余命宣告の日、私は今年で小学校五年生の妹と病室の中で喧嘩をした。(それは、私たち姉妹の初めての喧嘩だった。妹は優しい子で、絶対に誰かと言い争ったり、喧嘩をしたりしない子だった)

 その日の夜。

「すーくん、どうしよう。……私、本当はまだ死にたくないよ」泣きながら私は言った。家族の前では。妹の前では、まあ、しょうがないよ。こういうこともあるって、と笑いながら明るく言って強がっていた。でも……。

 すーくんには本当のことを言ってしまった。(そのあとですごく恥ずかしくなった)

 すーくんは「僕も同じだよ」と私に言った。


 私はすーくんがあとどれくらい生きていけるのか、(すーくんがなにも話してくれないから)知らなかった。すーくんはこのあと大きな手術を受ける予定であること。もし手術が成功すればすーくんはこれからも生きていけること。そのためには臓器提供できる『ドナー』が必要であること。そんなすーくんが全然教えてくれないことを私から必死にお願いをして、(病室を破壊するくらいの勢いで泣きながら騒いで暴れまくった)私の担当の先生から教えてもらった。

 先生からそのすーくんのお話をきいて、私はすぐにすーくんのドナーになりたいといった。『ドナーのことは本人には絶対に教えることはできない』。それでもいいの? と言われて私はすぐにいいと答えた。ドナーの適応検査は大丈夫だった。そのお話を先生から聞いて私は、私の人生の意味を理解した。

 私の命はきっとこのときのためにあったのだと思った。(嘘じゃない。強がりでもない。本当にそう思った。私はすーくんに生きてほしかった。すーくんのことが大好きだから。すーくんは私の大切な友達だから)

 ありがとう。すーくん。

 私と友達になってくれて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る