東京と、愛蔵版〈古典部〉シリーズ

明鏡止水

第1話

それはそれは2024年、今年の春。


Xで米澤穂信先生の古典部シリーズの愛蔵版が出ると知りました。


それもⅢ巻。

ふたりの距離の概算

いまさら翼といわれても


とんでもない、古典部シリーズファンなら!

本好きなら!

欲しい!

愛蔵版が出ているなんて知らなかった。


アニメの氷菓は見たことがありませんが、気になります!


積読の本が山ほどありますが世の中自分の好みの本が手に入るだけで幸せな人間がいるのです!!


ちなみに価格なんて見てない。


冷静になり、確認。


5500円。


大人だけど停止しましたね。

大人だから、買えなくもない、とニヤリとしてしまいましたね。


でも、このお金でサイゼリヤで豪遊できる!

他に好きな作品のグッズが買える!

いや、普通に年を考えて貯金か、食費にあてろ。

とかは考えないのが本の虫。


こうなったら愛蔵版。


「気になります」!!


Ⅱ巻の

クドリャフカの順番

遠回りする雛


と調べていくうちに、あーこれ、良い話なんだよなあ、とか。

アニメに関連した読んだことのないお話が収録?

アニメ見なきゃっ。

え、幻の暗号ミステリ?! なにそれ!

エッセイもつくの?

うわ、


米澤穂信と古典部


って本もある。


ていうか、数年前の新作。もう二年くらい立ってるのか。頭の中で時間が止まって。

って直木賞受賞してる!


私が統合失調症で5年まるまるニートしたり、二週間動けなかったり、精神科に入院している間に!!


かいます。


買います。


本なんだから読むに決まってます。

まあ、まずは。すずめの戸締りと環さんと芹澤のものがたりとか読まなきゃだけど。


話の脱線。


まあ並行して読んでいる本もあるんですが、何しろ今怪盗キッドの映画、100万ドルの五稜郭も見たいのに、ちまたじゃ、まじっく快斗見た後の方が楽しめるというし。時間と意欲と興味の矛先が多くて困っています。


また脱線。


とにかく。


米澤穂信先生の角川書店の愛蔵版

〈古典部〉シリーズ


ですよ。


そんでね。

いざ買おうとしたら。


Ⅰ巻

氷菓

愚者のエンドロール


Amazon、Yahoo!ショッピング。

メルカリ。ブックオフ。TSUTAYA。

最寄りの書店。


在庫切れ。現在取り扱いありません。


なんと

去年の2023年に受注生産、Amazon、あとは小さな本屋に出回るだけ。


完璧にⅠ巻だけ手に入らない、恐ろしい事態。


やっと!


見つけたと思ったら。

……一万七千円くらいすると……。


ちなみにXで情報を検索したら重版は出版社が決めること。

なので作者に問い合わせたりファンレターを書いて応援しても仕方のないこと、っぽい。


なのでしょうか。


角川書店に問い合わせができるようなので専用フォーラムに意見を投稿してみようか悩みました。


悶々とした時間。


ええい!!


お金も金額も、金銭感覚も大切だけれど!!

ここでしかもう、手に入らない!!


その、四捨五入したら二万のⅠ巻。ポチりました。


……。

そしたらですね。


〈大変申し訳ございませんが在庫確認をしたところ商品が見当たらずお客様にお渡しすることができな

……〉


みたいな文章の下、商品のキャンセルをお願いしますと……。


このサイトだけが頼りだったのに!!


再び。

悶々というよりは焦燥と虚無で欲しいものを夢見るパラサイトシングルがここに一人。


こういう時のために、血眼という言葉がある。

ありとあらゆる本のサイトを巡りましたね。


金銭的には。感覚と未来を思えば。

また貯金しなきゃだけど。


服も買いなさい、ってむしろ親が心配してるくらい同じパーカー着てる。

私も衣装は増やしたいけど部屋がもう色々溢れてるからさ。


私は、本。本なんだよ。

あと、補足するといまは特典とか限定版に弱い。


最近読破できた本、一年位ないんじゃないかな。


古典部シリーズだって大作だ。


買ったところで、読んであげられるのか……。


Xを開いた。

みんなⅢ巻の出版を喜び、既刊と合わせて。

赤。

緑。

青い背表紙の素敵な装丁の愛蔵版の本を並べて写真を撮り、感激をツイートしている。


羨ましくそれらのツイートを見ていたら……。


とあるツイートが目についた。


作者が昔アルバイトしていた書店へ訪れたこと。

そこでは店を挙げて作者の本を目立つようにレイアウトしている写真。いくつかの画像。

その中に。


あった……。


探していた、Ⅰ巻!!

