第19話 聖剣

どこまでも続くような緑。

空気は澄んでいる。


だが、これは明らかに現実世界ではない。

んーこういう展開にありがちなのは私の精神世界とかだよね。


取り敢えず世界をぶっ壊してから考えるかな。 


私はいつもの様に魔力を使おうとするが…


「魔力が使えない。なんで?」


魔力が何故か使えない。

魔力を圧縮して使おうとしても直ぐ霧散してしまう。


んー、これは困るな。


剣は持ってるし

予備としてあれがあるから良いとして。

あれは引き出せるみたいだし、特に問題はないかな。


「まぁ何とかなるかな。」



「どうしてこんな所に人間がいるのかしら。」


美しく澄んだ声。


「貴女は?」



「私は…そうね、エルメスよ。貴女は?」


「私は…アビスって言います。」



「あら、貴女綺麗ね。私の嫁にならない?」


「遠慮しておきます。それと私は綺麗でも無いので。」


「あら、残念。でも綺麗っていうのは本当よ。」


「あのここからの脱出の方法って分かります?」


「んー、そうね。それは私を倒す事かしらね。」


「あーそう言う感じですか。」


「そう、これが試練かな。貴女が神装を会得するための…ね!」


一瞬で間合いを詰め気付けば目の前にいた。

横薙ぎに振るわれた剣を私は後方に飛び避ける。


速い。間違いなくローゼ王女よりは強い。


「アビス…だったわよね。魔力が使えないでしょ。」


「はい、なぜか。」

 

「それはこの空間の標準仕様よ。でも私は魔力を使える。簡単な話、貴女は圧倒的に不利って訳。」


「魔力で全てが決まる訳じゃ無いと思いますよ。」


そう言うとエルメスさんは驚いた様な顔をして


「良い目ね。ますます貴女の事が好きになっちゃった。」


ピコン!

エルメスのアビスに対する好感度が60になりました。



「嘘…でしょ。」


エルメスさんもこれの対象なんだ。


「あら、絶望…した訳じゃないわよね。」


「まぁ勝てそうなので、絶望はしませんね。」


「へぇ。勝つ気なのね。可愛いわね。本当に。」


「ガハッ。」



気付けば私は吹き飛ばされていた。

しかも周りの場所も変わっている。



壁に激突し血を吐く。

そしてそのまま地上に落ちるが


「油断大敵よ。」


横にいたエルメスさんにまた飛ばされる。


何度も、何度も吹き飛ばされ叩きつけられる。


「んー、貴女もこの程度なのかしら。」


地に伏せる私にそんな言葉を投げかけてくる。

追撃が無い事を確認して私は立ち上がる。


「剣を受けていて思ったんですけど貴女の剣かなり良い物ですね。」


「気づくんだ。いいわ、特別に教えてあげてる。この剣はね聖剣よ。この世界にただ一つの私の半身みたいな物ね。一応これでも邪神をぶった斬ったりしたんだからね。」


邪神?

まぁいいや。


「まぁそろそろ遊びは終わりにしましょう。」


「遊びですか。ここで私は死ぬとどうなるんですか?」


「そうね…現実の肉体の方にかなりのダメージをくらうわ。」


「それは困りますね。」


「まぁでも貴女はかなり強いと思うわ。

魔力が無い状態でここまで持ち堪えたのは貴女が初めてよ。まぁ魔力があっても私の方が強いけど。」


「貴女が美少女だからってちょっと手加減してました。なら少し…本気を出しますね。」


「本気?」


私は普段の型に剣を戻す。

そうして一歩踏み出す。


「え?」


そのまま剣を振るう。


キンッと高い音を奏で私の剣が折れる。



「貴女…私が動きを追えないなんて。」


ギリギリ防御をされた。おかげで私の剣が折れてしまった。まぁ学園支給の安物だったし別にいいでしょ。


「でも私の勝ちね。正直驚いたけど、剣が無ければ何もできないでしょう。」


んー、それはそう。だからアレを取り出そう。










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