第41話 完璧王子様のご登場
私が美味しそうなお料理が並ぶテーブルを前に、どれからいただこうかなってウキウキしていると、優雅に奏でられていた音楽がふいに止んで、華やかなファンファーレのようなものが鳴り響いた。
みなが一斉に玉座のほうへ目を向ける。
私もみんなと同じく、そちらへと振り返った。
そこには、薄い水色に金糸で刺繍が施された衣装に身を包んだ金髪碧眼の王太子、アレクシス様が姿を現されたところだった。
わあ~!麗しい!!
まさしく光り輝いているっ!!!
いつもは長めに下ろしている前髪も、今日は上げて後ろに流しているせいで、露わになった形のよい額がよく見えて、彼の整った美しさが一層際立っている。
玉座へ向かうその姿は優雅で、凛としていて堂々としている。
威厳があって、圧倒的な存在感。
ああ、生まれながらにして王子様なんだって思う。
甘美な微笑みを浮かべる彼は、天使様という言葉すら似合っている。童話に出てくる白馬の王子様そのものだ。
いつもの素の“黒王子様”と同一人物とは思えない。
いま、玉座の前に立って優雅に微笑んでいる彼は――
“完璧な白王子様”!!
あちらこちらから感嘆の声が漏れ聞こえた。女性たちだけでなく男性もみなアレク様の姿に釘付けになっている。
わかります~!ほんと推しの騎士様にそっくりな彼は美しいですよねっ!
アレク様ではないのだけど、推しが褒められているようで、なぜか自分のことのように嬉しい。
彼が綺麗な微笑みを浮かべ、胸に手を当て優雅に挨拶をすると、広間の人々は一斉にお辞儀をした。
私もみなに習い、セバスに教えて貰った貴族女性のお辞儀をする。
「今宵は国王に代わり、第一王子であり王太子である
彼の簡単な挨拶のあと、再び彼の合図で音楽が奏で始められ、フロアの真ん中ではダンスをするもの、周りでワインを片手に談笑を楽しむもの、アレク様に挨拶したり、各々がこの空間を楽しんでいた。
久しぶりの舞踏会って言ってたものね。みんな楽しそう。アレク様もルーセルも次々に沢山の人に囲まれて忙しそうだな。
そんな二人には申し訳ないけれど、私はもちろんめいっぱい料理を楽しむ事にした。
小さな貝殻のお皿に入ったグラタンは、星型のチーズがのっていて可愛いだけじゃなくて、料理の並ぶテーブルに置かれていても、魔法で温められているので十分温かくて美味しかった。
私の暮らす日本では見たことのない、色とりどりの豆やきのこが置かれているのを見ると、ここって絵本の世界のようなもう一つの世界なんだって、あらためて実感する。みずみずしいフルーツや可愛いケーキも童話に出てきそう。ほんと可愛くてテンションが上がる。
もちろん食べたことのないような珍しい食べ物もあれば、馴染みあるものもたくさんある。
いま食べてるローストビーフは私達の世界のものと同じで、以前ママと私の高校卒業のお祝いに出掛けたホテルビュッフェで食べたものと同じくらい、とっても美味しい。
もぐもぐしながら幸せを噛みしめる。
う~ん、美味しぃ~~~!
2個目をぱくっと口に入れた瞬間、
「失礼、そこのレディ」
と、男の人の声が近くでした。
ああ、誰か近くにいる女性が話しかけられてるのね、くらいに思っていたんだけど。
私の目の前でお料理を取り分けてくれていたシェフの格好した男性が、何故か焦ったように目で「後ろ!」と言わんばかりに合図をしながら、口早に小声で私に言ってくる。
「お…、お嬢さん、ですよ……」
なぜか、私の背後を見てすごく驚いた顔をしている。
ん?……私?
どうしたのかな。
私はローストビーフを口に咥えたまま、とりあえず背後を振り返ってみた。
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