夜に生きる。朝から逃げる。全てから逃げた僕に手を差し伸べてくれたのは鳥肌が立つほどに美しい美女(悪魔)だった…

ALC

第1話第一夜

「悪いけどお前の彼女は俺の物になったから」


登校した僕に衝撃的な事実を告げてくるのはマイルドヤンキーの男子生徒だった。

学校内でも幅を利かせて偉そうにしている彼に僕の彼女は奪われた。


「やっぱり強い人が好きだから♡」


彼女は彼の腕に抱きつくような形で目を輝かせている。


「え…ジョークとか…?」


「は?こんな寒いジョーク誰が言うんだよ」


「え…あ…」


言葉を失っている僕に彼らはじゃれ合うようにして嘲笑っていた。


「じゃあ。そういうことで」


そしてそこから何故か僕はいじめの対象になっていく。


「彼女を寝取られた雑魚」


「寝取られても反抗できない雑魚」


「平気な顔して彼女を寝取られた雑魚」


その様なレッテルを貼られて僕は学校中からいじめのような行為を受けるようになり…

僕は学校に行かなくなった。

所謂不登校児になったのだ。



朝起き無い僕に両親は何も言わなかった。

それでも僕は家にいると気まずさを感じていた。

夜の帳が降りると僕は家を抜け出す。

学校の連中に出くわさない夜の繁華街で僕は一人で過ごしていた。

一人というのは少しだけ語弊があるかもしれない。

同じ様な境遇の仲間はいくらか出来たし傷を舐め合うように生活していた。


しるべ夜見よみさんに会ったことあるっけ?」


仲間の一人が僕に問いかけてきて首を傾げた。


「夜見さん?誰?」


「あぁ〜…じゃあ会ったほうが良いよ。ここの夜を仕切っているような人だから」


「え?女性ですよね?」


「そうだよ。女性というか…あの人は悪魔だよ」


「悪魔?」


「会ってみたら分かるよ」


そんな言葉を投げかけられて僕は首を傾げるのだが…

仲間は僕をある場所に連れて行く。

そこは廃ビルの一室だった。

未だに電気や水やガスが通っているのが少しだけ不思議だった。

高級そうなソファや食器がいくつも存在している。

それに目を奪われていると…。


「いらっしゃい。ここの主。黒井夜見くろいよみです」


「こんばんは。七切標ななきしるべと言います。高校三年生です」


「ほぉ。学校は?」


「それは…」


そうして僕は学校での出来事を話して聞かせる。

彼女はウンウンとそれを聞くと僕にある提案をしてくる。


「見返したい?」


それにつばをゴクリと飲み込むと静かに頷いた。


「手っ取り早く仕返ししてこようか?」


彼女からの提案に僕は仲間の忠告を思い出していた。


「夜見さんが何か提案してきても…頷くなよ?

借りを作るのは得策じゃない」


仲間の言葉を思い出すと僕は夜見に対して首を左右に振る。


「ふぅ〜ん。あくまで自分で仕返ししたいと?」


僕はその言葉を耳にした途端…言葉に詰まってしまう。

そこで彼女は悪魔的な表情で美しく微笑む。


「誰かに入れ知恵されたね?私に借りを作るなって」


それにどうしようもなく頷いて見せると彼女はふぅと息を吐く。


「まぁ。夜に逃げてきたんなら私が面倒見てあげよう。

何か困ったことがあったら私の名前を出すといいよ」


「はい。助かります」


「しかし…ひょろ長いね」


「すみません。運動は昔から苦手で…」


「まぁそれでも塩系のイケメンではあるわね。アイドルみたい」


「そうでしょうか…僕は弱い自分が嫌いです…

力強い男に元彼女を奪われたのですから…」


「そんな過去のことなんて忘れてしまうほどの出来事がこれから起きると思うな」


「どういう意味ですか?」


「ん?夜には美しい女性が多いんだよ?

それこそ日中には見えない美女がいくらでもいる」


「そうなんですか?」


「今目の前にもいるじゃない?」


「それはそうですね…」


「まぁ。何かあったらまた会いましょう」


「それでは。失礼します」


そうして僕は廃ビルを後にして仲間たちの元まで戻っていく。

朝になる頃まで仲間たちと過ごして日が昇った頃に眠りにつくのであった。




彼女を寝取られていじめられて…

しかしながら逃げた先で意外にもモテる生活は始まろうとしていた。


黒井夜見との関係はどの様に変化していくのだろうか?

一筋縄ではいかない彼女との関係をお楽しみに!


それでは次の夜へと!

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