第12話 咲良とルウナ

ルウナさんと待ち合わせをした会場の最寄駅に到着した。

 初めてのダンスバトル参加への緊張を落ち着かせるため、イヤフォンの音量レベルがいつもより二つ大きい。


 楽曲を決め編集し、2分程のフリを先生に作ってもらい、何度も練習し確認し、自分の中に落とし込んで育てていくコンテストとは真逆。自分が挑戦してきたものとは全く異なる。


 流れる曲は戦うフィールドに立ってから決まる。

1分に満たない自分の時間の中で信じなければいけないのは、日々のレッスンで身に付けたスキルと、表現力の引き出し。瞬発力。一瞬で体現する“音に対するアプローチ。


 今回はボーカロイド曲とアニメソング縛りということで、昨日ルウナさんと別れた時からランダム設定した音楽アプリから流れる曲に対応する練習をしている。


 駅構内の端、アイソレーションで小さく音をとりながら行く人々を見送る。

 リュックを背負うカジュアルな格好の、いかにもダンサーっぽい子が通るとあの子と当たったりするのかな、ジャンルはなんだろう、強いのかな、とじっと見てしまう。

 ロゴがプリントされたお揃いの白いTシャツを着たそれらしい二人組を見送ったあと、視線を逆側に移すと声が届く距離にルウナさんがいた。

「おはよー。」

という口の形をして手を挙げ近づいてくる。

 イヤフォンを外し、おはようございます。と答えた。


「いいねー、結構目立つくらい身体動いてたよ」

「はい。一回は勝ちたいので!」

 せっかく誘ってくれた初体験。初戦で負けるわけにはいかない。

「そんな気合い入れなくていいよ、固まっちゃうよ。りらーっくす、りらーっくす。好きなジャンルしかかかんないし、他の対戦みて声上げるのも楽しいし。せっかくなら観に行くだけより体感して欲しいなって思っただけだから」


 昨日から、自分が抱いていたルウナさんへの印象がどんどん変わる。

 水色のスカートでは、私とも他のキャストとも必要以上の会話をほとんどしない。

 正直、ましろさんなどと比べると、人と関わるのが嫌いなのだろう、という印象だった。


 しかし、その理由は昨日のツムギさんへの思いでわかった。

 全員を“同じ場所で働く仲間”としてではなく、“戦って上を目指していくライバル”としてみているのだ。

 必要以上に馴れ合わないと決めている。

 そんな人が、私をこんな風に新しい学びの場所へ連れて行ってくれる。なんだか、選ばれたような気がして嬉しい。良いところをみせて喜んでもらいたい。


「そういえばルウナさんってなんのジャンルやってたんですか?」

地下のホームから地上へ上がった。

「ちょっとだけヒップホップやってたけど、基本はブレイキン」

「え!?ブレイキン!?」

床をくるくる回ったり、片手で自分の全体重を持ち上げたりするパワーが、この歌って踊る“アイドル”をする身体に詰まっていると思うと、ギャップで更に好きになってしまう。


「そ。小学3年の時にね、ブレイキン習ってた3つ上の兄のレッスンについて行ってたの。で、なぜか、私のほうが絶対上手くできる!とか思っちゃって一緒に習いだした。バトルもお兄ちゃんについて出るようになって、でもなかなか男の子のパワーには追いつけなくて。勝つにはどうしたらいいかなってヒップホップも習い始めた。高校入るくらいまでかな、毎週のようにバトル出てたのは。もうそっから二十歳になった今までは、レッスンは全然いってない。ほんとたまーに、お兄ちゃんたちと練習するくらいかな」


 ルウナさんを見つめながら聞いていた。

 “絶対上手くできる!”

