Chapter2 女王をモノに変えるまで
C2-0 血とハートの女王
「首を切れ!」
女が叫ぶ。赤と黒、二色の縞模様の服を着る女だ。黒い長い髪に、黒い瞳。格好は派手で、赤いピンヒールと赤い手袋、柄の先端にハートのオブジェを付けた長剣を持っている。女がいる場所は中世の城の中、広い庭の中央だ。
「ひっ!」
女の従者によって、ただの城の住人だった男の首が切り落とされた。スパンという、響だけは気持ちのいい音とともに。
「あははは、やっぱりこの瞬間はいつ見ても気持ちいいねえ!」
女の背丈は180cmを超え、恰幅がよい。年は20後半といったところ。だが、多い贅肉と眉間に刻まれた皺のせいで、実年齢よりも老けて見える。
「ブリタ! 女どもは地下に閉じ込めたか?」
「は、はい! デスコヴィ様の仰せのままに」
肌白い幸薄そうな、女の従者は即座に答える。彼の名前はブリタ。年は約30ほどで150cmくらいの小柄な男だ。赤いジャケットに白い服とズボン、丸いヒビの入ったメガネをつけている。
「やっぱり女を拷問するのは外せないね。特に私より細くて若い雌豚どもをさあ!」
デスコヴィと呼ばれる女は、意気揚々と居城の地下へと降りていく。この城は数日前に領主を殺害して奪い取った関所のある施設だ。これから罪のない女性をいたぶり、惨劇を生み出すために歩みを進める。
「今日は鼻をフックで引きちぎってから、串刺しにしようかねえ」
中級アークウィザード、デスコヴィ。彼女は周囲からこう呼ばれ、畏怖されていた。血とハートの女王と。
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