ツイートの日付を見ると最近だった。


まだ、このお店にこのⅠ巻が残っているかもしれないっ。

私の心ははやる。

場所はどこですか


岐阜県。


……。


行けねえ。


つい最近、乗り物恐怖症を克服した私には。私の住んでいる地方では。

岐阜県、無理です……。


それでも、本当に探して探して、やっと見つけた。

それもたくさんの情報が流れるXで。


私は決意しました。

なんとか現金書留とかネット販売とか郵送とか、手に入れられないだろうか。


私は不登校児の乗り物恐怖症のパニック障害の暗黒歴史の持ち主。もちろん沖縄旅行や飛行機に搭乗すらしたことがなく、新幹線も中学3年生の修学旅行。京都、奈良。


それくらい乗り物に弱い。ついでに岐阜県まで車で運転なんて絶対危ないし無理。


それでも、意を決して。

私はその作者が昔アルバイトをしていたという書店に連絡した。


店員さんは一生懸命探してくれた。

自分が住んでいる地方や県を伝えると、丁寧に対応してくれた。

そして、後日電話でお住まいの地域から近いチェーン店にならタダで本を郵送できるから、そちらに赴いてもらうのはどうでしょう、と。


私はもうすでにその書店の各地のチェーン店の場所を検索済みなのでどこで買うかは決めていたのだが。

お店の人がとにかく親切で、私が住んでいる県から最寄りの3店舗のうち一軒は行くだけで一万かかるでしょうし、関東のとある県の◯◯店はどうでしょう? と提案してくれた。

私の調べでも、それこそ買いたい本と同じくらいの代金の交通費がかかるが、関東のその県を目指そうと捉えていたので、嬉しくてぜひその店舗でお願いします! と頼み込んだ。


ただ。

電話でのやりとりで。


「お求めの商品、現在当店に4点あります」


それを聞いた時の私の浅ましさ。

これだけ探して探して手に入れるのだから値段は気にせず欲しいものを、初版を、受注生産の貴重な品を。

しつこくこだわるが、ものすごく欲しかった品。


全部欲しい……。


人の心と真理はわからないが、私はオタクであると同時に買い物依存症なのだと思う。

でも、思い止まった。

そして、


「じゃあ、……2点? 2部? お願いします……」


結局、二冊手に入れるつもりなんかい。


お店の人も二冊ですか? と不思議がっていたが。

オタクは貴重で大好きで保存したいと思ったら。

読む用と保存と、また本が出てほしいのと。


とにかく、あやうく買い占めるところだった。

転売ヤーに思われても悲しいし。

残りの二冊は私のように本当に欲しい人の元へと岐阜県の店舗で本棚に並んで持ち主を待って欲しい。


これで、関東まで買いに行って一件落着だと思うでしょう、みなさん。

ところがですね。

その県までは、頑張っても3時間はかかる、往復6時間。開店の九時に間に合うように家を出るなら早朝五時の電車とかに乗らないといけない。おまけに乗り物恐怖症も落ち着いたかどうかわからない、薬は飲むけど。


本当に行けるのか。そこまで一人で遠出できるだろうかと心配になりながら。

書籍のサイトを巡っていたら。

あったんですよ。

ネットに。あの本が。

電話をした翌日くらいに一万二千円くらいで。


一冊五千円くらいなのに、倍以上の値段じゃん!!


腹は立たないけれど明鏡止水の心は揺れました。

もしかしたら、あの県の◯◯店まで行けないかもしれない。


そうしたら、交通費も考えたら、ちょっと二千円高いけど、この一冊を購入するのも一つの手だ。

でもでも、わざわざ他店舗から郵送して私が行けそうな店舗まで郵送してくれているんだから、這ってでも行くのが義理というものでは。


夜中まで悩み。その本の魅力を感じ。でも、適正な価格で買うべきだと悩み。

でも、遠くまでちゃんと行ける自信がない。


私はその出品された本を購入することにしました。

早くしないと、買われてしまう。

やっぱり、お取置きの店舗まで行けるかが問題でした。


本は二、三日で届きました。

続いて、次の休日。

私は4月に入ったばかりで疲れもありましたがなんとかコンディション、スマホのモバイルバッテリー、薬を飲むための飲み物。いつでもお腹が痛くなって下っても大丈夫なように紙ナプキンをお尻にくっつけて下痢対策をして、いざ、◯◯店へ。


Googleマップの乗り換えリストはスクリーンショット済み。検索にバッテリーを使わずフォトで確認する時間短縮です。

途中、東京の赤羽で下りなければいけないのに勘違いして池袋まで行き。

リストの途中の上野まで行けばなんとかなるのでは? 