 “勝つにはどうしたら”

 と語る表情からダンスが本当に好きなんだと感じる。


 不意にこちらを見てハッとした顔をした。

「なに、え?大丈夫だよ!!私だって勝ちたいからちゃんと練習してきたよ!!」


 どうやら「こいつ、誘ってきたくせに大丈夫かよ」の顔に見えたらしい。

 せっかくなので「えー?本当に大丈夫なんですかー!?」とそれに乗って楽しむことにした。

 ほんとだよー!と両手で私の腕をぶんぶん振る。


 芯が強くて、人にやさしい。

 こんな人に私もなりたい。


 会場は市民総合会館の中ホール。固定椅子席のない300人が入る会館。

入り口付近には受付を待つ出場者が並んでいて、その最後尾につく。


 2対2のチーム戦。3サークル同時進行でジャッジ1人づつの予選が行われ、ベスト8からは1サークル。3人の挙手性で勝敗が決まる。8まで行くには3回勝たなくてはいけない。

 トーナメントを組むクジを引き、邪魔にならない端っこで他の出場者にならってストレッチをして始まりを待つ。

 脚の筋を伸ばしながら会場を見渡す。


 会場に流れている曲に合わせて身体を動かす人、談笑している人、自分と同じように周りの様子を伺っている人。

 久しぶりのダンスでの戦いの場に、心臓の位置がいつもより高いところにあるような気分で居る。


 DJが音量を下げ、始まりを予感させた。

 MCが挨拶と軽い流れを説明し、予選が始まる。


「咲良、トーナメント見た?うちらCサークルの三戦目だからあっち行くよ。」

ルウナさんが居場所に迷う私を誘導してくれた。


 Cサークルの周囲にはA、Bより明らかにギャラリーが多く集まっており、中心にはパイプ椅子に座るジャッジの1人と、対戦する2組が身体を動かしたり作戦を話し合ったりしている。

 サークルの中心から前列は座りその次は中腰、私たちはその後ろ立って観戦する。


 片側のチームを見て「あ」と声を出してしまったのは、さっきルウナさんとの待ち合わせの駅で見たお揃いの白Tシャツを着た男性2人組だったからだ。


 私の目線と声に気づいたルウナさんが

「あれ、優勝候補」

と彼らに目線を止めたまま言った。

 だからか。この対戦をみたいが為にCサークルには人が多いんだ。


 DJが軽くスクラッチをして曲の準備が出来たことを知らせる。

「それでは予選第一試合!!レディー!GOーーー!!!」

MCがスタートの号令をかけると“ドンッ!”と音が始まった。

イントロクイズの答えを出す早さで会場がワッと沸く。

 今年一番誰もが耳にしたであろう曲だった。

 それこそ、アニメソングに興味のない人たちでもカラオケで歌えるほどの。


 一気に会場を盛り上げるには良い曲だろうが、それだけにムーブへの期待は格段に上がるはず。

 その曲が持つパフォーマンス以上に盛り上げなくては力のなさを晒すだけになる。

 これはコンテストも同じだ。有名曲、誰もが知っている曲ほど難しい。

 優勝候補では無い方の1人がビートに合わせながら中心に向かって動いていく。


「先行は青のテープが貼ってる方からね。1対1の対戦で一曲ずつ。一曲目で自分が行きたいと思ったら行くか、最初から出る順番決めとくか後で相談しよう。あと、相手への身体接触はダメだからね。」

 ルウナさんが少し私の耳に寄せて説明してくれる。


「洋楽がかかる普通のバトルは相手のムーブをみて返せるから後攻が有利って言われてるんだけど、こういう歌モノは先行が有利だと思う。大体アニメのオープニングとかよく聴くのは歌の1番でしょ。どの曲が来たって、音ハメとか歌詞ハメとかやりやすい。」

 ふんふん、と中心を見ながら聞いていると先行の持ち時間が終わる合図が聞こえる。


「5秒前ー、3、2、1、チェンジー!」

 白Tコンビの背の高い方が出る。


 曲は1番が終わり、2番に入ったところ。ここから1番では無かったラップパートが入る。

 ポップと呼ばれるスタイル。

胸や腕、脚の筋肉を細かく弾かせて音を強調する。ダイナミックなヒップホップより、綺麗に魅せるまでになるには実は一番筋力が要る。練習も地道で、実直な技巧派のダンススタイル。

 時に身体をくねらせリズムの流れを表現する。

骨を感じさせないさざなみの様な動きに溜め息が漏れる。

 綺麗。身体全体が謳っているみたい。

 自分のこめかみがどくどくするのを感じる程興奮している。


 シュウター!!いけー!!おおー!!

