# 1
午前六時、外はすでに日が昇り始めている。
「ぇ……?ろ、六時!?」
やばい、寝坊した。よりによってこんな大事な日に……!飛び起きて、素早く白衣に着替える。早く、早くしたいのに体が思うように動かない。
「
白衣を着終わったとき、急に名前を呼ばれて体がビクッとした。恐る恐る振り返ると、俺より少し年上の医者、
「ぅあっ……れ、ん……」
「ノックしても返事がないから、心配で入ってきてたんや……ごめんな」
申し訳無さそうな顔で謝ったかと思えば、今度は真剣な顔で、こちらをじっと見つめてくる蓮。もしかして、怒ってる……?
「……凪」
怒られるかもしれないという恐怖と、見捨てられるかもしれないという不安で、「はい」と返事をするだけなのに言葉が詰まってしまう。
「大丈夫やで。移動の準備はもう俺らが済ましといた。せやから落ち着いて、ゆっくり準備しぃ、な?」
蓮は落ち着いた優しい声でそう言い、ふんわりと微笑みながら俺の頭を優しくぽんぽんと撫でた。あたたかいなあ。
「……ありがとう、蓮」
俺がそう言うと蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「ほな、ゆうを呼び行こー」
蓮はぐーっと体を伸ばし、後ろを向いて扉を開けた。扉をガラガラと開けた瞬間「うわっ!」と声を上げ固まってしまった。蓮、身長高いから扉の先が見えない……。
「そんなびっくりすることないやん……」
蓮の奥から少し悲しげな、聞き覚えのある声がする。
「いや、扉開けた瞬間そこに誰か立ってたら普通びっくりするやろ……!」
蓮は困惑と驚きが混ざったような声で答える。まあ確かに、開けた瞬間に人が立っていたら驚くよな……。
「え、ごめん……」
「あああ〜〜、ごめん〜、そんな悲しそうな顔しないでぇ、ゆうー……ごめんって〜」
「あ、凪おはよ。大丈夫か?体調とか平気?」
ひょこっと蓮の体の向こうから顔を出した、このかわいい顔をした奴は
ちなみに蓮は、佑と俺と同じくここの病院で働いていて、俺より二つ年上。俺はもちろん、年上の佑もとても信頼できるほど優秀な医者。すごく頼りがいのある、高学歴なイケメンさんなんだけど、すごくうるさい。そして佑のことが大好き。気持ちはわからなくはないが……。
「うん、大丈夫!ごめんね、心配かけて」
「そっか、ならよかった!」
少し返事に遅れがあった気がするが、気のせいだろうか。まあ、俺の心配をよそに、いつも通りいちゃいちゃしているので気にしないでおこう。
「ゆう〜、無視しないでよおお!」
背の低い佑に包み込むようにガッチリと抱きつく蓮。
「よし、
そんなのお構いなしに、蓮を連れてそのまま部屋を出ていこうと歩き出す佑。……筋トレしているとはいえ、蓮の身長180センチくらいだから、結構重いと思うんだけど……。まあ、いいか。
うんうん、今日も平和だな、医者組は。
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