背景

 上には青空、下には荒野をつっきる街道。そして肌にふれる風。

 君にはいつもの事だ。空を行く君は、白い翼を広げる天馬ペガサスに乗っている君には。

 時折、道を歩く旅人や行商人の遥か頭上を越えていく。彼らが物珍しさに驚き、君を見上げるが、そんな彼らを追い抜いて君は飛んで行く。


 君は放浪の剣士にして天馬の騎手ペガサスライダー



 君は数々の冒険をこなしてきた歴戦の勇士だ。

 その冒険行の中に、ある女神の聖域を敵神の戦士達から守るといういくさがあった。それに助力した君は、戦いの中で一頭の天馬ペガサスと知り合い、力を合わせ、最後まで戦い抜いたのだ。

 それ以来、は互いを戦友と認めあい、いくさの後も共に旅をしている。

(挿絵)

https://kakuyomu.jp/users/matutomoken/news/16818093077630639954


「でかくて派手な森が見えてきたぜ。あそこが今度の目的地ってわけだな」

 天馬ペガサスが君に語りかけて来た。そう、この天馬ペガサスは人語を解する事ができるのだ。


 天馬ペガサスは利口な幻獣ではあるが、それでも人語を話せる者など滅多にいない。そもそも稀にしか遭遇しない生き物なので、この変わった天馬ペガサスと出会った時、そして彼が「スターアロー」と自ら名乗ったのを聞いた時、君の驚いた事と言ったら無かった!


 この天馬ペガサス‥‥スターアローの言う通り、遠く前方には大きな森が広がっている。多彩な色に染まった森が。その中央には高い岩山の頂も見える。

 そこは通称「雷王樹海らいおうじゅかい」と呼ばれる森。多くの魔物が住む魔も森だ。君はそこを次の冒険の場に選んだ。

 そこにある筈の、の情報を聞いたが故に。


 雷王樹海はその四方を都市や小国に囲まれた、この大陸有数の大きな森だ。その周辺一帯の伝説に「森が七色に染まる時、命の花が咲く」という物がある。

 そして確かに記録が有るのだ――おおよそ百五十年ぐらいに一度、森に咲く一輪の花の記録が。

 賢者達が【命華草ライフグラス】と名付けた、太陽のような輝きを持つその草は、長い長い時を土中で過ごす。そして一度芽生えると短期間で花を咲かせるのだが‥‥その花には長い時間で蓄えられた生命の魔力が濃縮されており、若返りや死者の復活などの貴重な霊薬の材料となる!

 その花の咲くサイクルは他の植物とも密接に関係し、幾多の種が混じる森の草木の大半が、花を咲かせたり葉の色を変えたりする。その結果、まるで森が七色に染まるかのように見えるのだ。命華草ライフグラスが咲く時、かならずこの現象が確認されていた。


 そして今。雷王樹海は幾多の色が入り混じる姿を見せている。前に命華草ライフグラスが見つかった時から約百五十年、時期も一致している。

 しかしこの草は非常に少ない。過去のどの記録でも、一輪しか見つからなかったとあるのだ。

 その秘宝をこの時代に手にするのは我こそだと、今、様々な者が森に向かい、そこに入っている。

 そして君もその一人に加わる事を決意したのである。


「ところで俺達がお宝を手にすればまた一つ勇者の証明ができるとして‥‥花は何に使うんだ?」

 それについては君に案があった。

 森の四方には都市や小国がある。そこで命華草ライフグラスを求める依頼人を探せばいいのだ。手に入れた後で探してもすぐに買い手など見つかるだろうが、先に誰かと契約すれば、その者から援助があるかもしれない。


「なるほど。ならひとっ飛び行くぜ」

 案を聞いてスターアローが翼を大きく羽ばたかせる。君達は大空をゆく。危険の待ち受ける冒険の地へ‥‥その先にある栄光の未来へ。

https://kakuyomu.jp/works/16818093075655425577/episodes/16818093075655588113

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