 歓声がサークルを包む。

ルウナさんもシュウター!フー!!!と片手と大声をあげている。知り合いなのかな。


 シュウタさんが赤色のテープが貼られた位置へ戻り、曲が変わる。ボーカロイド曲。大体どれもテンポが速いので、できれば私は踊りたくない。


「咲良、カーニバルの方、次出てくるのルイって奴だから。声出して緊張ほぐしときな。」

こくんとうなずく。


“カーニバル”というのは多分、白T組のコンビ名だろう。シュウタさんであれだけ声があがると言うことは、ルイさんの時も私が声を出しても目立って恥ずかしい思いはしないだろう。

この興奮を腹の底から出したい衝動が肋骨をくすぐる。


 先行がもうすぐ終わる。

押されて萎縮しているのが見て取れる。

周囲の雰囲気のせいだろうか、曲を知らない?

いや、歌詞に沿った手振りをしていたのでそんなことはない。

 圧倒的な音に対する没入の差だ。

 技術はあるのに出し切れていないようにみえる。 この曲好きじゃないのかな。


「チェーンジ!!」

ルイさんだ。

「ルイさんいけーーーー!!」


 突然嘔吐するように誰よりも早く内臓から声が噴出してしまった。

 は、恥ずかし。


 そんなことを誰も気にすることなく、自分の声に続いてルイー、行けー、とルイさんのフィールドを皆が用意した。

 ルウナさんがニヤニヤしながら「いいね」と肩を軽く叩く。

 やっとこの場に馴染めた気がして嬉しくなった。


 ルイさんはトントンと飛ぶようにステップを踏んだあと、一気に身体をフロアに落とした。

 ブレイキン。

 隣のルウナさんを盗み見ると、真剣な表情で視線を向けている。

 周囲から、おぉ、とあちこちで声が漏れている。


 技名や難易度、完成度はなどは全くわからないが、色んな形でくるくる回った後、片手だけで全身を持ち上げ、音と一緒にビタッと止まった瞬間「うおー!」と大きな歓声が上がった。

 立ち踊りも抜かりない。途中から出てくるビートに小刻みに合わせたかと思ったら、急におどけてみせるルイさんに釘付けだった。

 というか、まず、顔がかっこいい。

優しくて中性的な雰囲気のイケメン。


「終ー了ー!」


 おもしろい。たのしい!!!!

