塩漬けの歯車
秋乃晃
おしなべて地獄
∽開演
落ちた。
面接が終わって、一歩外に出てからの手応えはそんなもので。まあ、次。わたしには次があるのだ。本命じゃあなかったし。次、次。
などと思っていたら、採用通知が届いていた。
「ほあ」
郵便受けに入っていた封筒の宛名を見て、間の抜けた声を出してしまう。誰にも聞かれていなくてよかった。聞かれていないはずだ。
それから慌ててその日以降の面接のお約束を断ったり、身寄りのないわたしを育ててくれた『神影』の施設長に報告したり、いろいろあって、四月一日からわたしの『
にしても、面接でのわたしは映画の話しかしていない。名を名乗って、それから、面接官でありRSKの代表者である
讃える会である。てっきり
が、実際には縁もゆかりもない『オオカミ男』の映画についてさんざん喋って、三十分ほど経ったところで「もういいですよ」と追い出されている。わたしについての質問――学生時代に打ち込んだものとか、採用されたらどのような仕事をしていきたいかとか――は一切なかった。映画の話をしただけの三十分。
そりゃあ『落ちた』と思うわけですよ。
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