第7話 試練
AAプレイヤーである遊里は、十階にてレベル三十程度では厳しいことを理解した。
もしイヴがいなければ、恐らく全滅してたと思う……
「クエストの内容も唐突に入れ替わったし次何が起こるか分からないからもうちょっと慎重に行くべきかなあ」
クエストが変化するといったことは稀にあることらしく、これをクエストを制作しているシステムとされる
「それにしても、表層でこれだけ難しいとなるとイヴだけじゃ厳しすぎない?」
キャラ達を育てるにしても、レベルには上限があるから、そう簡単にはいかない。
レベルの上限を解放する為には特定のアイテムを使わなければいけず、それを使ったとしても成功するかはランダムだ。
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等級が上がると、レベルの上限が上がるといったシンプルな特典があり、これはプレイヤーの間では必須事項であった。
何故ならば、SR以上の
ましてやSSRを引くなんてAA史上経ったの百回にも満たない。
故にプレイヤー達は低い等級のキャラのレベルを上げて、昇級というシステムをもってして高い等級キャラを育てるといったことをやっている。
これをプレイヤー達は養殖なんて言ったりする。
というわけで遊里も他のプレイヤーたちに従い下等昇級魂を使って、レベルマックスになったアルデンとジャンヌ、それからアリアの等級を上げることにした。
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成長限界Lv.1/10
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成長限界Lv.1/20
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成長限界Lv.1/30
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成長限界Lv1/40
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成長限界Lv1/50
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成長限界Lv1/70
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成長限界Lv1/100
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成長限界Lv1/140
・
成長限界Lv1/200
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成長限界Lv.1/∞
◆◇______
Lv.30/30
◆◇______
Lv.30/30
◆◇______
Lv.20/20
◆◇
三人は
「一体なんなんだ?」
アルデンはいつものようにダンジョン攻略で呼び出されたのかと思ったが、いつもと何かが違うように感じた。
「あなた方の昇級試練を開始します」
「昇級試験?」
ジャンヌが
「あなた方のレベル上限を解放するための儀式です」
「レベル?」
レベルを知らない三人は何を言っているのか理解できなかった。
「要はあなた方の成長限度の上限を上げることです」
「ってことは今以上に強くなれるってことか!」
アルデンは興奮したように口を聞く。
「……それでは、準備が出来次第お進みください」
興奮するアルデンを沈めながら言う
しかし、急に試練なんて言われてもさっぱりなアリアは
「あ、あの……試練の内容は何ですか?」
「それは入ってから確認してください」
しかし帰ってきた返答はとてもそっけないもので、これ以上は答えないといったような感じだった。
「んじゃ、俺は先に行くぜ」
蘇ったアルデンは真っ先に嬉々としてゲートを
「では、私も参る」
ジャンヌは静かに歩いてゲートに入って行った。
そして最後になるアリアは覚悟を決めてそのゲートを潜った。
そこに広がった景色を、私は知っていた。
黄金に茂く田んぼの輝き。
木漏れ日が落ちるその見慣れた風景。
私が元々いた場所、私が暮らしてた里だった。
しかし辺りを散策してみるも、誰もいない。
鳥の鳴き声さえ聞こえない。
アリアの耳には静寂しか届かなかった。
その風景を懐かしんでいると、私の前に一つの影が現れた。
「や、久しぶりだねアリア」
「え……お母さん?」
影は晴れていき次第に鮮明にその姿を確認して驚愕するアリア。
そこにはいたのは、いつの日か失踪したきり遭うことはなかった母の姿だった。
