7 サキュバス、そして騎乗位

 ~3行でわかる前回のあらすじ~


 幼馴染も異世界転生&妖精化

 みんなで会議

 全部魔王のせいってことで


 ~以上~


 王子の部屋で話し合いは続いていた。

 今ここにいるのは――


 椿己(チ〇コが剣)

 幼馴染のハル(妖精化)

 王子(赤ちゃん化)

 王妃(ネトオタ説)


 ――の四人


「改めて見ても変な集まりだな」

「あんたを筆頭にね」

「ハルは身体が小さくなっても態度はでかいままだな」

「う、うわぁん王子ぃ~♡」

 ハルは甘ったるい声を出しながら王子に泣きつく。

「よしよし」

「赤ちゃんにチビ妖精が慰められてるのも変な光景だな」

 

 パシャッパシャッ。


「あれ、今スマホで写真撮ってませんでした?」

「気のせいです」

 王妃のポケットには、何か四角い板のようなものが浮いて見えていた。

「やっぱ今度この世界にネットがあるか確認しないとな」

「それよりも、今後のことを決めなくてはいけませんよ」

「誤魔化した……でも、確かにそうですね。俺達は魔王に姿を変えられた。この姿を元に戻す方法は何かあるんでしょうか」

 椿己の問いへ、王妃は首を振って否定した。

「魔王程強力な存在による魔法ですと、おそらくは国一番の魔導士でも解除は不可能かと思われます」

「なら、魔王に直接交渉しなければならない、か。穏便には済まないだろうな」

「そもそも、魔王は何故ぼくたちをこんな姿に変えたのでしょうか」

「王子様のかわいい姿を見たかったじゃないの?」

「ハル……たぶん違うと思うよ……」

 王子は嘆息を一つ、ある可能性を口にする。

「僕だって継承前とはいえ、将来王としての身分を約束されている身です。その僕が赤子にされたということは、政治に影響がでる可能性があります」

「それが狙いだと?」

「いえ、まだ良い方の可能性です。もう一つの可能性として――」


「――戦争……ですか」


 王妃もまた、王政に関わるものとしてその可能性はいつも頭にあったらしい。王子も考えは同じようで、頷いて見せた。

「王子は、王族でありながらこの国では最強の騎士でした。一人で一個小隊と同じかそれ以上の戦力として扱えるほどでした」

「あ、王子様照れてる~」

「か、可能性の一つとしてですが……戦力を失わせるために、姿を変えた。その可能性は無視できないものだと僕は思います」

「なら、この問題は急務として解決に当たらなくてはなりませんね」 

 王妃は力のこもった眼差しで、椿己を――召喚されし勇者を見る。

「勇者様。これはきっと貴方にとって必要なことでもあるとは思いますが、国を代表して私からの頼み事でもあります」

「頼み事……」

 

「目的は魔王との対話……ことによっては、討伐も許可致します」

 王妃は語り始めた。魔王討伐に欠かせない情報――魔王軍について。


             ●●●


 魔王――それは、魔族や魔物と呼ばれる存在たちを統べる王。

 魔王領と呼ばれる、人間が住むには不便なほどに自然豊かな土地を所有し、それぞれの種族に似合った環境を造り上げている。

  

 その広大な土地は四天王と呼ばれる四人の強大な力を持つ魔族たちにより分割され、それぞれが自らの土地の王として君臨している。

 それぞれは王でありながらも、自らの軍を率いる軍団長として戦場に立ち、自らの強大な能力により、人類との戦争に勝利を収めることもある。

 一部地域での戦闘は情報として残っていても、人類にとっては謎が多い四天王を始めとした魔王軍。残っている情報の一つとして挙げられるのは、四天王の一人はサキュバスであるという――


「サキュバス!?(ガタッ」

「座ってなさい」

「はい(着席」


 ん゛ん゛っ゛――改めて、四天王の一人はサキュバスであるという情報が伝わっている。別名は夢魔と呼ばれ、人間――特に男性の夢に現れ、性的な行為の上で死に至らせるという伝承を持つのがサキュバス。

 サキュバスはその能力のイメージが強いが、四天王としての彼女は戦闘も得意としているらしく、戦場で姿を見かけたのなら圧倒的な力で全てを蹂躙するという―― 


             ●●●


「それが、私が把握している魔王軍の内情です」

「サキュバス、かぁ」

「はい。他の四天王と違い、サキュバスの四天王だけは出現情報をよく耳にします。ですから、魔王への接触を最初に阻んでくるのもその者なのではないかと思います」

「サキュバスだったかぁ」

「だめですよ、この人もう頭にエロいことしかないんで」

「害虫は黙ってろ」

「ひどくない!?」

 王妃に殺虫剤を向けられたハルは、王子の後ろへと逃げ込んだ。

「改めて勇者様、そして愛しき私の息子! あと害虫。3人で魔王を討つのです!」

 ここまで敵軍の脅威を語った王妃は、それでも勇者椿己――そして王子とハルが魔王を討ってくれるという期待に瞳を輝かせていた。

「ふっ、仕方ないな。せっかく勇者として呼ばれたんだ、魔王ぐらい倒してやる!」


「……僕は正直、お役には立たないと思います。仕方ないですよね、赤ちゃんなんですから」

「私は王子様といるから無理♡」

「……」

「……」

 ノータイムで断る王子とハル。そんな中、椿己は王妃と目があった。

 

