近所の山の不思議探索

豊多磨イナリ

プロローグ

 ここは東京から約30分、東京都と埼玉県のちょうど都県境付近にある所沢市。市の中心部である所沢駅周辺は高層マンションなどの建設が行われ、一見都会のようにも見えるが、実際は少し入ると田舎である。川沿いには水田が広がり、蛙の鳴き声がこだまし、傾斜地には茶畑などが広がっており季節になると茶の匂いが鼻を擽る。畑の向こうには、八国山や七国峠などの地元の山々が見え、どこを見回しても田舎にしか見えない。少しだけ遠くに、中心部の高層マンションが頭を見せる程度である。

 私が住んでいる神の山と呼ばれる町もまた、そうである。

 南には渓流である柳瀬川が流れており、北側には恐らく地名の由来にもなった「神の山」と呼ばれる標高は低いが雑木林で覆われた山が聳え、四季を通して鳥の囀りが聞こえ、山の麓には湧き水が作り出した小川と、それによる葦原や湧き水を利用した谷戸田が広がっている。

 道は狭く、道路も舗装されていない箇所もあり、高校へ自転車通学している自分としては学校に通う際にはいつも転びそうになりひやひやしている。

 ここから自転車で数分、八国山という少しだけ高い山が聳えている。ほとんどを雑木林で覆われ、山道のそちこちに地蔵やらなんやらの石仏が供えてある。

 この八国山という山は、地元の小学生たちが必ずと言っていいほど訪れる場所であり、神の山地区に住んでいる入間美咲や高麗栞らもまた小学生の頃遠足でも、また休日の虫取りや散策、ピクニックやらでも訪れた経験がある。

 小学生が遠足で訪れることができる程度の山であるので、道は決して険しくなく、標高も低く、迷子になることはない。それどころか、迷子になる方が難しいくらいである。

 このお話は、そんな地元の幼馴染同士である入間美咲と高麗栞が八国山や神の山などを中心に起こる様々な不思議現象に巻き込まれる、すこしふしぎ(SF)な物語である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る