苺と賢治

星咲 紗和(ほしざき さわ)

プロローグ いちごのひみつ

小さな町の片隅にある古びた洋菓子店「ベリーチャーン7」。この店には秘密がある。ここで作られるショートケーキは、ただのケーキではない。なぜなら、その上に乗せられるいちごは、見る者の心を和ませ、食べる者に小さな奇跡をもたらすからだ。


賢治はその秘密を知らない。彼にとってこの店は、ただのアルバイト先であり、週末の避難場所だった。他のことはからきしダメでも、ショートケーキにいちごをのせる仕事だけは、誰にも負けない自信がある。今日も彼は、コンベアから流れてくるケーキに、一つ一つ丁寧にいちごを乗せていく。その手つきは、まるでいちごに命を吹き込む魔法使いのようだった。


しかし、賢治自身はまだ知らない。彼の丁寧な手仕事が、もうすぐ町に大きな変化をもたらすということを。そして、彼自身もまた、この小さないちごを通じて、自分自身と向き合う旅を始めることになるということを。

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