「言っておくが、俺はソロ(ぼっち)だ」

「草」


    〇〇〇


 同時刻、魔王領。

 その中心、魔王城の一室へと四人の影が集まった。

「私たち四天王が集まるなんて何年振り?」

「さぁ~」

「ま、魔王様また来てない……僕、会いたかったな……」

 中心で炎が揺れる広い円卓を囲むのは魔王軍その四天王。雑談に華を咲かせる暇も無く、一人が本題を切り出した。

「ついに、現れた……らしい」

「あ、現れたって、ももももしかしてアレ?」

「聖剣……持ちし、勇者……魔王様に、脅威をもたらす者……」

「来ちゃったスラか~」

「な、なにその語尾」

「キャラ付けスラ~」

 遊ぶような声色で進む話、しかし誰一人として目は笑っていない。


「それで、誰が……殺りにいく?」


 瞬間、四天王全員が暴風雨のような殺気を溢れ出した。

「私、試したい技があるスラよ」

「遊びじゃ……ない」

「ぼ、僕行きたいな。魔王様に、勇者の剣をお土産に持って帰るんだ。えへへ」 


「私が行くわ」

「貴様が、適任……か」

 一人から舌打ちがなる中、選ばれた声の主は笑い声をあげる。

「ふふっ。戦いの舞台にすら立てない屈辱の中、絶命させてあげようかしら。ちゃんと、死ぬほど気持ちがいい絶頂の中でね♡」


   〇〇〇

 

 その日の夜、王都にて。

「ふわぁ、明日から冒険の始まりかぁ」

 大きく伸びをする椿己。王城の中に部屋をあてがわれたらしく、明日からの活動のために睡眠をとるところだった。

「ってか、チ〇コが剣になったせいでうつ伏せに寝れないじゃん! 仰向けであんまり寝るタイプじゃないんだけどなぁ」 


「――あら、勇者様はこれからお眠りね。うっふふ、そのまま二度と目覚めないとも知らずにね」

 その光景を街の外れから眺める存在が一人。ただでさえ暗く、人間では見ることのできない程遠方から、赤く目を輝かせた瞳にはベッドの横に立つ椿己の姿がしっかりと捉えられていた。

「誰だ!?」

 すると、守衛が数人駆けつけてくる。

「あら、こんな時間までご苦労様ね。ここまで敵に侵入されて仕事をしていると言えるのか微妙だけれどね。あはは」

「敵!? その姿、サキュバス――もしかして、魔王軍四天王か!?」

 ちょうど月明かりが射し、その姿がよく見えた。

 

 赤い瞳、亜麻色の長い髪を持った美しい顔立ちの女性。出るところは大きく、締まるところは締まった男を魅了してしまう魅惑の身体つき。コウモリのような黒い翼。黒い軍服に身を包み、自分が魔王軍であるということを隠そうとすらしていないようだった。


「先輩。この人……び、美人っすね」

「馬鹿野郎! こいつに、何人やられたか知らねえのか?」

 先輩らしき守衛は、へらへらしてた若い守衛を殴りつけると、手に持っている槍をサキュバスに向けた。

「へぇ……私のことを見て、それでも戦う意志がある人間なんて久しぶり♡」

 守衛は鋭い槍の一撃をサキュバスへと突き出す。 

 

 若い守衛は知っていた。先輩の槍捌きは、国の誰にも負けないものだと。

 しかしその国一番の槍は、サキュバスの指先で簡単につままれ、直後にはまるで剣のように伸びた爪先により先輩は切り刻まれた。

「せんぱ――」

 それを認識した時には、既に自分の眼前に爪が迫ってくる、今まさに自分が切り刻まれる瞬間だった。

 

 数人の守衛は、何かすることもできずに血の海に倒れた。

「私は魔族最強のサキュバス。私に勝てる人間だなんて……勇者ぐらいかしらね」

 サキュバスは爪についた血を地面に払うと、改めて王城――勇者がいる一室に目を向けた。

「その勇者も、今から死ぬんだけどね♡」


 すると、サキュバスは赤い瞳を一層強く輝かせた。

「せっかくだから、私一番の能力で貴方を殺してあげる♡」

 

 サキュバスをサキュバスたらしめる、性交による搾取。そのために、男性を魅力的な肉体で誘惑して抗えない性交渉を行う。

「私のこの力は、その性交渉を省略して、直接性行為に及ぶことができる――」


 そのスキルは、相手の男性器に直接テレポートするというものだった!!


「――スキル発動! 永遠におやすみ♡ 勇者様!!」



 ~翌朝~


「ふわぁ、なんか騎乗位する夢を見た気がする………………えっ?」

「ぐ、ぐふっ……♡」


 ……なんか突き刺さってた。


 仰向けに寝る椿己の、剣になったチ〇コの辺りにサキュバスっぽい美人な人が突き刺さってた。椿己の主観と腰に感じる重さだけでいえば、どう見ても騎乗位。


「さ……さすが、勇者……様♡ 立派なモノをお持ちなの、ね……♡」


※生きてます


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