と混乱しながら考えて山手線の外回りとやらに検索して乗り込めば、一駅分戻ろうというだけなのに七、八駅くらい乗るし。

乗り換え、意味わからん。


やっとこさビル群から田んぼと畑だらけの目指していた県に着いた時はさて、30分もナビで歩いていたらバッテリーが無くなる! ここはお金がかかってもバスだ!


と思ったら乗りたいバスのバス乗り場がわからない。

やっとこさ、やっとこさ。

実はバスも乗り慣れていない。昔終点で停まってくれなかったらどうしよう、と思い。終点アナウンスの時に降りますブザーを押したら車内がざわついたことがある。

人生こんなのばっかりじゃ。


ここまできたら、本は買えるかもしれない。


目的地が近づくにつれ、こころが弾み、バスから下り、ちょっと歩けば散る桜並木。


田舎へ来たな。


帰りは東京にちょっと寄ってみよう。


本は、無事買えました。


しかもシュリンクがかかったいかにも新品! というもの。


家宝だ……。


このエッセイをここまで読んでくれた方、ありがとうございます。


もし、角川書店の米澤穂信先生の愛蔵版〈古典部〉シリーズの1巻を探してる方がいらしたら、先生が昔アルバイトしていた三洋堂書店のチェーン店に何ヶ所か在庫があるようです。

ほかにも最寄りの町の本屋さんにある可能性もあります。

私はXの画像付きの投稿でようやく見つけることができたので書店についてツイートしてくださった方。

また真摯に対応なさってくれた書店の方には大変感謝しております。

まさか東京まで経由するとは思いませんでしたが。

回り道も遠回りも乗り過ごしも経験できて幸せです。

移動中は不安でいっぱいでしたが。

今、私の部屋には。


米澤穂信

デビュー20周年記念出版

愛蔵版〈古典部〉シリーズ Ⅰ Ⅱ Ⅲ


があります。

そして、Ⅰ巻はネットで高額ですが最初に手に入れられた一冊目。

シュリンクがかかった開けるのももったいない、遠い地で購入した二冊。

合計三冊の同じ本。


馬鹿かもしれません。

ですが、達成感と充実感があります。

お金は無駄遣いしましたが、正規の値段で買った二冊と交通費は気になりません。


好きな作家がいる。

欲しい本がある。

持っているだけで幸せ。

お守り。

時にはページを開いてみる。

最後から数ページ目には

2023年3月2日 初版発行

の文字。

この文字だけでも、こころが明るくなる。


思い切って下痢気味なのにファミレスで一人ご飯しました。

そしたら椅子にかけた私の大きいリュックが邪魔で料理の運搬ロボットが通路を通れない、と小学生か中学生に見える女の子が注意してきてくれました。


iPadでの注文はできたけれどお会計がわからない時には自分よりうんと年上のお婆さんが伝票を持ってレジに行くだけでいいのよ、と教えてくれました。


帰りはダサい服で東京の銀座まで行って太宰治や坂口安吾、織田作之助さんが通ったバー。

ルパンでカクテルをいただきました。

文豪ストレイドッグスの聖地巡礼です。

たくさん写真を撮ってご迷惑をおかけしました。

他のお客様の迷惑にならないように努めたのですが、自撮りをしたら2回ともフラッシュが出てしまって前回来た時フラッシュダメと言われてたのにやってしまった、と反省しました。

お詫びができなかった。

更にはマッチ箱をこれまたがめつく二つもらえるか? と聞いてしまって。

ひとつだけ!

とのことで。


今度はおしゃれな格好をしてもう一回お詫びしたいです。

外国の方や着物の方もいらして本当に素敵なお店です。


文スト好きのファンの方がよく丸い氷の作中に出てくるカクテルを頼むそうなんですが。


その氷を削るのが大変そうで、頼んで申し訳なく思いました。頼んでから削ってくれるんです。

でも、おかげで初めてのウォッカで丸い氷デビューです。なんていう名前なんでしょうね、あの丸い氷。名前を告げていたのですが。


あまりお酒を飲まなくて、ウォッカは度数が高いから、作中の飲み物に近い状態にしたいなら梅酒を勧めてくれる優しいバーテンダーさんでした。


相変わらずあの店に行くのはいつも店に迷うし、でも路地の先に看板を見つけると嬉しくて嬉しくてたまりません。

何度でも見つけたい店です。

素敵です。


またいつか行きたいです。


まあ、店から銀座駅に戻るのも迷って、家に帰った頃にはバッテリー8%でしたけど。

あぶなかった。

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