第43話 暗闇の中のブランコ体験

涼子は「虚無堂」で新たなイベントとして「暗闇の中のブランコ体験」を企画した。この体験は、参加者が完全な暗闇の中でブランコに乗り、重力と風の感覚を通じて、自由と解放の感覚を味わうことを目的としていた。


イベントの準備として、涼子は虚無堂の広々とした屋内スペースを使用し、天井から安全に支えられたブランコを複数設置した。部屋全体を厚いカーテンで覆い、一切の光が入らないようにした。ブランコは特別な素材で作られており、静かに、そして滑らかに動くように設計されていた。


参加者たちは一人ずつ部屋に案内され、ブランコに安全に座る方法を教えられた。涼子は参加者に目を閉じて深呼吸をするよう促し、ブランコが動き始めると同時に、暗闇の中での体験に集中するように指示した。


ブランコがゆっくりと前後に揺れ始めると、参加者たちは目を開けていても何も見えない暗闇の中で、空中を漂うような感覚を味わった。視覚情報が遮断されることで、他の感覚が研ぎ澄まされ、風を切る音やブランコの動きが生み出す空気の流れをより敏感に感じ取ることができた。


涼子は参加者たちに、ブランコのリズムに身を任せながら、日常の悩みやストレスを手放し、その瞬間の感覚に没頭するように励ました。ブランコに揺られる感覚は、多くの参加者にとって心地よく、子供の頃の無邪気な楽しさや自由を思い出させるものだった。


体験が終わると、涼子はゆっくりと部屋の明かりを点け、参加者たちを現実に戻した。彼らは一人ずつ感想を共有し、多くの人が「暗闇の中でのブランコは、まるで時間と空間から解放されるような不思議な体験だった」と感想を述べた。また、「視覚を失うことで感じる重力と風の感覚が強調され、より深いリラクゼーションと喜びを感じることができた」という声も聞かれた。


涼子はこの「暗闇の中のブランコ体験」が参加者に与えた新しい感覚と解放感に満足し、心と体の自由を探求するためのさらなるイベントを計画する意欲を新たにした。この体験が参加者たちにとって心の中の自由を再発見する機会となったことを願いながら、次のプログラムの準備を始めた。

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