第8話 盗賊捜索

「ドモンジョは町はずれの宿恋座目屋に潜伏している」レオナルドはいった。パンクラトフ中心部にある酒場、《ウラーヌス》の店主である。「うちみたいに、酒場だけの店は少ないが、あそこは飯炊き宿だから、入り口が酒場で、二階が泊まり部屋になっている。奴にはジャクリーヌという情婦がいて、その娘は、ホーベン通りの小屋に住んでいるよ」


 情報屋。酒場の主人の裏の顔がそれだ。レオナルドは二人に《イングリッドの涙》を紹介してくれた人物でもある。ルークは彼に酒代の銅貨に銀貨を上乗せして、ロベリアを連れて《ウラーヌス》を出た。


「お兄さま、これからどうしますか?」ワイン瓶を一人で二本開けたロベリアがいった。彼女はまだ十四歳だったが、けろりとしている。ルークは十七で、去年成人したが今ではあまり強いほうではない。昔は戦友の付き合いで浴びるように飲むこともできたが、弱くなった。


「まずはジャクリーヌを当たろう」


 二人は街を歩き、一時間ほどかかってホーベン通りへ出た。《恋座目屋》は此処から三路離れた通りにある。


「ごめんください」彼女の住む小屋へ声をかける。返事はない。するとロベリアが勝手にドアを開けた。


「ちょっ、ロベリア?」


「留守ですわね」ドアの取っ手を持って、ロベリアはいった。鍵のかかっていたドアを魔力による握力強化で強引に引き開けたのだ。当然ドアは壊れた。取っ手が捻れて外れ、妹の手で弄ばれている。蹴破らなかっただけましだ、とルークはため息をつく。中には誰もいなかった。

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