 高揚して堪え切れずその場で小さく飛び跳ねながらルウナさんに気持ちをぶつける

「たのしいです!すっごくたのしいですルウナさん!!」

「ははは、可愛い奴だ」

と両肩に手を置いて私の動きを抑える。


 MCの合図でジャッジはカーニバル側に手を挙げた。

 当然でしょ!もうすっかりカーニバルのファンだ。

 拍手の中、勝ちが決まった2組がその場から去る途中、ルイさんがこちらを見ながら親指を立てた。


 「え」と思う暇もなく、ルウナさんも親指を立てて返しているのを確認した。

 知り合いが出るから観戦しに来る予定だと言っていた。

 同じダンスのジャンル。

 なんだか意味ありげな一瞬の合図。


 こっ、これは。


「なんか咲良、水色のスカートにいる時と随分キャラ違うね」

ルウナさんとルイさんの恋愛ストーリを妄想して楽しんでいたのに、ルウナさんが現実に引き戻した。

 相当にやにやしていたのだろう。ルウナさんが引いている。

「あはは。ダメですね、ちょっと興奮すると変になっちゃって。恥ずかしい……」

「良いじゃん、思いっきり楽しもうよ」

そういって私を誘導するようその場から離れた。



「流れは大体わかったよね?出る順番どうしようか?」

再びレディーゴーのあとにスピーカーから音楽が鳴り、各サークルで二戦目が始まる。


「私、ボカロは多分ダメです。速いのはついていけなそう。」

うんうん。と聞いたあと

「私も苦手なんだよなあ、知ってる曲は多い方?」

「どうですかね?始まるまでDJが流していた曲から、ここまでは大体知ってます。」

いまの対戦で鳴っている曲を指さすような仕草をしてこたえる。


「おお、すごいね。じゃあその場で決めようか」

「え!大丈夫ですか!?私心の準備が」

 ルウナさんがいけるいける!と目を逸らしてサークルの進捗具合を確認する。


 『瞬間の判断』が多すぎる。

えっと、なんだっけ、泣きそう。さっきの楽しかった時間に戻りたい。


「よし、いくよ」

あ、そういえば。

「ルウナさん、私たち何てチーム名ですか?」

第三試合の準備を促すアナウンスが聞こえる。

「ブルースカート」

と私に向かって手のひらをかざす。

「水色じゃないんですか」

その手の平にぱちんと右手を合わせる。


 水色って色んな言い方あってわかんなかった、と笑うルウナさんと、戦いに向かう眼差しを交わした。



 ビギナーズラック!が起こるはずもなく初戦敗退。

 予選の続きを会場の端で遠目に見ながらルウナさんに謝ると、なんで謝んの、とペットボトルの水を口にしたあと続けた。

「期待してないっていったでしょ。私もほんと久しぶりだったし勝てたらラッキーくらいだよ。そんなことより、やってみてどうだった?」


 先行、速いBPMで始まったボカロ曲。

 無理だ、という私の顔を見てルウナさんが飛び出てくれた。

 ビートをとって細かくみせるトップロックから柔らかくしなりながらも、ダイナミックなパワームーブ。

「ルウナさん、すっごくかっこよかったです。シルエットが綺麗で、無視しそうな音も取ってて」

「違うよ、咲良は、どうだったの?」

私は、

「……散々でした」


 2曲目はよく知ったアニメソングだった。

中学生の女の子たちが変身して悪の組織と戦う、深い友情と淡い恋愛要素もある人気の作品。


 速いテンポは無理だと言いながら現場でやってみると、相手が目の前にいる圧力と制限時間に焦って、上手く自分の身体が動かなかった。

 秒という単位が意外と長いと気付いて、アニメの世界観を表現する意識をした頃には、秒は早く過ぎていった。


「でも。楽しかったです。多分」

 自分にかけたプレッシャーを好きな音楽が少しずつ解いてくれるような感覚。

最後の何カウントかはあのアニメの世界に行けた気がした。

「何よ多分って」

嬉しそうにルウナさんが笑う。


「初めてでも大したもんだよ、あれだけ出来たら。普通は踊るのに必死で音が入ってこない。踊り終わった時充実した顔してたよ。水色のスカートでは見たことない」


 急に話のベースが変わった。言いたいこと探るようにルウナさんの横顔を見つめる。

「咲良、ヒップホップの曲、好き?」

どきりとした。

 踊るのは好きだ、というのは間違いない。

 勿論、そのジャンルの中で好きな曲もあるが、きょう会場で流れているようなものに対する熱はない。


「咲良のステージ見てて思ったの。すごく上手いのにダンスが、なんだろうな、“よそもの”みたいな雰囲気をずっと出して気がしてて。まああの場所はアイドル色が強いからそれはそうなんだけど。MCは段々慣れてきてるし、お客さんともキャストとも上手くやってる。そういうとこでの飲み込みも早いのに、なんでダンスだけ咲良のものにならないんだろうって」


