第25話 突発的かつ周到に1

「おい津和、昨日の夜強盗事件あったらしいって聞いたか?」


 翌日。へこむどころじゃなくなった俺は割とすぐに寝たんだが、学校に行って教室に入ると、すぐに菅池が話しかけてきた。

 強盗事件……まぁ、うん。


「あー、なんか夜中にパトカーの音が聞こえたな。あれか?」

「パトカーの音聞こえるとかかなり近所だな。大丈夫だったか?」

「とりあえずは大丈夫だぞ。ドローンの残骸を素材別に仕分けてたから、あんまり周り気にしてる余裕なかったし」

「……それ、ほどほどに止めとけよ? ダメな方の現実逃避だぞ?」

「必要な作業だからな……大丈夫、交換したパーツも仕分けてごみに出してたし、それがちょっと大掛かりになっただけだから」

「大丈夫そうに見えねぇんだが……」


 遠い目になって昨日の夜何をしていたか伝えると、菅池はどうやら俺が無関係だと判断したようだ。なおかつそういう話に乗る元気も無いと見て、さっさと自分の席に戻っていってくれた。

 ここ数日の付き合いだが、莉緒様とやらが絡まなければ割と良い奴なんだよな。莉緒様とやらが絡まなければ。ほんともうそこだけ気を付ければというか触れなければ。竜の逆鱗ってこんな感じか? 触った奴は死ぬが。


「(ま、実際はがっつり俺の家の事だったんだが)」


 そうなんだよな。川勢さんが部下の人を連れて本当に即行駆けつけてくれたのはいいんだが、部下の人からこっそり「タレコミがあってマークしてたんすよ」って聞いたからな。やっぱ俺は囮に使われてたか。

 ちなみに強盗という噂が出回っているが、実際は俺を死なない程度にボコすのが目的だったらしい。これも別の部下の人から聞いた。捜査情報をそんな喋って大丈夫なのかと思ったんだが、どうやら川勢さんの「趣味」を知っている人からすると、俺は川勢さんが満足するクズ、もとい、生きの良いバカをホイホイする才能があるらしい。いらねぇ、そんな才能。

 で、これからもきっと川勢さんからは逃げられないし、WinWinな協力関係にあった方がお互い平和で楽しい人生を送れるだろうって……まぁつまりは囲い込みだな。逃げ道を断つとも言うが。


「(しっかし、思った以上にクズでバカだったな、あのおっさん)」


 で。俺を死なない程度にボコすのが目的って時点で大体分かる通り、犯人は俺の相棒であるドローンをぶっ壊したおっさんだった。社会的にアウトな組織との繋がりがあって、そこへ依頼を出して、実行犯としてやってきたのがあの招かれざる客だったようだ。

 結界札の効果で、階段を上っている途中で外へ叩き出された男3人は駆け付けた川勢さん達によって、住居侵入及び器物損壊(鍵が壊されてた)の現行犯で逮捕。そこから現在、そのアウトな組織とそこに繋がりのある人間をごっそりしょっ引いてるらしい。

 それはもう生き生きした川勢さんが全力で動いているという事で、あの「トイ・ダンジョン公園」の周辺地域も綺麗になる事だろう。犯罪組織的な意味で。これからは安心して暮らせると良いな。


「ほーら、席に着けー」


 先生が入って来て着席を促す声を聞きつつ、ただ広げて眺めていただけのドローンパーツカタログをしまう。気は重いが、必要だからな。

 ……しかし、思ったより大事になったな。もちろん、パトカーが近所に来るって言うのはこの辺じゃ珍しいんだが。まさか物理的に襲撃かけて来るとは思わなかった。結界札を設置してて良かった。

 その結界札も「トイ・ダンジョン」から見つけるしかないからな。それも高難易度の。一応ストックはあるが、あればあるほど良い物だし。……その為にも、早めにドローンを組み直さないといけないんだが。


「(ドローンパーツを買いに行く、っていうのが、自転車前提でまだ時間かかるからな。しかも1から組み直しだと必要なパーツの数も種類も多いから重くなるし、やっぱ放課後に行くのは無理だ)」


 いっそ大人に車を出してもらえばいいんだろうが、俺が今頼れる大人はどっちも性格に問題ありな上、普通に有能で忙しいからな。

 自転車に取り付けられるカーゴを先に調達するか? それはそれで出費がかさむし、通れる道が限定されるだろうが……その前に自転車も買い直しだからなー。財布のダメージが際限なく上がっていく。

 はー、家に置いてある蓄え用の宝石を全部売れればその辺全部問題なくなるんだけどな。早く大人になりてぇ。

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