LAW〜共感裁判〜

永久 太々(ながひさ たた)

プロローグ 殺人が許された世界

ここは第二日本帝国アルシア。


疫病が流行り、多くの人々が死んだ。

そして、政府の対策へ不満が暴走してしまった日本。


政治家は淘汰され、新たな政府が誕生していた。


新たな政府を発足した者。

ソルダード・メンデス。


そう。名前の通り、日本のトップは天皇でもなく、海外からの来訪者。


島国の鎖国国家だった日本では考えられない事象だが、彼の言葉にはカリスマ性が溢れ、希望を感じるのも事実だ。


日本人は皆、そこに惹かれたのだろう。


ただ、一つ。

メンデスが改定した法律には、どの国にも聞いたことのないものが加えられた。


それは『殺人を認める特例』ができたこと。

その特例とは『人々の共感を得る』ことだ。


殺したい側の人間を『キラー』、指名される側を『シープ』と呼ぶ。


キラーがシープを法廷に呼び出し、何故殺したいのか理由を国民に訴えかける。


その模様はリアルタイムに地上波放送で中継され、リモコンのボタンひとつで投票ができる仕組みになっている。


そこで殺人に賛成する国民が過半数を超えた場合、キラーがシープを殺すことが合法となる。


もちろんキラーへの共感が得られなかった時にはペナルティが与えられる。


それは勿論、シープがキラーを殺すことが認められる。しかし、必ずしも殺さなければいけない訳ではなく、殺すか生かすかは選択式だ。


どんな理由であれ、殺人を許すなんてどうかしてる。


でも僕は疫病で職を失い、やっと働き口を見つけたのが、この法廷での裁判官だった。


それはそうだ。


皆んなこんな仕事したいはずがない、自分たちが最終的に殺人を認め、殺せる場を与えるなんて、荷が重過ぎる。


でも生活するためには仕方ない。


僕は一ノいちのせ 暖人はると

また今日も共感裁判『LAW』が開廷される。

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