第9話 生き方
表層最後の二十階攻略に向けて、遊里は
その中では、イヴ達のように攻略に意欲的な者もいれば、怠惰で何の役割も果たせない者もいる。
ただ、食料や部屋、施設は平等に与えられ意欲的な者でも不満を持つようになり、最終的には堕落してしまう者も少なくなかった。
あいつらが頑張ってないのに俺らと同じなら、頑張らない方がいいじゃん……と。
しかし、これを解決する簡単な方法があった。
それこそが
そうすることによって戦闘職と生産職それぞれのダンジョン攻略への貢献度が測られ、上位の者にはそれ相応の待遇がなされるようになった。
極めて単純だが、最も効果的なものだろう。
ただ、中にはそれに不満を露呈し反発する者もいる。
「なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだ!」
「そうよ、なら帰して!」
とても煩わしく
「平等にしろ!」
「こんなの平等じゃない!」
そんな主張を続ける彼らだが、ここでは言っていることが正しいか間違っているかなんて関係ない。
生き残るためには、停滞してはいけない。
進み続けなくちゃいけない。
ただそれだけである。
だからこそダンジョン攻略に悪影響があると判断したプレイヤーが
排他する為に。
「お前らはそれを主張できるほどの器じゃねえ。何もせずに寄生虫のようなお前らは宿主様の意向に逆らうんじゃねえよ」
大きな鎌を持った黒髪黒目の女性が男らしい口調で彼らの主張を掻き消す。
粛清という機能を持った
「俺様はよお、無能は嫌いではないが無能に甘んじるカスは大嫌いなんだわ」
鬼王以上の殺意を滲み出しながら
プレイヤーは要らないキャラをダンジョンに向かわせることで間接的に始末することができるが、
つまり本来はダンジョン攻略に行かない生産職さえも殺せる。
これならば確実にそのキャラを始末できるし実際に殺すシーンを見せてキャラに恐怖を与えて働かせるといった手法も取れる。
しかし遊里は穏健だったから、
だが、流石に彼らはやりすぎた。
折角プレイヤーは彼らを死なせないように育成させようとしていたというのに、訓練にも全く参加せず、おこぼれだけもらい、寄生し、気に食わなかったら叫ぶその姿にもはや愛情など微塵も感じなかった。
そしてついにその者は悲惨な末路を辿ることになる。
そして……
これは見せしめでもある。
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「さあて、誰から殺すか……」
その
死ぬ……?
なんで自分たちがこんな目に……
確かに彼らにとっては、その主張が正しかったのかもしれないが、正しさを決めるのは彼らじゃない。
誰から、どうやって殺そうか……と。
「よし決めた、まずはイヴにゴマすってたお前からだ」
大鎌を向けた先にいたのは持病で働けないとか云々かんぬん言っていた男だった。
イヴに猫撫で声でゴマをするその姿勢はまさに気持ち悪いのその一言に尽きる。
皆が必死でとってきた食料を貪り、不満を喚き散らす彼は、元々貴族の息子。
まるで必死さがない。
アルデンが一度殺そうとしたが、訓練所以外では
サーニャのように最後には自分の意思で進む覚悟を決めた者もいるというのに、彼は年端もいかぬ娘にすら劣っている。
「良かったな。お前は何も成せず、語り継がれることもなく、誰の記憶からも残らず死んでいくんだ」
そんな
それに喋ることを許されないため、爪痕を残すことさえ彼にはできない。
ただ酷く。
ただ残虐に。
ゆっくりと
彼らは恐怖に打ち震える。
あんな死に方は絶対に嫌だ……と。
「はは、そんな震えちゃってどうしたんだ?さっきみたいに叫んで自分の主張をしてみろよ!」
そう言って
さあ彼らを全否定しよう。
生まれたことを、生きる理由を、生きた証を……
死神の名の下に。
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「次はお前な」
その言葉通り、大鎌が目の前に飛来して、首が吹き飛ぶ。
嗚呼、こんなことならちゃんとやれば良かった……なんて子供じみた後悔を抱えて、彼らは死んでいく。
そして処刑が終わると
◆◇
食堂にて、小さな事件が起きた。
その場にいたジャンヌ、アリア、アルデンの三人は、その光景に唖然とする。
「ちょ、イヴ殿!?なんで裸で出てきてるんだ!」
そこには、お風呂から首に白い布を一枚ぶら下げるだけで、衣類を何も着ずにいるイヴの姿があった。
「ね、姐さん……羞恥心って知ってるか?」
アルデンは諭すように、しかしイヴに視線を送らないようにそう尋ねる。
「そんなもん捨ててきた」
「捨てちゃダメだろ!」
あっけらかんとそう言うイヴにツッコむジャンヌ。
とりあえずアルデンは、その場をそそくさと離れた。
イヴは目的のために必要ならば喜んで股を開くことも
そうしなければ生きていけなかったから。
「とりあえず服を、着てください」
アリアは赤面しながらイヴに言う。
「服を部屋に忘れたから取りに行く」
眠い目を擦り欠伸をしながら食堂を出ようとして……
「その格好で行くな!私が取ってくる!」
部屋に行くためには階段を登らなくてはいけないので裸のイヴが誰かとばったり会う可能性があるのだ。
ジャンヌはそうはさせまいと、自分の上着をイヴに着せて服を取りに行った。
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