第2話
ここで改めて自己紹介をしておこう。俺の名前は、
昼休みも一人で窓の外を見て過ごすような典型的なぼっちで、クラスカーストも何もあったもんじゃない。その競争にすらカウントされないような、優雅なぼっち生活を営んでいる。俺のことを三文字で紹介するとしたら、もうこの言葉しかないのだ――そう、「ぼっち」である。
そしてもう一人、
明るい性格で、もちろんクラスカースト第一位の一軍の中の一軍だ。もはやそのカースト頂点すら超えて、神の領域に居るんですかっていうくらいの、存在。要するに三文字でまとめると「人気者」。
つまり、俺と河瀬海來は真反対の位置に立つ存在であり、本来ならば俺たちは「一年間、クラスが同じだっただけの人」の関係で終わるはずだったのだ。
――なのに。
「ねぇ、和樹! 数学教えて!」
この
「やだ」
俺は周りの目を気にして短く断るが、河瀬の執念は凄い。
「えー、この一問だけだから! ね、お願い! 数学ってほら、得意な人に聞いたほうが絶対に伸びるからさ!」
「数学得意なやつなんて他にも居るだろ。第一俺は、そんなに得意じゃねぇ」
「何いってんの、この前のテスト九十五点でしょ?」
「は……? なんでお前が、誰にも言ってない筈の俺の前回の定期テストの数学の点数知ってんだよ!」
「はーい、ツッコミ長すぎ。コミュ力高めたいって言うのならね、もっとテンポの良い会話を心がけなさい?」
「俺そんなこと言ってねぇぞ」
「そーそー、そんな感じ」
パチパチと両手を叩きながら、河瀬は「で?」と俺の目を覗き込んだ。
「どーしてこの問題はこーなるの?」
ずい、と俺の机に問題集のページを差し出してくる河瀬海來。まじでこいつの話の展開の仕方はよくわからないし、第一だな、河瀬お前頭いいだろ。
「なぁ、河瀬。お前この問題分かってんだろ」
「……ぽ?」
「ぽってなんだよ、ぽって。とぼけんじゃねぇ」
「いやぁ、ごめんね。図星だったから思わず」
「図星なのかよ。だったら聞くなよ」
「えー、和樹ってば、つめた~い。自販機の冷たい飲み物くらい、つめた〜いよ」
「意味わかんない例えすんなよ」
あのな、と俺は声を潜めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます