⓸ 裏社会からの手紙《返信》Macarena➠Juan

Queridoケリード Juanフアン


 前置きはナシだ、って言っておきながら、随分と忠告までが長いこと。

 でも分かってるじゃない。あたしがあんたの忠告なんていちいち聞かないこと。


 そう、あたしはあたしがしたいことをするだけなの。止めたって無駄よ。

 誰の言いなりにもならず、あたしがすることはあたしが決めるんだから。


 でも、気丈に振る舞ってるようだけど、フアン、虚勢を張っても醜いだけよ。


 この手紙だって、どーせ例のカルテルか何だかに捕まって、ちょちょぎれる涙をこらえながら書いたんでしょ? しちめんどくせーことに巻き込まれやがって、ってどの口が言うの?

 ダサいったらありゃしない。娼館の女王と呼ばれたこのマカレーナの愛人にして、『旅団』の狂犬と呼ばれ恐れられた男が、聞いて呆れるわ。


 まあいいわ。

 フアンには、いろいろ世話を焼かれて、おかげさまでうちのたちも助けられて元気にやってる。


 あんたに死んでもらうと、こっちもいろいろ困るのよ。

 フアンを助けるなんて、あたしの性分に合わないけど、たちのことを思って、今度はあたしがあんたに世話を焼く番よ。

 まったくいい迷惑だわ。まだガビの世話を焼くほうがよっぽどいいわ。ガビは素直だから。


 手紙が送れるってことは、1人や2人、あんたの協力者がいるってことでしょ?

 それなら、さっさとフアンは、あたしがせいぜい長生きできるように、黙ってあたしに協力してくれる援軍の手配をしてちょうだい。

 

 あたしがちょいと、しなを作れば、男の10人や20人、簡単に手懐てなずけられるけど、フアンのためにそんなことするのもしゃくだし、それくらいあんたのほうでやってちょうだい。


 もし、あんたを無事助けられたら、あたしや子どもたちを、カリブの綺麗な海の見える、できるだけ遠い、人の多くない、くだらない抗争や喧騒のないところに連れてってちょうだい。


 それで、貸し借りなしにしてあげるんだから。


 分かったら、さっさと何とか人を集めてちょうだい。


                              Unウン abrazoアブラゾ,

                              Macarenaマカレーナ

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