第42話 ●
ルーナに買っておいたネックレスを渡した。
一度渡しそびれてから、いつ渡すべきか迷っていた。
ルーナに似合いそうだと買ったが、あの館に出入りしている男がいることを思い出して、俺は少し冷静になれたから。
だけど、ルーナのために買ったのだからいつまでも自分で持っていても仕方がない。気のせいだったかと思うくらいだが先日は俺への好意を感じられたし、渡すことにした。
さりげなく渡せば、支給品や差し入れと同じように受け取るだろう。
もしもプレゼントの意味を聞かれたら、狡いがルーナの反応を見て気持ちを伝えるか決めたらいい。
そう考えて行ったのに、いざとなると意識してしまって、全くさりげなく渡せなかった。
気になるルーナの反応は、わかりにくかった。
表情がころころ変わったから。
隠しきれないほど嬉しそうな顔を一瞬したが、すぐに表情を消した。
意図的に消しているようにも見えた。
明らかに喜んでいたのに。
(俺の気持ちを伝えたら、安心してもらえるか?)
そう思って伝えようとしたら、話を逸らされた。
急いで行きたそうだった街に連れてくれば、いきなりクッキー屋へ行くし、俺の気持ちに気づいていて迷惑に思われていると思った。
だが、咄嗟のことで手を振り払うようになってしまうと、ショックを受けたように悲しげな顔をする。
なんだかチグハグな反応が不思議で、もう少し反応を見たくなった。
目についたアロマオイル店で、適当に選んで香りを嗅いでルーナの好みを探る。
何個目かを嗅いだとき、無性に胸がざわついた。
ド忘れしたことを思い出せそうな、だけど思い出せない……そんな感覚に陥った。
ルーナに似合いそうな香りだったので、嗅いでもらえば、ルーナは驚いたような表情になる。
何度も確かめるように香りを嗅いでいたし、好きな香りだと言ったから、プレゼントすることにした。
中サイズと小瓶の二つを書い、大きいほうをルーナに渡せば、心底嬉しそうな顔をする。
(……やっぱりルーナも俺のことを憎からず思っているんじゃねぇか?)
少し気分が良くなり始めた瞬間、ルーナから小瓶のほうはどうするのかと聞かれる。
先日、妹と買い物したとき、妹が『好きな人と同じ香りをつけてると想いが通じるんだって!』と言っていたことを思い出して、柄にもなく自分用に買ったものだ。
だが、男がおまじないを信じていると思われるのは恥ずかしいし、付き合ってもないのにそんなまじないをしようとしていると思われたら、気持ち悪がられそうでもある。
誤魔化していると、突然ガシッと肩を組んでくるやつがいる。
馴れ馴れしい奴だと思ったら、ウーゴだった。
「おいおいおい!おい、リベリオ!お前、何してんだよ!?今日非番じゃないよな?」
「違う」
「っておい!お前、それ……」
ウーゴは俺の手にあるアロマオイルの小瓶を凝視した後、視線をルーナの手元に移してまた俺の手元へと視線を戻す。
ゆっくりと口が開いていき、驚いた顔をするウーゴ。
(クソっ。ウーゴもあのまじないを知ってるのか)
「おいおい、まじないを信じてるのか?リベリオ」
聞かれたかとルーナを見れば、真剣な顔でじっとこちらを見ていた。
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