【 お前を追放す……しない! 】追放系悪役に転生したオレは気がついたらヒロインとスローライフしてた。

ぷり

01 お前を追放す……しない!

「マティ、お前を追放す………しない!」


 目の前の少女をパーティから追放しようとしていたオレは、追放す……まで言いかけたところで、オレは最後を否定した。


 なぜなら追放す……まで言った瞬間に、前世の記憶をマッハで思い出したからだ。

 そしてオレは、即座に理解した。


 今いるこの世界は、前世で読んだファンタジー小説の世界だと。

 目の前の少女は……ヒロインだ。

 オレの推しだった。


「ふぇ……」

「なんだと」

「なんですって?」


 目の前の少女マティとその他のパーティメンバーが全員オレを見て、固まった。


 ここで陽気……でもないが、パーティメンバーを紹介するぜ!


 めんどくさい人は身も蓋もないことを書くようだが、名前と年齡あとにある()の中だけチラ見すればいいぜ!


 ミストとハモンドは最悪、魔女と冒険者、とでも思っておいてくれ!



■オレ:勇者ガイル:17歳 (マティを追放するニセ勇者)

 赤毛に黒い瞳、ハンサムってほどでもない普通の容姿。背も平均よりすこし高い程度。

 神託で魔王を倒す勇者だと言われ旅立ったが後に、神託が間違いだと判明したうえ、国から支給された費用で豪遊したことで最終的に断罪される。


■マティ:15歳 (ヒロイン)

 銀髪に青い瞳の目の引く容姿だがすこし引っ込み思案なところがある。

 ダンジョンのマッピング役で国から勇者パーティの一員に任命された。

 オレに追放された後、本物の勇者に拾われて聖女&エンチャンターに覚醒する。  

 ちっこくて可愛い。成長して女神のように美しくなる。この世界のヒロイン。


■ミスト:24歳 (クズなパーティ仲間)

 黒髪に紫の瞳の行き遅れ天才ウイザード。やはり国から勇者パーティに任命された。魔王討伐後のオレの妻の座を狙っている。美人の部類ではあるが、性格が悪い。可愛いマティを影でいじめている。化粧濃いめ。身体は豊満。


■ハモンド:26歳(クズなパーティ仲間)

 黒髪に黒い瞳の冒険者。国からやっぱり任命された。背丈は平均値。

 冒険者ギルドからの紹介だ。経験豊富な冒険者ということで国は紹介されたが、オレは知っている。奴は勇者パーティに入るために、金を積んだ普通の冒険者であることを。ミストに身体で誘惑されていて彼女の言いなり。


 ミストはマティがめちゃ可愛いから邪魔に思っているし、ハモンドは彼女が地図だけ書いて楽していると思っている。


 オレはまだミストの毒牙にはかかっていない。

 なぜならまだギリギリ未成年だからだ。(この世界の成人は18歳!)


 バレたら高名なウイザード様の信用が落ちるからヤツはオレが大人になるのを待っているのだ。怖い。


 見た目だけならミストは悪くないのだが、いかんせん性格がクソすぎる。


 前世を思い出す前のオレなら、その甘い誘惑にひっかかったかもしれないが、さっきまでのオレとはもう違う。化粧臭いし距離を置かせていただきたい!


「どういうことよ。皆で話し合ってマティは追放しましょうって言ったでしょう!?」


 ミストが近寄ってきて座っているオレの手に自分の手を重ねる。

 オレはやんわりその手をどける。

 なにかにつけて、触ってくるのやめてほしい。


「そうだぞ、ガイル。こいつは地図書いてるだけでなんにも役にたたないじゃないか」


 その様子を見て、ミストの傍に近寄るハモンド。

 うん、おまいらお似合いだ。くっついてろ。


「わ、私やはり追放なんですね……」


 あ、マティたんが涙浮かべてる!! 大丈夫だよ! おにいさん、追放なんてしないからね!!


「オレは考え直した……マティは追放しない!」


 このままでは身一つで追放することになる。


 真の勇者に出会うまでにひどい目に合うはずだ。


 他のパーティに入るものの囮にされたり、そこも追放されてうなだれたところ誘拐されて奴隷商に売られそうになったり。

 

 そんな可哀想な目に合わせるわけにはいかない。

 真の勇者が現れるまでオレが保護する!!


「勇者様……」

「……ガイルでいい」


 オレはマティたんに優しく微笑んだ。

 純粋なマティたんは、涙をいっぱい浮かべ、頬を染め嬉しそうにした。


「ガイル様、ありがとう」

「様もいらない」


 オレなんてニセものだからな。

 そんなヤツに様つけるんじゃない、将来の聖女様。


「ふふっ。それはダメです!」


 そう言うと、マティたんは笑って涙をぬぐった。 


 可愛ぇえええぇぇ!!

 勇者が現れるまで守ってあげるからねえええええ!!


「ちょ、ちょっと。二人の世界にならないでくれる? うーん、リーダーのあなたがそう言うなら我慢はするけど……ちっ」


 ミストが小さく舌打ちした。

 まったく、品性がない……。大人の女性のくせに……。

 小説だとそこまで思わなかったが、リアルでこうして出会ってみると、醜悪って言葉がよく似合う。


「まあ、いいじゃないかミスト……ぃてっ」


 そう言いながらミストの腰に手をやろうとして振り払われるハモンド。

 ただれた関係を子供の前でおおっぴらにするんじゃない、大人ども。


 これはマティたんの教育によくない。

 コイツらといるとマティたんがストレスを貯めるだろうなぁ。

 オレもまだ猶予ゆうよはあるが、そのうちニセ勇者だと発覚するし……。

 それまでに、とんずらしないと。


 よし。


「お前たちの言い分もわかる。だからオレはこれからマティを連れて、修行する旅にでる。別行動だ。お前たちは魔王の動向を探っていてくれ。連絡はこちらからする」


「なんですってぇ!?」

「は? そんな悠長な時間あんのか?」


「オレも勇者としてはまだ開花していない。お前たちみたいな熟練のウイザードと冒険者には足手まといだろう。強くなったら――帰って来る。それまで待っていてくれ(キリッ)」


「ガイル様、すてき……」


 え、マティたん。そんな言葉、オレにはもったいないよ!

 オレはただの君の推しなんだから!

 そんな言葉は真の勇者のために取っておくんだ!


「それなら私達が修行してあげるわよ!?」 

「いや、分担したい。魔王の動向も気になる!」

「オレは……いいぜ」


 ハモンドがいやらしい目でミストを見ている。

 よっしゃ、ナイスだハモンド!

 ミストのことは頼んだ!


「よし、ことは急げだ。魔王討伐へ向けて行動するぞ! 会議はこれで解散! そしてマティ! 荷物をまとめろ! すぐにだ!」


 オレは自分の荷物をまとめに立った。


「はい……!!」


 マティは宿屋の自室へ走っていった。


 そして。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよぉ!!」


 にこやかに手を振るハモンドに肩を抱かれ固定され、鬼の形相でジタバタするミスト、その二人をオレは即効で縁切りすることに成功した!!


 マティたんの手を取って、脱兎のごとくその場から走り去る!


「が、ガイルさまっ 何故走るのですか!?」

「こういうのはスピードが大事なんだ!!」

「??? は……はいっ!!」

 

 首をかしげながらも素直にオレに従ってくれるマティたん! 可愛うい!


 そしてグッバイ!! 一緒に旅立った仲間たち!!                                                     

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