『やましんとうどんの自動販売機』

やましん(テンパー)

『やましんとうどんの自動販売機』

       🍜


 『これは、一部を除き、フィクションです。』


      🍝


 やましんは、むかし父が勤めていた会社の関連する会社が、『うどんの自動販売機』を作ったんだ、という自慢話を、父から聴いておりました。


 たしかに、そのむかしには、父母が入院した病院にも、その自販機がありましたし、わりに、あちこちで見かけたものです。


 しかし、時は移りゆき、最近はあまり、もう見ることも無くなりました。


 とはいえ、やましんちの近くにも、まだ、一台だけ、ひっそりと残っていたのです。


 

 生まれて50年以上の自販機は、自ら考える能力を持ち、なかには、超能力を備えるものもあるのだとか。


 やましんちの近くのうどん自動販売機さんも、じつは、そうだったのです。


 その超能力は、今日、誰が食べに来るかとか、その人が何者かなどを、予知してしまうのでした。


 『やや。今日は、ついに、やましんさんが来るぞ。かのAさんの呪いにより、あまねく考える力を持った自販機たちに、呪いの指令が出ている。さあて、どうするか。おいらは、独立独歩の誇り高き自販機だ。さらに、おいらは、調理した生物ナマモノを売る高潔な自販機であるぞ。かんジュースの自販機さんとは次元が異なるのである。しかし、Aさんの呪いは無視できない。Aさんは、出世した貴人だからゆえに。やましんは、Aさんとけんかしたが、出世しなかった、ただの人だからな。しかし、果たして、それゆえに、おいらが、うどんの調理に手抜きをしたりしたら、それは、おいらの行く末を断つものではないのか。たとえば、お湯をいれなかったり、てんぷらを抜いたりしたらだがな。さて、おいらの名誉にかけて、あのAさんの呪いを無視すべきか? あるいは、やはり、その、呪いの強い意思に従うべきか?』


 うどんの自動販売機さんが、はたと悩んでいるうちに、やましんは、早くもお店に到着したのであります。


 じつは、やましんは、そもそも、自販機との相性が良くないのです。


 たとえば、千円札を入れたら、お釣りがでなかったりしたことが何度もあり、また、駐車場の無人精算機さんには、一時間も停めてないのに、10万円近く請求されたり、さらに、駅のジュース自販機で、千円入れて120円のジュースを買ったら、おつりが10円玉や1円玉で溢れるように出てきて、それがおつり口から、どんどんと沸き上がり、ついには地面にあふれ出てしまい、どうにもこうにも始末がつかなくなり、回りの人から呆れられ、ついには、列車に乗り遅れたりしたりしたのです。


 もっともショッキングなのは、もはや、なにも出てこない、という場合です。


 自販機に書いてある連絡先に電話して、お金を返していただいたこともありましたが、無情なことに、やたら、なんともいえない、恥ずかしさにさいなまれたりもしたのです。


 それでも、うどんの自動販売機さんには、生きている間に、もう一回、なんだか、やたら、会いたかったのでした。


 お互いに、あまり、長くこの世にあるかどうか、判らないと思えたからです。


      🍜 🍜


 悩み抜いた、うどんの自動販売機さんは、ついに、最後の決断をしたのです。





   『売り切れ』



 🍜🍜🍜🍜🍜🍜🍜🍜🍜🍜


      🙇



 


 


 

 


 

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『やましんとうどんの自動販売機』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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