第8話

それからまた数日後であった。


ところ変わって、浅江にあるマックスバリュの店舗にて…


こうじの母は、ここでパートをしていた。


この時、夕方の一番忙しい時間帯だった。


こうじの母親は、気持ちがひどくいらついていた。


そんな時に、近所の奥さまがこうじの母親のもとにやって来た。


近所の奥さまは、こうじの母親に対してへんな目つきで見ながら言うた。


「奥さま、一度鏡に自分の顔を写してよくみたほうがいいわよ…」

「何なのよあんたは!!人の家庭に言いがかりをつけるのであれば考えがあるわよ!!」

「そう言うのであれば、こうじをケームショへぶち込んだほうがいいわよ…手遅れになる前にさっさと始末してよね〜」


思い切りブチ切れたこうじの母親は、やりかけのお仕事を止めたあと奥の部屋へ逃げ込んだ。


その頃であった。


ところ変わって、こうじの父親が勤務している印刷工場の休憩室にて…


こうじの父親と工場長さんは、こうじの今後のことについて話し合いをした。


こうじの父親は、数年の間こうじを遠洋漁業の仕事につかせようと考えていた。


しかし、出港日の前日に大規模な船舶トラブルが発生したので出航できなくなった。


その前に、会社の経営者が雲隠れした…


トロール会社は、経営者のホーマンが原因でトーサンした…


こうじの父親は、やっぱりこうじを高校ガッコーへ行かせると言うた。


高校中退で働きに出るのはコクだ…


高校ガッコーで楽しい時間を過ごしているこうじがみたい…


こうじの父親が言うた言葉に対して、工場長さんはこう言うた。


「そうか…こうじさんを高校へ行かせたいのだね。」

「ああ…希望に満ちあふれたこうじの顔が見たい…希望に満ちあふれた顔で高校に行ってるこうじがみたい…こうじがお友だちと楽しく過ごしている姿がみたい…」


こうじの父親は、悲しげな声で工場長さんに言うた。


工場長さんは、こうじの父親に言うた。


「それだったら、高校を替えたらどうかな?」

「高校を替える…なんで替えなきゃいかんのですか!?」

「知っている人に頼んで通信制高校に入学できるようにしてあげるから…」

「わしは、A学園じゃないとだめなんだよ!!」

「秋月さん、あんた知らなかったの?A学園は、今年度を持って閉鎖をすることが決まったのだよ〜」

「なんで閉鎖するのだよ?」

「先週のフライデー(写真週刊誌)にA学園の理事長がヤクザの男たちと料亭で飲食していた写真が載っていたのだよ…」

「理事長がヤクザと飲食していた…」

「だから閉鎖が決まったのだよ…どうしても高校へ行くと言うのであれば…定時制高校か通信制の高校か…それとも、光市以外の高校に替えた方がいいよと言うてるのだよ…」


こうじの父親は、居直った声で言うた。


「もういい…こうじを…エンキツ(中国と北朝鮮の国境の街)にいる実母の元へ帰します…こうじの母親の夫が…トンチャンリ(北朝鮮の西海岸の町)にいるので…近いうちにトンチャンリへ帰ると言うてました…だから…もう決めました。」

「秋月さんはそれでいいのかね?」

「それでいいです…こうじに北朝鮮へ帰れと言います…もういいです…仕事に戻ります。」


こうじの父親は、しんどい表情で休憩室から出た。


工場長さんは、ものすごくあきれた表情でこうじの父親の背中を見つめた。


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