比翼の連理-Lost memories-
寝取られ撲滅協会理事長さくら臀部
第1話
仄暗い場所。
光という光は部屋の隅に灯っているランプくらいだろう。
そんな場所でバシバシと乾いた音が響く。とかわいい言い方しているのはいいが、実際は皮膚を鞭で打つ音である。
ランプに二つの顔が映る。一つは俺の顔。いつみてもイケメンである。ナイスガイ!
もう一つの顔は邪悪な顔でゆがんだ髭面の男。いやおっさんといったほうがいいだろう。
そんな事はさておき今俺は先ほど言った通り鞭で打たれている。理由?しらん
ご丁寧に手は金属状の鎖で縛られている。
「どうだ?そろそろ根を上げるころじゃないか?」
と、急におっさんが気持ち悪い顔を俺に向けながら言い放つ。
「そんな事より飯くれ飯」
鞭打ちは確かに体に無視できない傷をつける。しかしここに監禁されてから3日がたつため、鞭打ちより空腹の方がつらいまであった。
俺が軽口を放ったせいか、おっさんの顔が歪む。
「もう三日鞭に打たれてそんな事言ったやつはお前が初めてだ」
いらいらしてるのか語尾が少し強くなっている。
「だったら飯くれよ。あと水もたのむ」
図々しくも水まで頼んでみる。
「.....頭がおかしいのか.....?」
おっさんが心底あきれたのか困惑している。
実際問題水がないと死ぬ。このおっさんが何故俺のことを拷問しているのかは知らないが、拷問が趣味なら簡単に殺すことはないだろう。最終的には殺すとしても愉しんでからにするはずだ。
俺の思いが届いたのかおっさんが言う。
「いいだろう。水だけやろう。しかし水だけだ」
「飯はどうした飯は」
飯への希望が潰える。しかし水は確保できそうだ。
「すこし待っていろ。水を持ってくる」
そういいおっさんは部屋から出て行った。
おっさんが戻ってくるまでこうなった経緯を思い返してみる。
しかしいくら思い返しても一年以上前の記憶が思い出せない。目覚めたら研究所にいた。
なんの研究をしていたのか今となっては知る由もないが.....
研究所を脱出できたとおもったんだが、気が付けばここだった。
一年も研究という名の拷問をされたが、何とか脱出できたと思ったが、次は拷問が趣味の奴に捕まるとは悪運が強いぜまったく。笑いごとにもなりゃしない。
どうも研究所に捕まる以前の記憶が綺麗になくなっているらしい。
自分がどこに住んでいたのか、家族構成、年齢すべて記憶が消えている。全生活史健忘という奴だろう。要するに記憶喪失のことだ。
ある程度思い返したところでおっさんの気配がした。
「水だ。飲め」
500mlのペットボトルを渡される。
「足じゃ飲めねぇよ。枷外してくれ」
飲もうとしても枷が邪魔で飲めない。おっさんに手についた枷を外してくれとたのむ。
「しらん。飲めんなら死ね」
さっきから生意気な口を叩いていたからか機嫌がすこぶる悪いおっさんに言い放たれる。
「頑固おやじめ.....。んしょっと」
足を起用に使い蓋を開ける。だいぶ屈辱的な恰好だが飲まないよりかはマシだろう。
足で蓋の空いたペットボトルをつかみ口に持ってくる。
記憶がなくなる以前の俺はヨガでもやっていたのか思いのほか体が柔らかかった。
そのため苦なく飲むことができた。
俺が水を飲んだのを確認したおっさんがナイフを持って近づいてくる。
「おいおい物騒だな。殺す気か?」
「殺しはしない。死にたくなるほど痛いかもしれんがな」
それも嫌だが......
すでに全裸の俺を一瞥し男が言う。
「しかし、そんな傷だらけの体は初めて見たぞ。拷問は初めてじゃないことは態度からして理解しているが、その体の傷は拷問だけでは無いな?」
どこの傷を見て判断したのか分からないがおっさんが興味深いことを言う。研究所で受けた傷とも思ったが、拷問でできる傷ではないような言いぶりからして違うのだろう。
実際研究所でも裸体を見せたとき同じような反応をされた気がする。
「あいにく俺は記憶がないんでね。その質問に答えられない」
「この傷は…”異能”によるものか...?」
おっさんが何かぶつぶつと独り言をつぶやく
「まあなんだっていい」
なんとも物騒なことを言い放つものである。自力で脱出できるか....?
