第3話 検索
久しぶりに楓を思い出したことで、すっかり眠るタイミングを逃して、目が冴えてしまった。明日も仕事で朝早いし、そろそろ寝たほうが良さそうだとわかってはいたけれど。
ソファーに寝転んだまま、スマホに【ミステイカーズ 楓】と打ち込んで検索をかけてみた。
インターネットがこんなに身近にあるにも関わらず、あんなに昔好きだった楓について、これまで一度も調べたことがなかった。なぜだろうか。毎日が忙しくて、思い出す余裕がなかったのかもしれない。
ウィキペディアから始まり、動画や質問サイトなどの検索結果がズラリと並ぶ。
今から二十年前の情報だからか、検索の仕方に問題があるのかわからないけれど、そんなに沢山の情報は上がってこなかった。
YouTubeに見覚えのある歌が出ていたので、とりあえず聴いてみた。
聴き覚えのある懐かしいメロディーと共に楓の特徴的なハスキーボイスが流れ出す。私の意識は、あの頃に一瞬で引き戻された。
そうだ。こんな声だったよね。
この動画は当時のプロモーションビデオだろうか。当時の楓はまだ十八、九歳だったと思う。まだ幼さの残る少年そのもののような出で立ちだった。
決して上手い訳ではないのに不思議な温かな魅力のある歌声。私は彼の笑顔と歌声が大好きだったんだ。どうして二十年間も忘れていられたのだろう。
私は寝る時間も忘れて、動画を次から次へと食い入るように夢中で聴き進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます