虚無堂〜誰にも分からない喫茶店

第45話 暗闇の中の感覚探索

涼子は「虚無堂」で新たなイベント「暗闇の中の感覚探索」を企画した。このイベントは、参加者が完全な暗闇の中で様々な感覚に焦点を当て、普段は気づかない感覚を探究し、新しい体験を通じて自己認識を深めることを目的としていた。

イベントの準備として、涼子は虚無堂の広い部屋を使い、完全な暗闇を作り出すためにすべての窓を厚いカーテンで覆った。部屋の中にはさまざまなテクスチャのマット、香りが漂う植物、温冷の感触を提供するオブジェクト、そして異なる音を発するインストゥルメントが配置された。

参加者たちは一人ずつ部屋に案内され、涼子による短いオリエンテーションを受けた後、各自が好奇心のままに部屋の中を探索し始めた。涼子は参加者に、触れるもの、聞こえる音、感じる温度や香りに意識を集中させ、その感覚が自分にどのように作用するかを内省するよう促した。

暗闇の中、参加者たちは目を使わずに環境を感じ取り、普段は見過ごしがちな感覚に気づくことができた。たとえば、柔らかい綿のマットの上を歩くことで感じる足の下の感覚や、木のブロックを触ったときの硬さと温かみ、さまざまな香りの植物を嗅ぐことで感じる感情の動きなどが、参加者に新たな発見をもたらした。

涼子は部屋の隅々に小さなスピーカーを設置し、自然の音や穏やかな音楽を流し、これが参加者の感覚体験をさらに豊かにした。暗闇の中での聴覚の強化は、音に対する新しい理解と感謝を生み出し、参加者がより深く集中するのを助けた。

体験が終わると、涼子はゆっくりと部屋の明かりを点け、参加者たちを現実に戻した。彼らは体験を通じて感じたこと、学んだことを共有し、多くの人が「暗闇の中での感覚探索は、日常では無視してしまいがちな自分の感覚に気づく機会を提供してくれた」と感想を述べた。

涼子はこの「暗闇の中の感覚探索」が参加者に与えた自己発見と感覚の再発見に満足し、参加者たちが得た新しい自己理解が今後の彼らの生活にプラスの影響を与えることを願いながら、次のイベントの準備を始めた。