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君は少々気になる事があった。地下で見た怪植物は、サクレッドの街で神殿にあった、癒しの木にそっくりだったのだ。
その事をサウスゲイルに話すと、彼は顎に手を当てて考え込んだ。
「あの木は生物の生命力を吸い取る一方、薬効のある樹液を滲みだすんだ。それで傷や病が治るので、動物が近くに住み着く。もちろん木に必要な栄養をとった上で放出するものなので、吸い取られる生命力の方が大きいのだが‥‥それを知らない動物は目に見えてわかる治療効果を求めて住み着いてしまうのさ。我々が遭遇した蟹みたいにな」
そして空を見上げた。
「そこを知らないまま、街に持って帰ってしまった者がいたのだろうな。神官達も治療にあたるので余計に木が生命力を吸い取る事に気づき難いのではないか」
「て事は、あの街ぐるみで化け物木にせっせと人間の栄養を与えているような物なのか?」
「おそらく。しかし森の外の事では私にはどうにも‥‥」
驚くスターアローに、サウスゲイルは渋い顔をした。
彼は別れを告げる。
「それではさらばだ」
彼は森の中へ姿を消した。
「サクレッドの神官達に教えてやるべきなんだろうが、何百年も頼った木と流れ者と‥‥どっちを信じるかというと、なぁ?」
君も考えて‥‥そして思いついた。
「そうだな。それで駄目ならその時の話か」
そう言うスターアローの背に、君は再び跨った。
https://kakuyomu.jp/works/16818093075655425577/episodes/16818093076709051360
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