⓷ 強すぎる妻からの手紙《返信》我妻 強➠我妻 優 中間報

 優へ


 さて、くだんの調査日を明日に控え、リマインドメールが来る前に、忘れてないことを連絡したうえで、進捗を報告させていただきます。


 まず、ダブルブッキングとなっていた、もともと入っていた2件の調査について。


 1件目の調査は、依頼人の娘の素行を調査して欲しいというもので、これは耀ひかりに担ってもらうことになりました。素行の対照が、若い女性ということで、私よりも同世代の彼女のほうが適しているとも言えます。ちなみに耀はその日、友達とカラオケに興じる予定だったそうですが、なくなく断ってもらいました。当人は「何で、おかっぱオタクのためにあたしが楽しみ削らんといかんの!」とぶつくさ言っていましたが、「ま、でも優さんのお願いなら仕方ないね。この埋め合わせは、バイト代以外に津曲と探偵さんから1万円ずつで勘弁してやるわ」と言いながら承諾してくれました。(しかし、埋め合わせを津曲に求めるのは理解できますが、何で私からも求めるのでしょうか? 彼女についてはコンプライアンスを鍛え直す必要がありそうです)


 2件目は浮気調査だったのですが、一か八かで平日の夜に張っていたら、依頼人の夫が愛人とホテルに入るところを目撃しました。浮気がシロだと、調査期間中ずっと張っていないといけないので辛いですが、クロだとこういうときに助かります! しかし、よく既婚者のくせに不倫をする度胸が信じられません。うちでそれをやった暁には、私の命がどうなるかわかったもんじゃありません。(ちなみに、調査の過程でキャバクラに入っていたことが、私の不貞行為と誤解されて優に強烈な右フックを頂戴したことがありましたが、まだ、顎がジンジン疼きます)


 さて、優の見立てとおり、津曲が、女性と2人きりになったときに、どういう態度で接すればいいかと質問してきました。

 私は、日頃の経験を活かし、夫婦円満の秘訣を話しました。

「基本的に、女性に対しては、『はい』、『すみません』、『ありがたき幸せ』の3択で返事しろ」とアドバイスしましたが、「聞いた俺がバカだった」と悪態をつかれました。せっかく、人生の先輩として助言したのに、この態度は承服しかねるものですね! 津曲にも、コンプラを改めて叩き入れる必要がありそうです。まったく……。


 そして、耀に依頼した、津曲のファッションのコーデですが、完全に匙を投げておりました。取りあえず、適当なメンズ服売り場に同行させて、「マネキンの上から下まで全部ください」と言って、きっちり興信所の領収書を切って経費で買ったそうです。しかしながら、中身が津曲だから、カッコいいはずの洋服もとことん微妙で、もはやお相手の器の広さに懸けるしかなさそうです。耀は「生まれ変わった方が早くね!?」と、再度面罵めんばしたそうですが、津曲は懲りるどころか悦に浸っていたそうで、一体どういう神経回路が形成されてるのでしょうか?


 そのような感じで、明日はいよいよ調査を決行するのみです。最終報はできれば明日の夜、調査が長引けば明後日となるかもしれませんが、開始30分以内でデートは終了すると睨んでいるので、きっと明日中には報告できると思います。

 優は、撮影がんばってくださいね! (……願わくば、刺青もんもんのメイクの入った優も見たいです)


                             強より

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