LV85のプレイヤーが現れた
忍者のレベルがようやく82になった。
その間に数度情報クラン、攻略クランのサハギンNM戦にヘルプとして参加している。 最近ではプレイヤーのレベルが上がったことによりNMが池に入っていってもLV83のナイトであれば水鉄砲に耐えられる様になっていた。忍者のお役御免だ。
俺が82になった時点でプレイヤーの中でLV85に到達した人たちが現れた。
実はレベル85の一番乗りは2大クランではなく、それ以外のプレイヤー達だった。彼らはPWLでは最初から固定パーティを組んで経験値稼ぎに集中して活動をしている。リアルでの知り合い同士がパーティを作り、全員が揃って時間を合わせてインしては活動をしているという話だ。
以前の俺は彼らに近かったかもしれないがPWLでのんびりする面白さを覚えた今はもう無理だ。インしたい時にして、ログアウトしたい時におちる。ソロの気楽さを覚えてしまったからね。マイペース万歳だよ。
その彼らに続いて攻略クラン、情報クランのメンバーらもレベル85に到達した。
この日俺は日課の畑の見回りを終えて、4体の従魔を撫でながらこれからどうしようかな、なんて考えていると端末が鳴った。
「主、お電話なのです」
頭の上に乗っているリンネが言った。俺に通話が来たという報告をする仕事は飽きないらしく毎回言ってくれる。リンネが膝の上に降りてきたので身体を撫でながら電話に出た。相手はクラリアだ。
「こんにちは。試練関連で情報が入ったのよ。それとちょっと相談もあるので今日そっちにお邪魔したんだけど」
試練関連の情報?相談? 特に予定を決めていない俺がOKすると、これからいつもの4人で家に来るという。
「主のお友達がやってくるのです?」
「そうだよ。リンネとタロウ、そしてランとリーファのお友達でもあるな」
やり取りを聞いていたタロウが精霊の木の根元で横になりながら尻尾をブンブンと振る。枝に乗っているランとリーファも羽根をパタパタさせながらサムズアップポーズをしていた。
暫くしていつもの4人が門から中に入ってきた。マリアは挨拶もそこそこに早速タロウをわしゃわしゃと撫でまわしている。
相談と言われていたので今日は洋間に案内した。
「4人全員が85だね。おめでとう」
「ありがとう。しばらくの間、結構根を詰めてレベル上げをしていたからな」
スタンリーが言った。トミーもそうそうと言っている。トップクランとして先頭を走っているという自負があるんだろう。
「タクは82になってるのね」
庭から洋間に入ってきたマリアが言った。もっと撫でていたそうな顔をしているぞ。
「俺なりに経験値稼ぎをしていたからね。タロウとリンネと一緒に結構外に出ていたんだよ」
「主がバンバン敵をやっつけていたのです」
頭の上からリンネが言うが頑張っていたのはお前達だぞ。
「その調子で出来れば一気に85まで上げて欲しいんだけどな」
トミーが言ったのでどういう事?と聞き返すと、それが今日のお話なのよというクラリア。
85になったのは両クランと、当初から固定メンバーでパーティを組んでレベル上げをしていたプレイヤー達だが彼らの方が先に85になり、すぐに試練の塔に出向いた。
閉じられていた柵の向こうにNPCが現れて85になったのでこの中にどうぞと塔の中に案内されると塔の中で神官のマリアンヌが待っていたらしい。
「これは私達が85になった時にも同じだったの。だから85になると試練の塔の中、中と言っても1階だけだけど、そこに入る事が出来る様になったの。同じ様に神官のマリアンヌがいたわ」
なるほど。
「で、ここから先で彼らと我々との違いが出たんだ」
違い?
スタンリーの言葉に怪訝な表情をした俺を見ている4人。そうなのと言ってからクラリアが言った。
「一番最初に85になった彼らはマリアンヌから試練を受ける資格ができましたねと言われて、第一の試練ということで試練のお題を与えられたの」
彼女の話を黙って聞いている俺。第一の試練か。第二、ひょっとしたら第三もあるのかな。
「マリアンヌが彼らに与えた第一の試練は、全員がレベル85から装備できる武器また防具を最低1つ装備した上でこのエリアで魔獣または獣人を5,000体倒すこと。パーティメンバーは最大5名まで」
「5,000体?そんなに?」
滅茶苦茶多いな。このエリアという場所の指定と倒すべき敵の数。開拓者の街にいくとレベルの上限が70になるからダメなのか。
このエリアで狩り放題ができたと仮定しても1時間に狩れるモンスはどうだろう、20体?仮に20体として10時間インし続けて200体 それを25日か。きついな。
実際にはフィールドにはライバルもいるし時間辺り20体いかないかもしれない。となると1か月から1か月半はかかりそうだ。いや、毎日10時間インの連続も厳しいよな。となると2か月くらいじゃすまないな。もっとかかるぞ。
情報クランは彼らから情報を買うために直接会っているのでこの情報に間違いはないと思っていたらしい。
「ん?思っていた?どういう事?」
思わず聞き返したよ。
「彼らから話を聞いてから程なくしてスタンリーらも85になった。私達も85になった。試練の塔に入ってマリアンヌと会った。ここまでは同じだったんだけど与えられた第一の試練の内容が最初の彼らと違うのよ」
クラリアによるとスタンリーらのパーティとクラリアのパーティは同じお題を受けている。どちらのクランも複数パーティが85になっているが全員が同じお題だったらしい。
「私達がマリアンヌから受けたお題は全員がレベル85から装備できる武器また防具を1つ身につけた上でこのエリアで魔獣または獣人を1,200体倒すこと。なの」
ん?5,000が1,200に減った?
