精神神経科

 自ら背徳を行いつつ、それを他人にのみ責めて、内省することを知らない。精神病者には、こういう内省のなさ、他人への無礼に対して自ら責めることを忘れている者は居ない。だから、もし、精神病者が異常なものであるとすれば、精神病院の外の世界というものは奇怪なものであり、精神病的ではないが、犯罪的なものなのである。

 つまり精神病者の方がよほど健全であり、精神病院の外の世界が、よほど奇怪なのではないか、と。これは精神神経科の説であるが、俺もまた、そう思う。精神病院の外側の世界は、背徳的、犯罪的であり、奇怪千万である。

 人間はいかにより良く、より正しく生きなければならないものであるか、そういう最も激しい祈念は、精神病院の中にあるようである。もしくは、より良く、より正しく生きようとする人々は精神病的であり、そうでない人々は、精神病的ではないが、犯罪者的なのである。

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