sランク」無双王として覇道を歩むまでの話の一端

加藤大樹

ダンジョンの一幕

 よう! 俺は黄金武人 (こがね たけと)! どこにでもいる普通の男子高校生だったけど、ワケあって死んでしまい、今は異世界ってところにいる! なんだか剣と魔法が出てくるファンタジーな世界で、ワクワクが止まらない! ……んだけど……。


「いやあああ!!!」

「もう終わりよ……」


 実はいきなりのピンチです。


 今、俺たちの目の前にいるのは、身長三メートルくらいの大男で、巨大な単眼を持つ恐ろしい化け物だ。現地民の彼女たちが言うには、サイクロプスと呼ばれている。


 現地民の彼女たちについての説明は省略する――ちょっと! ちゃんと読者に紹介しなさいよ!――ワケにはいかないので、きちんと説明する。


 金髪のお嬢様の方はアリス。この国の第三王女で、王国の陰謀に巻き込まれて、現在は俺たちと逃亡中。

 そして、赤髪の少女はエリス。Sランク冒険者だけど、ワケありで、やっぱりワケあって俺たちと行動をともにしている。


 ……で、金策のためにダンジョンに潜ったところ、見事に強敵と出くわして追いつめられたってワケだ。


「へっへっへ。美味そうな人間じゃねえか」


 サイクロプスは太い指をベキバキと鳴らしながら、俺たちににじり寄ってくる。狭い通路に、後ろは行き止まり! 絶対絶命だ!


「なにか……あるはず!」


 俺は鞄の中を漁り始めた。途中で「待った」をかけてみたが、サイクロプスはそれを無視して、アリスを掴んでいた。まずいぞ! このままだと、アリスが食べられてしまう!


 ……すると、鞄の中で光り輝くものがあった。それは――。


 世界の声が聞こえる。


【選ばれたのは綾鳶でした】


「ステータス! オープン!」


 俺は無意識に叫んでいた。


-----

名前:綾鳶

種別:アイテム

説明:飲むと強烈なバフを与える。

-----


 なんだ。これは。ペットボトルの中身はただのお茶。なのに、並々ならぬ力を感じる。それに、お茶本来の「にごり」を再現しているように思える――。


 しかし、綾鳶をただのお茶だと勘違いした二人の少女は口々に悲観する。


「サイクロプスはお茶を飲みません! 早くジュースを!」

「なによ! ただのお茶じゃない! それもペットボトル飲料!」


 二人の声には耳を貸さず、俺は綾鳶を一気に飲み干した。


 良い意味で特徴の薄いまろやかな口当たりのお茶が俺の喉を潤していく――。


「む!」


 まるで、ニンニクを一気食いしたときのような、体の芯がカーッと熱くなる感触――え? じゃあ、ニンニクを食べる展開にしろよって? うるさいな――を覚える。


 サイクロプスは今まさに、アリスを食らわんと大きな口を開けていた。


「せい!」

「ぐわあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


 サイクロプスの土手っ腹に大きな穴があくと、化け物は悲鳴をあげて絶命した。綾鳶のバフでただの蹴りが一撃必殺になったようだ。


 ずずん、と音を立てて崩れ落ちるサイクロプス。


 化け物の手から解放されたアリスは、俺に抱きついて感謝をする。


「ありがとうございます! 武人さん!」

「ふん! なかなかやるじゃない!」


 エリスも少しは俺のことを認めてくれたようだ。


「……武人さん、気がつきましたか?」

「……ああ」

「え? なによ?」


 俺たちが神妙な顔で頷き合っていると、一人事情を理解できないエリスが首を傾げた。


「実は、このサイクロプスから珈琲の香りがしたんだ」

「珈琲!?」


 ――そう。珈琲。その見た目と味から「邪」と呼ばれてきた漆黒の液体。魔王が好んで飲んでいるという飲み物。それの残り香が、この化け物から香ったのだ。


 おそらくは、魔王とともにティータイムでも嗜んでいたのだろう。


「それはいったい……なにを意味するのよ?」

「このサイクロプスは、魔王の息がかかった者かもしれないということです」

「何ですって!? それじゃあ……!」

「ああ、俺たちは魔王の恨みを買ってしまったかもしれないってワケだ」

「そんな……」

「今後は、魔王の刺客を警戒して過ごさないといけませんね……」


 俺たちは、これから先のことを思い、暗い顔をして俯いた。


 ……と、そこに。


「おーい!」


「ん?」


「おーい!」


 なんと、手足の生えたお茶のペットボトルが俺たちのところにやってきた。


「おーい!」


「お茶? またお茶じゃない!」

「しかも喋っている……」


 俺たちが面食らっていると、そのお茶は自己紹介を始めた。


「ワシはただのお茶や! 名前はまだ無いで! 兄ちゃんたち、魔王に目をつけられたんやってな! しゃーない、ワシが手助けしたるわ!」


「手助け……」

「信用できるの?」


 俺とエリスが顔を見合わせて相談していると、人を疑うことを知らないアリスが、頭を下げて、お茶に感謝をしていた。


「ありがとうございます。お茶さん!」

「さんはいらんで!」


 ガッハッハ、と豪快に笑うお茶。


 ――このときの俺は知らなかった。この無名のお茶が全ての元凶であることを。俺と魔王の因縁は仕組まれていたことを――。


 何はともあれ、これで役者は揃った。


 そう。


 俺たちの戦いは、これからだ!



(完)

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