少し考えてみるが一向に解決法は思い浮かばない。
枷が金属なのが辛いところである。
脱出ではなく何とかして命をつなげる必要があるな......
そうこう考えているとおっさんのナイフが右手の爪に差し込まれる。
「おいおい.....」
多分爪を剝ぐ気だろう。ナイフに力がこもる。
「痛いか?」
当たり前のことを聞いてくる。
「痛くないと思ってるのか?」
表情を変えずに言ってみる。
するとイライラしたのか一気にナイフに力を籠められる。
「減らず口を。これから爪を全部剥ぐ」
まるで死の宣告だな。抵抗するだけ無駄だろう。
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何時間経っただろうか。何時間も経っていないかもしれない。
「くっそ、あのおっさん爪全部剥がしていきやがった」
いまだに指から滴る血が足元を赤色に染めて行く。
なんとか生き残らないとな........
あれから少し経った頃
ふと足元にできた血だまりに目を向けると血の水分を求めてかネズミらしきものが居た。
暫く飯を食べてないせいか、腹が鳴る。
........ダメだ。仮に食べれるとしても病原菌を持っている可能性がある。
しかし腹の音は鳴りやまない。
気配がする。おっさんが来たのだろう。
しかしおっさんの手にはいつもはない”物”があった。
「やっと飯をくれる気になったか?」
「これはお前に食わすものではない」
....それが意味することはおっさんが食事をここでするという事だろう。
今まではいちいち食事をするためにこの部屋を出ていたためその時間すら拷問に充てようとしているのだろう。実に悪趣味だ。親の顔が見たいものである。
「どこまでも調子に乗ってやがる」
つい本音が漏れる。
「......どういうことだ?俺は今お前の生殺与奪を握っている」
心底不思議な顔をしておっさんが答える。
「お前がどんな拷問をしようが、俺は”死なない”しお前を愉しませることはない」
睨みながら言う。
実際おれは今までの拷問でも声も上げず、痛がりもしなかった。おっさんからすれば面白くないだろう。
「それを決めるのはお前ではない。俺だ」
「そうかよ」
今までは友好的にしたらここから出してくれる希望もあったが無駄だろう。
それならば徹底的に反抗するだけだ。
なぜかはわからないが俺はこのおっさんが俺を殺すことはないだろうと確信していた。
それはおっさんが人を殺したことがないチキンだからとかではない。ただの俺の勘だ。
「お前がいくら耐えようと結末は変わらない」
最終的には処分するつもりか…。思惑は外れたらしい。
なんとも非常である。
「お前にそれができるならな」
おれは精いっぱいの捨て台詞を吐いた。
おっさんが何やら拷問器具らしいものを持ち俺の方にやってくる。
今は耐えるしか無さそうだな…。
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何時間経っただろう。あれからおっさんも疲れたのか来た時に手に持っていた食べ物を食べている。
......むかつくな。
ふと俺は良いことを思いついた。
「”ああああああああああああああああああああ”!!!!!!!!!!!!!!」
「っ!?」
今の出せる限界の大声で叫ぶ。
思惑がうまくいったようで、食事をしていた男はいきなり叫んだことで吃驚したのか食べ物を床に落とす。
おっさんの食いかけなのは気に要らないがこの際食えれば問題ない。
おっさんが拾う前に足で器用につかみ口に入れる。
結構うめぇじゃねぇか。
「おいおいこんなうまいもん食ってたのかよ」
「.......。」
おっさんは呆気にとられたのか怒りに我を忘れているのか無言だった。
「何とか言えよ」
「ここまで愚かだったか.....」
ナイスプレーと言ってほしいぜ。
「いいだろう。ここまで反抗してきた奴は今までいなかった」
何がいいのだろうか。
「お前はすぐには殺さずに最大の苦痛を与えて殺すことにする。」
そういい部屋から出ていく。
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あれから一日経っただろうか。おっさんはあの一件以降ここにきていない。
なんかあったのか…?もうすぐ出られる日が近いかもな。と希望的観測をしてみる。
