第19話 ピンチかもしれない
三人が依頼から戻ってくるまで宿で心を落ち着かせることにした。
夕方くらいには帰ってこれるって言ってたからそれまでにはプロポーズの言葉とかも考えとかないとな。
場所は?ここか?
レストランとか予約した方が良いのか?
プロポーズってそんな感じだよね?
「……いや、僕が緊張で胃がはち切れるから無理だな」
他の客もいるだろうしね。
となると二人っきりになれる場所だ。
……もうここで良いんじゃねえか?
僕は夕方までプロポーズの事を考えていた。
窓からオレンジ色の光が差し込んだときにはびっくりした。
いつの間にか数時間経ってたんだもん。
「そろそろ帰って来るよな……うっ胃がぁ……」
僕は緊張しつつも三人の帰りを待っていた。
しかし、辺りが暗くなっても三人は帰ってこなかった。
依頼先で何かあったなこれ。ルイが夕方までに帰るって言ってたんだ。
それまでに終わる依頼を受けたはずだ。
とりあえず冒険者ギルドに向かおう。そうすれば受けた依頼くらいは分かる。
僕はギルドに向かって全力で走った。
ギルドに着いた僕は受付に直行する。
「あっハルさ──」
「ルイと他二人は何の依頼を受けた?そもそも帰ってきてるか?」
「い、いえ。帰ってきておりません。依頼を受けてから誰も」
「依頼は?何を受けた」
「えっと……ゴブリンの討伐です」
「ゴブリンか……場所は」
「【隔ての山脈】付近です」
「帝都からあそこまではあいつらの三人の足なら2、3時間で着くな。何もなければ帰ってきてるはず……ちょっと探してくる」
「は、はい!お気をつけて」
僕はギルドを出て【隔ての山脈】付近の森に急いだ。
あそこらへんは強力な魔物がいる。ゴブリンを討伐した後に強力な魔物に絡まれたか?
でもアイがいる。それにルイだってここ最近で強くなってる。
ルナさんも近衛騎士ということで十分強い。
「ドラゴンでも出たか……」
あの森にはドラゴンもいるからな。
僕はSランクになる時に倒したことあるけど、あの三人じゃ荷が重いな。
僕はギルドを出て【隔ての山脈】付近の森に急いだ。
────────────────
「でへへ」
私、アイはニヤけていた。
強力な魔物が出る森で。でも油断はしてないからね!
だからいくらニヤついても大丈夫!(謎理論)
「姫様、どうしたのですか?」
「ルナ、ハルくんの今朝の様子みた?」
「えっと……出かけてくると言ってましたね」
「うん。それで今日は依頼には一緒に着てくれなかったけど」
「それの何がアイさんのニヤける要因になるのさ」
「いやぁ多分ハルくん、今日プロポーズするつもりなんだよぉ」
「「!?」」
「ほんとに?あのヘタレな兄さんが?てかなんでわかんの?」
「そりゃ顔に書いてあったから」
「えぇ……絶対兄さん指輪買ったところの店員に背中押されて今日プロポーズしよって考えると思うんだけど……絶対朝の時点で決めてないと思うんだけど」
「まあしてくれるとは思うんだー。なんとなくそんな感じがする!てことで頑張って早く終わらせるよ!!」
「ちょっ待ってください姫様!」
私は早くハルくんに会いたいがために依頼を速攻で終わらせた。
依頼内容はゴブリンの討伐。集落が発見されたからそこの壊滅だ。
本当はランク的には受けられないけど私たちはそれなりに討伐依頼も受けたし、実力もあると判断されて昇格試験としてこれを受注させてもらった。
ゴブリンの集落を壊滅させた私達は魔石を取り出して死体を燃やす。
魔物が寄ってきちゃうからね。
そこから少し離れたところでちょっと休憩してると、強力な魔力を感じた。
「っ!」
「どうしたのですか?」
「まずい……」
「え?どうしたの?」
「こっちに来る!!」
「え──」
瞬間、何かが私達の前に降り立った。
その風圧で周囲の木は吹き飛び、私達も吹き飛びそうになった。
私の氷魔法で壁を作り、なんとか耐える。
「っ!ドラゴン……」
そこにいたのはドラゴンだった。
色からして炎属性。私とは相性最悪だ。
階級は分からないけど……下級では無い。
前に戦ったことのある下級ドラゴンよりも魔力の質、量が違い過ぎる。
最低でも中級だ。
これは……勝ち目が無いっ。
「逃げるしか無いわ!」
「分かりました!」
「わ、分かっ──」
「グオオオオオオオ!!!」
咆哮と共に、ドラゴンは炎を発した。
その炎は私達の周囲を囲んだ。
逃げ道を塞がれたっ!
さっきの炎で殺せたはずだ……ならこのドラゴンは遊んでるのか。
そういった個体がいるのは本で見た。
「ど、どうしますか姫様」
「俺の水魔法じゃあいつには届かないぞ」
私の植物魔法も氷魔法も炎にはめっぽう弱い。
植物魔法は近くにあった植物が消し飛んだからそもそも使えない。
氷魔法は牽制程度には使えるかもだが、魔力を多めに込めないと溶かされる。
ルナの属性は炎だ。炎の属性の恐らく中級以上のドラゴンには効かないだろう。
ルイくんは水属性だが魔法の練度はそこまで高くないし魔力量も少ない。
「死んだかもしれない」
私、こういうの本で読んだことある。
「俺、この戦いから帰ったら結婚するんだ!」って言った奴はみんな死んでた。
死亡フラグってやつだ。
どうやら私にも立っていたらしい。
くそぅ……こんな事ならハルくんの口に舌をぶち込んどけば良かった。
「アイさん!諦めちゃだめです!!」
「!」
「兄さんとイチャコラするんでしょ!?ここで死んだらそんなことも出来ませんし、兄さんが悲しみます!」
「……うん、そうだよね。私は絶対にハルくんとイチャコラするんだ!!死ぬわけにはいかない!!」
それにハルくんの結界だってあるのだ。
見えないけど、ハルくんの温かい魔力が私を包んでる気がするもん。
私達はドラゴンと向かい合い、殺気をぶつけ合った。
「ぐぅ……」
なんて殺気……っ!私達の殺気を感じて怒ってるのかな?
「おもちゃのくせに生意気な!」とか思ってんのかな?
誰がおもちゃよ!!
「私はおもちゃじゃないわ!!!」
「急にどうしたの!?」
「あっ……ちょっと妄想で言われたから」
「自分の妄想にキレないでくださいよ……まああいつ、絶対おもちゃ扱いしてるけど。そのくせ、しっかり強いのなんなんだよ……殺気を食らっただけなのに足がガクガクしてるよ……」
「私もよ」
「私もです」
私達は足をガックガクさせながらドラゴンの攻撃を避け、時には魔法で反撃を繰り返し、そうしたらいつの間にか辺りは暗くなっていた。
───────
多分次回で終わりかなぁ。
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