自分がコンテストで入賞できない理由の気がする。

水色のスカートでの半年程と、今日この場でルウナさんが感じた答え。

 ごくりと無意識に喉がなる。


「でね、気付いたのは咲良のポーチに付いてたキーホルダーを見た時。深夜アニメの脇役の物だよね。そんなの、流行りのアニメ観てるだけの高校生は選ばない。こいつ、アニメオタクだなって」

真剣に聞く私を和らげてくれるような言葉をチョイスして笑いかけてくれる。


「私もそうだった。ヒップホップを習い始めた時、先生に『洋楽以外で踊るな』って言われたの。ヒップホップはカルチャーだー、って。でも自分はそうじゃないって思った。アニソンやボカロが大好きだったし、こう、核の部分から身体が勝手に動いちゃう感覚があった。海外の文化に倣っていくんじゃなくて、ダンスって音を聞いたら勝手に踊っちゃうくらいの感情が溢れたものだと思ってたから。この先生からは、好きな音楽聴いて心そのままを身体で表現できるスキルだけ学ぼうって切り替えた」


 表情は柔らかいが、自分の考えを他人に話すということはかなりの労力が必要だと知っている。

 熱量をあわせてルウナさんの声だけに耳をつかう。

「自分がそのジャンルで楽しめた時は周りも本当に楽しそうに見えて。私もそれを感じてまた更に楽しいって思えて。そんな感情のやり取りをしたいって思ってたら、その先が私にとって”アイドル“を目指すってことだったの」


 そんなふうに考えたこと、なかった。

 ただ与えられた音とフリを一滴もこぼさず飲み込む。吸収して血肉にし、曲に自分が変身することが一番だと解釈しながらやってきた。

 ダンスを習いたいと言い始めてから与えられたものに疑いを抱いたことなんてない。


「なにが言いたいかってーとねー。えっと、きょう咲良はすっごく楽しそうだった。みてる時も、踊ってる時も。周りがみんな同じ人種だってわかった時から、流れる音楽でずっと身体が動いてる。踊ってるのにリラックスしてる。とっても自然に」


 ただ好きなものに正直なひとたちがいる会場を改めて見渡した。

 興奮して挙げる手、感嘆、笑う、悔しがる。

 正直で感情的で愛おしい。

 それを享受できる者を”アイドル“というのならば、私もなってみたい、かも、しれない。


「ルウナさん。」

ん?とこちらに顔を振った。前を向いたまま続ける。

「ステージでアニソンとかボカロ曲流して、ストリートダンスするのって、変ですかね」


 待っていた答えが出たか。という笑みが向けられていることを感じる。

「水色のスカートってそういうところだよ」

まなさんと最初に話したことが思い出された。


『今できることとか、少しでもやりたいと思っていることを悩みながらでもここで見つけたり、見つけた事を育ててくれればいいの』


「ですね」

落ちていた視線が自然と上にあがった。


「さっ!観に行こう。多分上がってるよ、カーニバル」

と私の手首を引っ張り上げた。



 決勝戦。予選では感じられなかった緊張感が会場全体をビリビリと震わせている。

 曲が持つポップな雰囲気とは真逆の、両者の絶対勝つ、という闘争心が全身から溢れている。


 遊びなんかじゃない。ただただ好きなジャンルの音で楽しんでいるだけではない。

 ここは戦場だった、と気付かされた。


 私なんかには勝敗がつけられない戦いだったが、戦場に向けられた全体の熱気と大きな歓声の中、3人のジャッジが選んだのはカーニバルだった。


 ルイさんが数人の知り合いと喜びを分かち合ったあと、こちらに来てルウナさんと軽く抱き合った。

 目の前で繰り出される光景にきゃっと頬が赤くなったが、それを見たルウナさんがにやっとして「残念、お兄ちゃんだよ」と、なんともガッカリする言葉を吐いた。


 すっかり大好きになってしまった2人に、頭の中に巡らせる恋愛漫画の主人公を任せたのに、物語りは立ち消えになってしまった。

 その代わり、切磋琢磨しあってきたであろう兄妹の物語を空想しながら帰路についた。


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