戦国恋愛りぁりてゐせう(せんごくれんあいリアリティショー)

ちびまるフォイ

戦いの果てに勝ち取るもの

「"戦国りぁりてゐせう"とな?」


集められた甲冑の戦国武将の前には、

きらびやかな着物に身を包んだ女性がまっていた。


「ふむ。わしの家臣から聞いた話では

 "戦国りぁりてゐせう"で双方の合意ならば

 婚約の儀ができるというそうじゃないか」


「なんと!!」


戦国時代における結婚といえば政略以外の目的はなかった。

武将たちは童貞のように鼻息あらく女性たちに熱視線を送る。


「そのもの、身分をあかせ。

 よき家柄であればわしがめとってやるぞ」


「言えません」

「ぬ?」


「言えませぬ。戦国りぁりてゐせうのルールとして

 自分の身分を明かすことはできないのです」


「なんだと!? それじゃ運良く"かっぷる"になったとしても

 相手が百姓の娘ということもあるのか!」


武将たちはざわついた。


政略以外での結婚観がない彼らにとって、

低い身分と結婚することはハズレに等しい価値観だった。書いててムカつくな。


そんなわけで戦国武将と正体不明の女性による、戦国りぁりてゐせうが始まった。


プログラムにのっとり、戦国武将と女性陣は乗馬体験やら

かまどでの料理体験などを通じて仲を深めていく。


相手の人となりを知ろうとする女性陣に対し、

あいかわらず戦国武将たちは家柄のさぐりをいれるばかり。


「どうじゃ? ぬしは誰が高貴な身分だと思う?」


「それがしは、あの"おつね"という方が身分高く思われる」


「それはなんぞや?」


「しゃなりしゃなり歩く感じが、まさに高貴なる方の足の運び方よ」


「浅いな。それくらい誰にでも偽れる」


「では、なんじこそ誰だと思うのじゃ」


「わしも"おつね"じゃ」


「同じじゃねぇか!」


「わしの観点はちがう。あの髪をみればわかる。

 手入れの行き届いた髪。あれはまさしく高貴なる身分の象徴ぞ」


「それでどうするつもりなんだ?

 このあとの"ぶしょう・せれもにゐ"で告白をするのか?」


「いや、それじゃおそい。武将たるもの行動あるのみよ!」


「あ、おい!!」


誰よりもたけだけしい武将はひとり、おつねさんのもとへ馬を走らせた。


「おつね、そこで待たれよぉーー!」


「な、なんでしょう……?」


「わしは決めたぞ! お前をめとろう!」


「え……?」


「さあ、わしとともにまいれ!

 なんじの家柄とわしの武力を持ってすれば

 あらゆる覇道をもかけぬけてーー」


「え、いやです」



「……ゑ?」



「いやです」



「なんでじゃーー! 誰よりも先に告白したのに!」


自分が告白すれば断るなんて可能性を考えていなかった。

一部のモテモテ男子高校生のような思考回路で武将は突撃し、

もののみごとにあたって砕けた。


「だって、あなたは誰よりも女性を品定めしてたじゃないですか」


「当然だ。そこの何が問題なのだ」


「まるで女性を自分の装飾品でも見るみたいに。

 私は本当に自分が良いと思った人と結婚したいのです」


「なにを勝手なことをーー!

 ええい、武将に恥をかかせるとは! ゆるさんぞーー!」


武将は腰の刀を抜いた。


"勝ち確で告白しといてフラれる"という恥ずかしさは万国共通。

いつの時代もかわらない部分だった。


「覚悟しろーー! たたっきってやる!」


武将が刀を構えた時、戦国りぁりてゐせうの運営が割って入る。


「告白失敗です! ペナルティを受けてもらいます!」


「ぺなるてぃ? うわわっ!?」


運営の指パッチンで武将の足元にワープホールが出現。

吸い込まれた先はまさに戦地のまっただなかだった。


「なんじゃ!? 戦国りぁりてゐせうはどうなった!?」


《 あなたは告白に失敗しましたので合戦へ送られました 》


《 もし生きて帰ってこれたら、再度参加権を獲得できます 》


「ぺなるてぃが重すぎるだろ!!」


天の声に猛反発する余裕があったのはここまで。

すぐに敵と刃をまじえることになりそんな余裕はなくなる。


「くそーー! こんなところで諦めてたまるか!