ふと脳裏を嫌な予感が過るが今は考えないことにしよう.....。
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それから二日経ったがおっさんは部屋に来なかった。
「まさか….放置することが最大の苦痛って言わないよな」
実際この憶測は正しいだろう。部屋の明かりは昨日から消えたままだ。
食料も水分もない状態では生き地獄である。それに加え光すらも奪われたのだから参ったものである。
どうするか....。じっとしているだけでは解決につながらない。
脳裏を数日前の出来事が過る。
「ねずみ.....か。まあ死ぬよりましだわな」
数日前に現れたネズミのことを思い出していた。
仮にあのネズミがここに何匹かいるのなら何日かは命をつなげることができるだろう。
しかし...どうやって捕まえるか。
前は血だまりに惹かれやってきたが...。
今は血だまりもなければ光すらもない。
ネズミがいたとしても捕まえるの非常に難しい状況である。
参ったな....。どうにも手詰まり感がある。
俺の異能が何か役に立つものだったらよかったのだが。
俺の異能が何かすらわからない以上下手に期待するのもよくないだろう。
なぜここまで生きているのかも正直わからないが、俺は体が強いんだろう。
そんなことを考えていると足に違和感を感じた。足の感覚は拷問によってほぼなかったが、ギリギリ違和感を感じる事が出来た。
もしかして....。
一縷の可能性にかけ俺は違和感のある足の逆足で違和感のある部分を叩いた。
その瞬間
「きゅっ!?」という音とともに衝撃を感じた。
「神は俺を愛しているらしいな」
と自画自賛しながら収穫を足で探る。
結構大きいサイズだろうか。
ドブネズミらしき肉塊を足で口に持ってくる。
そのまま肉塊に齧り付く。
「っぐぅ!?」
不快な感触と匂いが鼻を駆け巡る。体が拒絶反応を起こし嘔吐く。
近くの下水から来たのだろう。
しかし、齧り付いた部分から流れる血液をこぼすまいと吸い付く。
結構大きいサイズだからかかなりの水分を確保するとともに食料も手にすることができた。
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どれだけ経ったのだろうか。光もないせいで時間経過もわからない。
永遠に感じる時間をここで過ごした気がする。
食べたネズミも一匹や二匹ではなくなった。
ネズミは光がないためか俺のした糞尿に群がってきたため思ったより捕獲することができた。
ネズミの死骸も俺の周りに数えきれないくらいあるだろう。
もちろんネズミだけではない。虫類、ゴキブリや蜘蛛なども食べた。
そんな成果もあってか俺は生きている。
必ず生きてここから出ると息巻くが、手にはめられている枷がどうしても壊すことができない。
一年だろうか半年だろうかどれほど時間がたったのだろう。
なぜ自分がこんな目に合うのか、憎むべき相手もいないため一人逡巡する。
「こんなナイスガイをほっとくなんて罪なやつだな....」
元気なくつぶやく。
つぶやいたところで助けなど来ないというのに…..。
やることもないので数時間前ほど捕まえたネズミに足を延ばす。
もう味にも匂いにも慣れた。慣れたくはなかったが。
「こいつは小ぶりだな。まあ食えりゃなんでもいい」
光はないが光があったころの憧憬からある程度の空間把握はできる。
ネズミに齧り付こうとした時だった。
部屋に光が差す。
「随分と遅ぇじゃねぇか?」
強がる。久々の光に瞼が開かない。
「大.........か!?」
おっさんの声ではない。女の声だった。目が開かないから姿が見えない。
声も聴きとりづらい。一人ではわからなかったが随分体は限界だったようだ。
「今.....け..........す」
手に嵌められた枷が外される。
いまやっと気が付いた。目の前にいる存在は俺のことを助けようとしているのだと。
「神は俺を愛して止まないようだ」
女は戸惑っただろう。
これが美少女だったら裸で糞尿をまき散らしている姿を見られていることになるため、美少女でないことを願ってやまない。
助けが来たことに対して安堵したのか俺の意識が遠くなっていく。
目を開けたら夢でしたオチでしたはやめてほしいものだ......。
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