第21話 覚悟を決めて

 これ以上、この島に暮らす人たちを困らせないためにも、ここでこのモンスターを倒しておかなくちゃいけない。

 腹を括った俺は、付与効果によって強化した銛で攻撃を試みる。

 だが、まともにやったのでは針のように鋭く伸びる体毛に阻まれて効果は薄い。

 ゆえに、弱点を突く必要があった。

 イノシシの弱点は鼻だ。

 硬い体毛はまるで鎧を彷彿とさせる頑丈さだが、鼻先は柔らかく急所となっている。普通のサイズなら小さく、ピンポイントで狙うのは困難だろう。しかし、あれほどの巨体ならば狙いはつけやすい。

 念のため、アカツキにも協力を要請して確実に仕留めるようにしよう。


「アカツキ、ヤツの動きを止めてくれ」

「いいだろう」


 あっさりと了承してくれたアカツキは木々の間を飛びあがっていき、頭上から猪型モンスターを狙う。

 これが見事的中。

 予想外の方向から攻撃を受けた猪型モンスターはふらつき、動きが鈍くなる。弱点の鼻も今なら隙だらけだ。


「いっけぇ!」


 俺は付与効果をつけた銛をモンスターの鼻っ面に突き刺す。

 当然、これだけじゃない。

 強化の本領はここから発揮される。


「鼻から雷を食らう――なかなか経験のできることじゃないぞ?」


 この銛には電気ショック的な効果を持たせるよう、雷属性の魔法が発動するように強化してある。これだけの至近距離からの直撃ならば、さすがにこれだけの巨体であっても無事では済まないだろう。


 実際にどうなるか――試してみるか。

 これがトドメだと言わんばかりに、俺はありったけの魔力を注いだ。

 直後、強力な電撃が猪型モンスターの大きな体を駆け抜けていく。


「ブオオオオオオオオオオオッッッ!?!?」


 これまでに感じたことのないダメージに襲われた猪型モンスターはのたうち回る。巻き込まれないように距離を取ろうと後退したが、ちょうどそこに木の根が出ており、それに足を取られて転倒してしまった。


 そこへ、モンスターの巨体が迫る。

 しまった――そう思った次の瞬間、俺の体は宙に浮いた。


「やれやれ、世話のかかるヤツだな」


 アカツキが俺の服を加えて引っ張ってくれた。そのおかげで、ヤツの悪あがきに巻き込まれずに済んだのだ。


「あ、ありがとう、アカツキ」

「せっかく自分の力で仕留めたというのに誰にも自慢できず死んでしまってはあまりにも不憫だからな」

「ははは、違いない」


 そのひと言で、俺は勝ったのだと確信した。

 これで島の人たちの暮らしは以前よりもっとよくなるはずだ。

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