◆◇
私にはかっこいい自慢のお母さんがいた。
私の憧れだった。
だから私は五歳の時お母さんに弓を習うけれど、中々上達しない。
その代わりに精霊を召喚できる力があったようで、お母さんはこの力を褒めてくれた。
だけど、やっぱり私はお母さんみたいなかっこいい弓引きに成りたくて、頑張って、頑張って……
一端の射手になった。
狙った場所には百発百中で当たるし、村のエルフ達の中でも上位の実力だと思う。
お母さんは、そんな私を褒めてくれた。
いつのまにか私が弓を引く理由はお母さんに褒めてもらえることだった。
だけど……
いつの日か、どこかに出掛けていったきり、お母さんが帰ってくることはなかった。
私はお母さんがどこに行ったのか里のエルフたちに聞いたけど、誰も答えてくれない。
独りが、増えた。
そうして六年が経った。
エルフにとっては短い時間。
でも私にとっては、耐え難い程には長い月日だった。
それと、いつのまにか私は弓を引くことを辞めていた。
弓を見ると、お母さんのことを思い出しちゃうから。
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「なんで、お母さんがこんな所に……」
「さあ、でも一つだけ確かなことが言えるとしたら私が死んでここにいるっていうことかな?」
そう言うエルシャーネ。
この世界に来て色々なことを経験してきたがアリアだったが、その母の言葉に酷く混乱した。
「え……?」
アリアは聞きたいことだらけだった。
それに今までどこに行っていたのか。
母は自分を捨ててしまったのか。
何一つわかっていない。
「じゃあ……試練を始めようかアリア」
そんな状態で、何かを説明するでもなく、エルシャーネはそう言う。
しかし……
「……お母さん?」
話が一方的に進んで試練なんていきなり言われても何もわからないアリア。
もっと喋りたいことが、喋るべきことがあるのに、エルシャーネは何一つ語らずただ飄々としていた。
「アリア。弓を、構えな」
その母の言葉が聞こえた瞬間、アリアの手元には、いつのまにか無骨な木の弓が握られていた。
「私をその弓で射抜く。それがこの試練だよ」
「……いま、なんて」
アリアは戸惑う。
当たり前だ。
何故大好きな母を射抜かなければならないというのか。
「進まなくちゃいけないよ。アリア」
「なんで、そんなこと言うの……」
こんなことに、何の意味があると言うのか。
そんな至極真っ当なことを思ったアリアが立ち止まっていると、エルシャーネが近づいてきて、大きく手を広げた。
「アリア、お願い」
「いや……!」
アリアにはなんで母がそんなこと言うのか理解できなかった。
「アリアは私に縛られずに前に進まないといけないよ」
その言葉が紡がれた瞬間、時間が動き出したかのように辺りの景色が動き出し、鳥の鳴き声や川のせせらぎ、草木がたなびく音がする。
この試練は、アリア自身の証明。
それができなければ、アリアは消滅する。
わけもわからず、震える手で、言われるがままに最愛の母に弓を構えてしまった……
「そう、それでいいの」
自分は死んだけれど、娘は生きてた。
だから、アリアには私という亡霊と決別するために、娘を送り出すために。
生きていて欲しいと願って……
「うう……」
別れを、告げる。
そして、自分の生きる道を掴み取る。
それがアリアに課せられた
これは、生きるための、選択。
先に進むための、物語。
例えその先が地獄だとしても、生者はその道を歩んで行かなければならない。
それが、生きるということなのだ。
「アリア……」
アリアは、母のお願いを汲み取った。
これを逃げてはいけないということに。
いつの日か、お母さんみたいに強くてかっこよく有りたいと願ったその時を思い浮かべたアリアは、ここで逃げるなんてそんなかっこ悪い真似を母の前ですることができなかった。
「ねえ、お母さん」
「なに?」
だから……
だから、私の生き方を、愛してくれると嬉しいな。
「お母さん……行って、きます」
その言葉と共に射出された矢が、最愛の母を貫いた。
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「こんなダメな母親で……ごめんね」
貫かれた場所から崩壊していくエルシャーネ。
「そんなことない!私は、私は……お母さんが、大好きなの!」
アリアはぐっと涙を堪えながら首を振って否定する。
「ふふ……私もだよ」
そうしてエルシャーネは笑顔で消えていった。
まるで元々無かったかのように。
そうして、アリアの試練は終わった。
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