第15話 狂気
ジャンヌが凄まじい勢いで中層三十五階まで迫ってきたのを見るに、如何に表層二十階が難しいのが分かる。
「アルデン殿、前方突破は宜しいか?」
超高速で、ダンジョンを駆け巡るジャンヌは、
「いいぞ!」
「後ろから援護するよ」
以前イヴが一撃で倒したゴーレムを苦戦しながらも、倒し続ける古参組のアルデンとジャンヌとアリア。
何度も周回して、連携が極まっている。
主にアルデンが特攻を務め、敵を各個撃破し、ジャンヌが味方のバフを高めながらも、敵の誘導をし、アリアの凄まじい観察力と聴力での気配察知で残党を一匹残らず矢で射抜き、精霊を召喚して守りも固めている。
それぞれのシンパシーが高すぎるが故に、大抵の敵は即死するのだが、中層三十五階のゴーレムは異常なほどに硬かった。
それを体験したアルデンは心底、イヴのあの一撃に震える。
何をどのようにしたら、一撃で捻じ伏せられるのだろうか……と。
惚れ惚れする、或いは畏怖する。
もしくはその両方か……
どれだけ強くなったとしても、イヴの背中を見ることすら叶わない。
そう理解させられたアルデン。
今、最もイヴの実力を知るのは彼だろう。
そうして、三人メンバーで、この階層を何度も周回し、一階上がってまた周回。
それを続けて一ヶ月程度で四十階までたどり着き……それから二週間程度でA級メンバーは全員四十階に到達した。
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「なあ、エイフィ……お前まじで痛み感じないんだな」
「アルデン様……私とて心の痛みは感じるのですよ?」
エイフィを盾にしながら突き進むアルデン。
エイフィは痛みを感じず無限に回復するので、アルデンが盾として使ったら強いんじゃね?
と考えた結果、今回試した戦法だった。
しかし、いくら痛みを感じないかつ、魔力がある限りほぼ無限に再生できるエイフィは、アルデンに首根っこを掴まれて魔物の攻撃からの盾にされたのに非常に不満げである。
「あ、そうなのか?」
「ですです」
そりゃ当たり前である。
「くそ、便利だったんだけどなぁ」
非常に惜しい顔をしながら畜生発言をするアルデン。
「……ならば非常時にのみ使ってください」
ダンジョン攻略はイヴ含む全員が望んでいること。
故に、自分がどうなろうと結果的に良ければそれでも良いと思ったエイフィは、アルデンにそう伝える。
「……おまえ、狂人だな」
「アルデン様がそれ言いますか?」
お互いが見つめ合い、数秒経って……
「くは!」
「ふふふ」
笑い合った。
◆◇
カインは我慢の限界だった。
B級に落ちてからと言うもの、ふざけた笑い声と、他人を見下すその声の嵐。
弱いやつをいじめて、悦に浸っている。
自分が戦略として数えられているからとタカを括ってふんぞり帰っているばかり。
醜悪。
ロベールさんが命を落として守った命が、この始末だなんて……吐き気がする。
そうカインは、心底軽蔑した。
だから彼らを集めて一言、言い放つ。
「君たち、腰抜け?」
B級に落ちたカインは、既存のB級メンバーを煽りに煽る。
「いつまで経っても三十階でもたもたして、君たちの先輩や強い後輩達は、先に死んでいったのに、なんで笑ったままでいられるのかな」
そう静かに怒りを込めて言葉を浴びせるが……
「うるせーよガキ」
「は?今なんて言った?」
もしかして、実力差すら分からないアホなのかな?
あー、だめだ。
同意の無い争いは処罰されるから、どうせ手は出されないって分かってて言ってるのが、尚更腹立つ。
「はぁ、昔のB級メンバーは良かったのに、入れ替わったらこれとか……」
粛清してもいいかな?
いいよね?
「君たちのおかげでB級で少しやることができたよ」
まずはその腐った面を捻じ曲げてやる。
そう決めたら
舐め腐った小童どもを半殺しにしてもいいですか?っと……
お、もう来た……!
『許可するよ』
その言葉に思わず笑みが溢れる。
「おいガキ、何笑ってんだよ」
「んー、まずは口調を、改よう、ね!」
「何を……ゴフッッ!!??」
頭を地面に叩きつけ、強制的に口を塞ぐ。
「うんうん、元気だねー」
地面から出た足でなんとかもがく男を見ながらそう言ってみた。
その光景を見ていた人たちの顔が何故かみるみる青くなっていくのはなんでなんだろうね……?
あー、でも、すっきりしたあ!
今日から少しずつぶっ壊していこっかな。
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