花道

花道

土は肥えてないけれど、今日もせっせと種をまく。

そこら辺を漂う種を、あるいは落ちてる種を、こぼさずにキャッチして、僕のものにする。

大事に大事に水をやろう。

土をふかふかにしよう。

太陽は当たるかな。

大切に育てる、僕の種。

すぐに芽が出るときもある。

なかなか出ないときもある。

種が腐ることもある。

やっと出てきてくれた、僕の子葉。

ぐんぐんのびろ、僕の花。

大事に大事に育てるからね。

たまに水をやりたくなくなるときもある。

こんなの枯らしてしまえと思うときもある。

大雨が降って、花がへしゃげるときもある。

暴風が吹いて、花がとばされそうになるときもある。

くもりが続いて、成長するかどうか不安になるときもある。

乗り越えて、乗り越えて、なんとか乗り越えて、

そして、花が咲く。

きれいじゃなくても、大きくなくても、僕が咲かせた花。

花びらを散らせ、その花は種を落とす。また、花が咲くように。

何度も何度も繰り返し、

たまに枯らして、

たまに枯れて、

僕の涙でさえも、養分にして。

また種を植えて、花を咲かせ、どんどん種を増やしていく。

しっかりと根を張って。もっと土を肥やせ。

いつか、

僕が歩いてきた花道を振り返るときには、

たくさんの満開の花が咲いている道が一本、ずっと続いていることを願いながら。