433

(この項目は430番から来る。他の項目から来たならば元の項目へ戻れ)


 君は墓標の一つを見て、スターアローに立ち止まるよう指示を出した。

「どうした? 何かあったのか?」

 訊くスターアローに、君は見つけた墓標を指さす。


 そこには「エレボス」と死者の名が刻まれていた。その生没年――50年以上前だ――に加え「森の賢人。ノクスの夫、ヘメラの父」と肩書と家族構成も。


「ん? このノクスという名前、どこかで聞いたような? どこぞの魔物兵が自分のあるじと言ってなかったか?」

 スターアローは思い出したようだ。

 と、すると‥‥魔物達を組織する樹海の魔女がそのノクスで、彼女の夫がここに埋葬されたエレボスという故人になるのだろうか。


 君がそれを口にすると‥‥

『その通りだ』

‥‥と、虚ろな声が地面の下から――墓標の辺りから――響いた。


・【フラグNo.23】に「80」を記入すること。


 靄が濃くなり霧となる。

 その中で墓標だけははっきりと浮かび上がっていた。


『我ら夫婦は自然を源とする魔術師だった。魔獣や幻獣も含めた様々な生物の住むこの樹海を研究対象とし、ここに移り住んだ。やがて娘も産まれ、我ら一家にとって最も幸せなひと時が訪れた‥‥』


 亡者による昔語り。

 君達は警戒して身構えるが、そんな事はお構いなしにそれは続いた。


『だが娘は産まれてまもなく、病にて命を落とした。治療の魔術をもってしても助からなかった以上、私はこの悲運もまた自然の摂理だと思い、耐えて受け入れるしかないと考えた。だが我が妻はそうではなく、私と決別した』


 すすり泣くような音が地面の下から聞こえた。


『自然を研究して得た魔術で、自然に逆らい寿命を延ばし。邪魔物を排除する駒とするため、邪悪な魔物を配下に引き入れて。百五十年に一度の秘宝、命の花をいつか手に入れ、それで娘を蘇らせるつもりなのだ。私が老いて死した今でも、妻の時間は止まっている‥‥』


「俺達にそれを聞かせて、どうしろっていうんだよ」

 スターアローが呟くと‥‥


『妻は己の執着に呪われている。勇者よ、解放を‥‥』


 霧が突然渦巻き、君達に吹き付けた!

 顔を覆って武器に手をかける君、踏ん張っていつでも飛び立てるようにするスターアロー。

 しかし霧は全て君達に吹き付け、そして消えた。


 後には墓場の静けさがただあるのみ。


「一体何だってんだ?」

 スターアローが首を傾げる。


 君は亡者の望みが何か、理解できただろうか?

https://kakuyomu.jp/works/16818093075655425577/episodes/16818093076672316141

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