「どういう事?減ってるじゃないの」
訳が分からん。
「それが普通の反応だよな。俺達も聞き間違いじゃないかとマリアンヌに確認したんだが間違いない。ウィンドウのクエスト欄にもはっきりと1,200体と書かれている」
どちらもLV85。与えられたお題も同じ。なのに倒すべき魔獣の数が片方が5,000体に対してもう片方は1,200体とおおよそ4分の1だ。
「それでここからは我々の推測になるんだが」
トミーが俺を見ながらその推測を俺に話してきた。
倒すべき数に差があるのはレベル上げという行為以外での貢献度が加味されているのではないかと言うのがここにいる4人の推測なんだという。
「貢献度は具体的にはPWLというゲームに対する貢献度じゃないかと見ているんだ」
貢献度?何か頭がこんがらがってきたよ。クラリアが続けて言った。
「NPCとの関係が貢献度に含まれてると思うの。つまりNPCとの親密度、NPCからの好感度。先に85になった彼らに聞いたら殆どNPCとは接触せず、インしている時は只管に街の外でレベル上げだけをしてきているらしいのよ。クエストも殆ど受けていないって言ってた」
つまりこの世界での貢献度が低いからその分倒す魔獣が多くなる?
俺が思ったことを言うと全員が頷いた。
「となると今のプレイヤーで一番ゲームやNPCに対して貢献度が高いのはタクじゃないかって私たちは見てるの」
いやいや、ちょっと待ってよ。クラリアがそう言うが自分では活動範囲が広いとは思っていない。
「NPCやゲームへの貢献度と言ったって俺が顔を出してる場所って限られてるよ。レストランとテイマーギルド、あとは忍者関連の店くらいだよ?」
「何言ってるのよ。隠れ里は見つけるし原生林の中の果樹園にだって行ってるじゃない。あとは新しい街も見つけてるしテイマーギルドだって最初に見つけたのはタクでしょう?NPCの好感度もタクはかなり高いはずよ。でないと新しい場所の情報を教えて貰ったり、黒翡翠の欠片なんて貰えない」
ああ、それがあったか。でもそれって関係あるのかな?
「ワールドアナウンスの回数も関係しているかもしれませんね」
そう言ったのはマリアだ。俺はまだ完全に理解しきれていないよ。
「そう。ワールドアナウンスも関係あるかもしれない。要はね、タクなら試練で倒す数がもっと減るんじゃないかって見てるの」
「タクはワールドアナウンスを何回貰ってる?」
そう聞いてきたトミーを見ながら指折り数えてみる。エリアボス戦が2回、イベントNMで1回、フィールドNMで1回。自宅を買って1回。
「5回か。おそらく一番多いな。俺達は多い人で4回。他のプレイヤーは最初の第1エリア開放の時のボス戦に参加してくれたプレイヤーらが1回。他は皆ゼロだ」
5回と4回、そう変わらない気もするが、滅多にないワールドアナウンスは1回のポイントが大きいと見ているらしい。
「ワールドアナウンスも関係するって見てるの?」
「ゲームに対する貢献度としてみればそれもカウントすべきだろう」
そう言うスタンリー。この推論は俺が85になった時に倒すべき魔獣の数が1,200体より少ないと正しかったことになるんだよと言う。
この4人の間では俺はNPCからの好感度、ゲームへの貢献度が相当高いと見当をつけているらしい。NPCから次の街の情報を聞いたりテイマーギルドを見つけたのも受付のクエスト依頼を受けたりしているし、好感度が蓄積されているはずだという。
「逆に言うと今までそう言う事をあまりしてこなかった、おろそかにしてきたプレイヤーはここにきてそれがハンデになっている、ツケを払っている気がしているの」
「以前タクが言ってただろう?85に上げるのは最低条件だがそれだけじゃダメだって。それがこの差になってるかもしれないと見ているんだよ」
クラリアとトミーがそう言った。確かにいろんなNPCから85に上げるのは必要だがそれだけじゃないと言われていたな。言われてみればそうだ。
「わかった。要は俺が85になった時に、今の仮説、推論が証明できるかもしれないってことだ。でもまだ82だよ。もう少し時間が掛かるけど」
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