婚約破棄されちゃった転生貴族のお話
九城オウカ
第1話 婚約破棄だぜヒャッハー!!
僕、ハルトは今……
「ハルト・エルムス!私はお前との婚約を破棄する!!」
婚約破棄されている!!
貴族共が集まるパーティーで!公開処刑かよ!
「な、なぜですか!?」
我が父上が王女に問う。
問わなくても分かると思うんだけど……
「ハルトは剣を使えば手からすっぽ抜け、魔法は防御にしか使えない結界魔法のみ。学力も平凡じゃないか。こんな奴が王女の婚約相手に相応しいと思うのか?」
「そ、それは……」
「だがハルトの弟のルイは素晴らしい!剣の才があり、水魔法の練度も高く、頭も良い!て事でルイ!今からお前は私の婚約者だ!」
「え?」
僕の隣に立っている弟のルイがビックリしてる。
だろうな。いきなり王女の婚約者にされたんだもんな。
国王は王女に甘いから断ればヤバいしな。
「嫌です」
……断った!
めちゃくちゃいい笑顔で!
「な、なんでだ!ワシの娘の何が悪いのだ!」
今までずっと黙っていた国王が声を上げる。
「いや、逆に何が悪いのか分からないんですか?」
「分からん!ワシの娘は完璧じゃ!」
「はぁ……」
これには思わずマイブラザーも嘆息。
「色々あるでしょ。暴言は吐くわ、人を見下すわ……こんな人間と誰が結婚したいんですか」
おぉ流石我が弟。バッサリ言ったな!
「な、な、な、っ!!無礼な!!ルイ!お前をこの国から追放する!ついでに横でニヤニヤしてる出来損ないもだ!!」
「「……マジ?」」
僕とルイは顔を合わせた。
そして頷き合い、再び王に顔を合わせ笑顔で言った。
「「ありがとうございますぅ!!!!」」
「……は?」
王や貴族共がポカーンとしてる間に、僕とルイはパーティー会場である王城から飛び出した。
僕、ハルトは転生者だ。
目が覚めたら異世界の貴族に転生してた。
よっしゃ異世界だ!チーレムだ!とか当初は思っていたが、剣は手からすっぽ抜け、魔法はこの世界では不遇と言われる結界魔法。
それに父親はクソ野郎。さらにあのクソ王女が婚約者。
僕の異世界生活オワタと思ったね。
だがこれからは自由だ!
国外追放ってことは伯爵家からも追放されることになる。
マジで枷が外れた。
「兄上、これからどこに行くのですか?」
こいつはルイ。マイブラザーだ。
ルイは僕とは違って剣の才がある。
体もデカいし。僕とルイは3歳差だ。なのに僕とルイの身長はほぼ同じだ。
僕なんてチビで女の子みたいな顔してるんだよ?
僕はめちゃくちゃ母似だ。母上はめちゃくちゃ美少女だったし。僕にめちゃくちゃ優しくしてくれた。
母上はルイを産んだ時に亡くなってしまった。
あれは悲しかった。1度ルイを恨んだがルイが可愛すぎて恨みなんて消えた。
まあ亡くなっちゃったのは悲しかったけどね。
まあそれは置いといて、国王はバカだね。
こんな優秀な人間を追放するなんて。
「隣国、セブンズ帝国だ」
「帝国ですか……確か【隔ての山脈】の向こう側ですよね?」
「ああ、道はしっかり記憶してるからバッチリだ」
「流石兄上!」
「だが1つ問題がある」
「ほへ?問題?」
「【隔ての山脈】はその名の通り、帝国と王国を隔てる山脈だ」
そのお陰で王国は帝国の侵攻を受けずに済んでいるのだ。
「伯爵領には帝国へ続く道があるのは知ってるな?」
「はい。【繋がる道】ですよね」
「そうだ。そこしか帝国に行く道は無い訳だが……そこを通る事が出来ないのだ」
「え?なぜです?」
「僕が追放された所で痛くは無いと父上は考える。だがルイ、お前がいる。お前は優秀だったからな。その者を他国に流すのは王国にとって損失だ。僕達が屋敷に戻り、荷物を準備してる間にその道は封鎖されてるだろう」
「なるほど……」
全く、めんどくさいぜ。
1度追放したんだからそのまま放置してくれれば良いのに。
まあこれは僕の予想だからな。アイツら馬鹿だしワンチャン杞憂で終わるけど。
「ではどうするのですか?」
「山」
「え?」
「山を登ってくぞ」
「……【隔ての山脈】は高ランクの魔物がうじゃうじゃいるんですよ!?そんな所に子供2人で行くなんて……自殺行為です!!」
「ふっ……これを見ろ」
僕はポケットからカードを出す。
これは冒険者ギルドのカードだ。
そこにはSと書かれていた。
「えす?……兄上が!?」
「そうだ!」
「流石です!」
「なっはっは!!Sランクが1人いればあの山も越えられるだろう」
「そうですね!急いで戻りましょう!」
「そうだな」
さて、ここで皆さんが不思議に思ってる事を1つ。
いやお前、剣使えなくて魔法も結界だけでどうやってSランクになったんだよってね。
あっ因みにSランクは冒険者のトップね。
うんまあ答えは簡単だよ。結界で魔物を倒してきたからさ。
防御にしか使えないって言ってたじゃん?
あれはこの世界での常識だ。
そう、この世界のだ。
僕は生まれた時から前世の記憶を保持していて、僕には結界魔法があると分かった時から今までずっと自分に何重もの結界を張ったり、色々な効果を持つ結界を作ったりしていた。
お陰で魔力量はエグい事になったし、攻撃性能も高くなった。
じゃあなんでお前はそれを公にしなかったのかって?
僕的にな?表では無能で裏では最強ってカッコよくね?と思ったのだ。
あと母上に言われた。貴族社会はめんどくさいから早く逃げるために力を隠せと。
力を示せば王国に拘束される。この国はいつか帝国と戦争をして消えるから戦争が始まる前に逃げなさいと。
3歳児に何言ってんだこの人って思ったね。
まあそういった事があって僕は今まで爪を隠してきたのだ。
「兄上!そんなゆっくりだと朝までに着きませんよ!」
「すまんすまん」
僕とルイは暗い夜道を走り、伯爵領に戻った。
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