理の魔法

功琉偉 つばさ

はじまり

「ここは… どこだ」

俺は一宮理奇いちのみやりく

年は16の高校2年生、

A高校化学部に所属している普通の男子高校生だ。


俺はいつもの通り放課後、一人で実験をしていた。

なぜ一人かって?

なぜならこのA高校化学部の部員は全員で3名しかおらず、しかも俺以外の2人は頭が良すぎて海外に留学しているからだ…

俺一人だけ学校に残っていて虚しくなる。

それに先月にあった新入生の入部期間では一人も新入生を獲得することができなかった。本当に不甲斐ない。


まあ自己嫌悪はここくらいにしておいて、本題に入ろう。

俺はついさっきまでヤケになってなんか適当にたくさんの薬品たちを混ぜてどうなるのか。みたいな馬鹿な実験をしていた。

場所はA高校の旧校舎にあるもう誰も使っていない科学室。

そこに硫酸やら硝酸やら…と性質の強い薬品を持っていって混ぜて加熱して電気分解して…なんてことをしていた。

そしたら水素爆発(だと思う)が起きてしまい、気がついたら知らない森林の中にいた。

「夢じゃないよな。もしやここは、今流行りの異世界転生っていうやつか!」


こういう、いわゆる転生ものではなんかチート能力とか、スキルとかがたいてい転生者には付与されている。

それに期待して俺はなにかないかと自分の身の回りを見てみたり、あちこち触ってみたりしたが、なにもなかった。

そうなにもなかったのだ。自分がさっきまで着ていた制服やら、白衣やらがなく、なにも着ていない状態でいた。

まあそりゃそうだ。異世界に転生して、現実世界のものを持ってくるなんてそんなの普通じゃありえない。

どうやって転生するときにその持ち物を認識しているんだって話だ。

別になんかワープホールみたいなものに入って来たわけでもないのだから。

そうして俺はこの貧弱な体でとりあえず、周りを探索することにした。

まあ、文明が発達する前はそうだったんだし、別に大丈夫だろう。

そう高をくくりながらとりあえず川を探すことにした。


しかしそんな都合のよく川が、飲める水が見つかるなってまったくない。

この森に至っては動物は鳥のようなものを見かけるだけだし、虫までは気が回らないし、植物もなんか変なものばかりだ。

そりゃあ異世界?だもの。

現実世界?前にいた席の常識は捨てなければいけない。


30分くらい歩いだが、なにも見つからず、疲れ果ててしまった。

「水がほしい…」

幸い気温はそこまで高くなく、また湿度が高めだったためまだ大丈夫そうだが、そろそろ水を見つけないとやばい。

足も裸足なので汚れ、痛くなってきている。


そんな簡単にスライムやらゴブリンやら… みたいなモンスターとかがやってきて、そこにチート能力たるもので勝って…みたいなことはないし、

すぐ近くに人里があったり、冒険者がいたりするものでもない。

能力がないと言われるけど実は最強だった…とかないかな。


俺は転生してそうそう、幻滅をして絶望しかけていた。


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