夕暮れの美術館で君は泣く
日向えりか
プロローグ
コツン。
地面が鳴った。
初めての感覚に「 」は驚き、ヒュッと喉を縮める。そして、自身の喉の音に驚いて首に手をやった。温かく、滑らかな皮膚の感覚。手を上に向けて這わせると輪郭、濡れた唇、そして熱い風が触れた。そこで「 」はその風を止めようと二つの穴に指を差し込んだ。
風が止まった。しかし、次第に苦しくなり、口を大きく開けるとそこから風が漏れた。風を止めることを諦め、鼻を塞いでいた指を外すと赤い。「 」の鼻の奥は爪によって切れ、血液を流していた。初めて見る色だった。鮮やかな赤色。それがパタパタと音を立てながら地面を染めていく。
体から血が失せていくという経験したことのない感覚。それに耐えきれなくなった「 」は地面に流れていく赤を見ながら意識を失った。
ドサッと重たい音が暗闇の中に響いた。
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