 ここで武勇をたてれば"おつね"も心を変えてくれるはずだ!!」


武将は合戦の渦中へと飛び込んだ。

合戦は激しさを増し、三日三晩寝ずに戦い続ける地獄の様相となった。


「はぁ……はぁ……なんて手強い相手……。

 こんなにキツい戦ははじめてじゃ」


「そりゃそうだ。相手はサイトーだぞ」


「なに!? あの1兆万石のサイトー家か!?」


「あんたそんなことも知らずに戦ってたのか……」


「それを聞いて自分がまだ生きていることに驚きじゃ。

 いやむしろこれは好機かもしれぬ」


「こんな満身創痍の状態で何をする気だ?」


「ぬっふっふ。サイトー家の大将首をとれば、

 おつねも間違いなく、わしに惚れ直すことだろう。

 ココに来て、本気で戦う理由ができたぞ!!」


武将は本気を出すことを決めた。

おもむろに下着をぬぎはじめる。


「おいあんた何してるんだ!?」


「本気を出すといっただろう」


「こ、この下着は!? なんて重さだ!!

 あんたこんなものを身に着けて戦っていたのか!!」


「ふふふ。次の戦場では鬼神が舞い降りるだろうよ」


武将の宣言どおりだった。

かせを外したことで武将の動きは鋭さを極めた。


「お、鬼だぁ!!」

「助けてくれーー!」


まさに鬼神のごとく敵をなぎはらってゆく。

おしむらくはノーパンスタイルというカッコ悪さだけ。

しかし時代は戦国。たぶん気にしない。


そしてついにサイトー家の本陣へと切り込んだ。


「見つけたぞーー! 大将くびーー!!」


武将は"おつね"への再アタックをするため、

ついに大将の首を討ち取った。


「この合戦、わしがもらったぞーー!!」


サイトー家が敗北したことで、サイトー家関係者の没落が決まった。

今後サイトー家の関係者は末代まで命を狙われるだろう。


戦が終わったことで、ふたたび天の声が話し始める。



《 驚きました。これほどの戦を生き残るなんて…… 》



「わしは自分の覇道を諦めたりはせん。

 おつねと政略結婚し、ますます領土を広げるのだ」



《 約束通り、再び戦国りぁりてゐせうに戻しましょう 》



いつかみたワープホールに吸い込まれ、今度は恋愛の戦場へと駆り出された。

もとに戻った武将はレクリエーション中のおつねのもとへ猛ダッシュ。


「どけい! わしが戻ったぞ!!」


戦がえりでボロボロの状態を見て、おつねは言葉を失った。


「お前がほしい!! 今はなによりも!!」


「まさか私のためにここまで……」


「そうとも! わしはおつね、お前を手に入れるため

 名だたる武将をこの手で粉砕して、今舞い戻ったぞ!!」


「すてき……!!」


ガードの硬かったおつねも武将の努力に心を打たれた。


「わしと結婚してくれるな」

「はい……!」


さまざまな困難と死地を超えて武将はついに手に入れた。


「ああ、これでわしの人生はあんたいじゃ!」


「そうです。私の家もすべてあなたのものです」


「おおそうだ。忘れておった。これで戦国りぁりてゐせうは終了。

 なんじの家を明かしても問題ないだろう?」


「ええそうですね。わたしの家は……」




「私は、サイトー家の長女、おつねと申します」



かくして武将は、これより没落するサイトー家の仲間入りを果たす。

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