ヴェイフ
ヤトミ
第1話 聖者
神と悪魔の戦争が続いた日。天使と悪魔の戦争が続いた日。
あるいは終わりのない物語が紡がれ続けた。その者は何をするでもなく佇んでいた。荒廃した街を眺め 未だ続く醜い争いを嗤う。その者は人などでは無く かつては神であった。しかし 神もまた悪魔に堕ちたのだ。神が堕ち 悪魔が昇る。その世界を均す者。────ヴェイフ。
「────────」
目を覚ます。どうやら少しうたた寝していたらしい。今頃皆は何をしているのだろうか。外は神と悪魔の戦争の最中。それを気にも留めず 神殿でただ寛ぐ自分も大概だが。
「暇だな..まだこんな時間か。」
いつもの様に 魔力を練っては霧散させる。最早習慣化された行動だ。
「そうだな...もう少s..」
突然アイデアが湧いてきた。今まで思い付いた事も無い天才 いや神掛かった発想。暇潰しに面白いものを見つけた。
───この魔力で 神も悪魔も人も全て 均す。
「くっ..くく。」
思わず笑みが零れた。神が勝てば悪魔が抵抗する。逆も同じだ。ならば均してしまえば良い。均す存在になれば良い。そうすれば全ての力は均等だ。
「まずは..其処らの人間を崇拝でもさせるか。」
だがいきなり崇拝しろは変だ。そんな事で崇拝する訳が無い。だが試してみる価値はある。町に赴き 若い怯えた男に話し掛ける。
ヴェイフ「そこの男。俺を崇拝してくれないか?」
村人「ひっ...あっ..悪魔だ!逃げろ!」
逃げられてしまったが 何となく予想出来ていた。何か良い方法は無いか。考える。武力は無し。脅しも無し。かと言って自らを神と言うのも。となれば 残った物は一つ。
──────人助けだ。彼らの怯えや悲しみに支配された心に一筋の光を与えれば神と崇める者も出てくる筈だ。ヴェイフはそう思った。早速困っている人間を探すが 一人も居ない。
ヴェイフ「...待機か。」
その辺の木に登り 能力で擬態する。すると 近くで子供がアイスクリームを落としてしまったようだ。今しか無いだろう。
ヴェイフ「君。アイスを落としたのか?」
子供「うん....もう食べれない..」
ガッカリした表情を浮かべる子供。
ヴェイフ「新しい物を買ってやろう。そのアイスは何処で買えるのだ?」
子供「向こうの店だよ!」
ヴェイフ「良し。待ってろ。」
子供にお金を渡してアイスクリームを買わせる。
子供「ありがとう!」
ヴェイフ「もう一つ買ってやろう。」
もう一つアイスクリームを渡すと 子供は目を輝かせて喜んだ。
ヴェイフ「礼はいらない。困ったら俺を頼れ。」
子供「うん!」
ヴェイフは子供に手を振ってその場を立ち去る。
ヴェイフ「ふむ...悪くない。」
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