詩『生きることが難しい』
七草かなえ
独白
生きるというのは難しい、難しいことなのです。
それは海のさかなに空を飛べというくらい、
とびきり塩辛くて美味しいプリンを作れというくらい、
難しすぎることなのです。
生きることが難しい。
私は何度も助けてと言いました。
悲鳴もたくさん上げました。
こうして欲しいとお願いしました。
でも誰も彼もが知らんふり。
「お前は恵まれている」んですって。
中学時代、同じクラスの男たちからの暴力で、
女たちからの暴行で、
死を望むようになりました。
生きるのに理由は無いのです。
ゆえに生きなくてはなりません。
ですが生きるのは難しい、
難しいことなのです。
他者を信じれば裏切られ殺されるのだと学びました。
人は世間体のためなら悪魔になれるのだと学びました。
人は人を快楽のためだけにも殺せるのだと学びました。
自分さえ良ければあとはどうでも良いのだということを学びました。
人は可哀想だと言って人の不幸を嗤うのだと学びました。
だから生きるのは難しい、
難しいことなのです。
死んだら文句を言われます。
だから生きてるだけなのです。
死んだらまた嗤われます。
だから生きてるだけなのです。
私は人がきらい。
私はきっと、人間のかたちをしていない。
私は私もきらい。
私はきっと、人間だと思われている。
私が生きる理由は、
いま、生きているか死んでいるかの区別もつかないからです。
生きることは難しい、
難しいことなのです。
でももしいま私が死んでいるのなら、
話が変わってくるのでしょう。
私が生きているせいで、
資源を無駄使いさせている。
お薬も、食べ物も、服も、人も、家も。
私は今生きてるの?
死んでいるかもしれません。
生きてるか死んでるか、区別がつかないだけなのです。
わかりません、わかりません。
生きるも死ぬもわかりません。
ごめんなさい、ごめんなさい。
生まれてしまってごめんなさい。
だいきらい、だいきらい。
私は私がだいきらい。
私が私を責めれば、私は悦ぶ。
そ れ だ け
いきることはむずかしい、むずかしいことなのです。
詩『生きることが難しい』 七草かなえ @nanakusakanae
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